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少し短めです。
「門よ、開け。」
サノスさんの声に従い門が大きな音を立てて開きだす。
魔物から助けてもらった僕らは町に入れてもらえることになっていた。
「二人とも無事かのう?・・いや無事ではないな。よし、話はあとで聞くとしてまずは休むといい。」
そういいながら何かの魔術で僕らを浮かせるとどこかへ歩き出すサノスさん。
ふわふわと浮いているのに妙な安心感があり、僕はいつの間にか気を失ってしまっていた。
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「・・ここはどこだろう?」
僕が目を覚ますとかなり時間が過ぎてしまったようで外は暗くなっていた。
月明りを頼りに周りを見渡すが、部屋がやけに白いだけで特に目立ったものはないが高級感があった。
今寝ているベッドはかなりいいものなのかとても寝心地がよい。
部屋の外の事が気になり体を起こそうとするが体の痛みが残っていてまだ体を起こせなかった。
何とかしてベッドから降りようとバタバタしていると突然部屋のドアが開いた。
「起きたか、ルド。」
明かりを持ちながらサノスさんが部屋に入ってくる。
昼間に見たような黒いローブではなく、いつも村に来る時と同じような服装をしていた。
「疲れが残っておるのか、ジルはまだ寝続けておってな。こんな夜中ですまんが話を聞かせてもらえんかのう?」
「大丈夫ですよ。でもその前に‥サノスさん、僕たちを助けてくれてありがとうございました。」
「なに、大したことはしておらん。お前たちを助けられたのならそれでいいんじゃよ。」
ニッ、とはにかむサノスさん。
本当に助けてもらえてよかった。あのままでいたらきっとぼくたちは・・・。
そんな考えはサノスさんの言葉で中断される。
「それでじゃがな、なんでお前たちは二人でここまで来たんじゃ?村の外は魔物がおって危ないと言われとったはずじゃろう?」
「はい、それが…。」
そうして僕は話し出す。
村が魔物に襲われたこと。僕らを除くすべての村人が魔族によって皆殺しにされたこと。
そして生き残った僕ら二人でどうにかここまでやってきたこと。
今まであったことをすべて話した。
話しているうちにどんどんサノスさんの表情が曇りだす。
話し終わるころには涙を流し始めていた。
「そうか、村がそんなことにな‥。大変じゃったろう。よくぞ、よくぞ生き延びてくれた。」
そういって僕はサノスさんに強く抱きしめられる。
抱きしめられる力が強く少し苦しかったが、気遣ってくれたのが何よりもうれしくて僕も泣いてしまった。
お互いに泣き止んだころ、もう一度向き合い話し始める。
今度は僕の右腕についてだった。
「さっきの話の中でも言っておったが、その右腕については何もわからんのじゃな?」
「はい、無我夢中で魔族を殴ったらこんなになっていて。」
「一度よく見せてくれんか?」
黒くなってしまった右腕をサノスさんに預ける。
まじまじと見られているのは少しくすぐったかった。
「やはり魔素に浸食されておるのう。」
「なんですか、魔素って?」
「魔素というのは大気中に存在する魔力と似て非なるものじゃ。
この魔素を使っても魔術を行使できるが、人族が体内に取り込んだ場合自分の魔力と合わさると拒否反応が起こるようでのう。本来なら精霊の力を借りて扱うもんなんじゃが・・。」
「僕は自分の魔力と合わせて使っちゃったってことですか?」
「そのようじゃ。時に魔素は人の感情によって動くことがあるという。おそらくルドの怒りによって魔素が集まってきてしまったのじゃろう。」
「その・・、この腕が治ることってあるんでしょうか?」
「・・・言いずらい事じゃがはっきりと言おう。今のところ魔素を取り込んだものは一人として治っておらん。じゃからその腕が動くことはもうないじゃろう。」
「そんな・・。」
もう右腕が動かない。その言葉が僕の肩にずんとのしかかる。
やっと止まった涙がまたあふれ出していた。
今度は嬉しさではなく悲しさで。
この行き場のない気持ちを僕はどうしたらいいんだろう。
「・・少し一人にしてくれませんか。」
「ああ、わかった。ではまた明日の朝に迎えに来るとするかのう。なにかあればまた儂を呼ぶといい。」
サノスさんはベッドの近くに小さなベルを置くと静かに部屋を去っていった。
僕は気持ちが抑えられずただただ一人で泣いていた。