不人気を愛した地獄
有難いよ「SAO」。圧倒的に説明の手間が省けた。
これで私の思う「世界の出来方」について、エリーも具体的にイメージ出来たと思うし。
そこで先に説明しておいた「一酸化炭素中毒」「トイレ」「図書室」の説明を組み合わせるなら、エリーも一概に否定はできないはず。
疑ってくれるだけで良い。それだけで十分なんだけど……
「……それが……それが、君の言うとおりだったとして」
「うん」
うんうん。とことんまで付き合うよ。
「そうなると、そういう『SAO』みたいなことをやってる人……ああ、それで『ゲーム制作者』か」
「繋がった?」
「繋がったわよ。そのゲーム関係者が《《これ》》をしてるって言うの?」
「他に考えにくいし、動機もありそうだし」
「動機?」
そこはエリーの意表を突いたのか。
まぁ、今まで転生だと思っていたんだから、考えたことも無かったんだろう。
「そう動機。エリーの言うように、大掛かりだもの。よっぽどの理由がないと、“これ”は出来ないよ。私の説で考えるなら絶対必要な要素」
「それは、そうかもしれないけど……まぁ、いいや。それも説明出来るんだよね?」
エリーが興味を持ってくれた。
あの益体もないキャラデザ妄想に食いついてきたんだ。エリーの好奇心みたいなものは豊かなんだろう。
「うん。説明の前にこれは先に結論を言ってしまおう。このゲーム。『アリスの為に鐘は鳴る』。売れてないでしょ? 人気が無かった、でもいいけど」
私がそう告げた途端、エリーの瞳孔の無い瞳が歪んだ。
でも反論は無かった。
申し訳ないけど、とどめを刺させてもらおう。
「『乙女ゲーム』にしては攻略キャラが少なすぎると思ってたんだよね。最初は『乙女ゲーム』とは思ってなかったぐらい。で、エリーに説明してもらって確信した。このゲームシナリオが凝ってる。それだけでなく、なんていうかな……シナリオが骨太過ぎるんだよね」
「それは――」
「わかってる。説明されて私も思ったもの。シナリオはよく出来てる。好きだなって。でも、それがそのまま売り上げに通じるもんじゃないっていうのも、わかるよね?」
一言で言うなら「乙女ゲーム向きではない」ってことになるのかな?
顧客の好みに合致してないというか。
「それでもネットを通じれば、ファンははいることはエリーが教えてくれた。キャラにあだ名がつけられるぐらいには」
まぁ、あれは岸田の知名度の強さもあるんだろうけど。
「でも、それ以上のムーブメントは起こせなかった。ねぇ、ゲームの略称とはあった? 私、個人的にそういうものがあるかどうかが人気のバロメーターになると思っていて……例えばこのゲームだったら『アリ鐘』みたいな感じかな? そういうのあった?」
あったら、エリーはまず略称を口走ると思うんだよね。でも、今まで聞いたことが無い。
それはつまり――
「……無かった」
エリーが血を吐くように告げた。




