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二つ星  作者: 蒼星
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行商のおっちゃんが来ないまま一週間が過ぎた。

その間食料や着る物、武器、あとはお金に変えれそうなものを集めていたが、さすがにここまで来ないとなるとなにか行動を起こすべきなのかもしれない。

そう思っていたのはジルも同じようで僕らはその日の夜に話し合うことにした。


「なあ、ルド。食うもんもあと数日分しかないし思い切って町に行ってみないか?」

「町に?でも村の外は魔物がいて危ないんじゃないの?」

「それはわかってる。でもこのままいても野垂れ死んじまうぜ。」

「それは、そうだけど・・。」


村の外には怖い魔物がいる。

だから門の外に出てはいけないと大人たちがよく話してくれていた。本当にそうなのかは分からない。

もう聞くこともできないのだから。


「魔物が出てきたら俺は剣と盾で前に出て戦うから、ルドは後ろの方で援護してくれ。大丈夫だ。こうすればもし何かあってもお前は逃げれるはずだしな。」

「・・・そんなこと、言わないで。僕は二人で生き延びたいんだ。」

「お、おう。なんだ、その、悪かった。」


僕が少し怒り気味でいうと申し訳なさそうに謝るジル。

本当に彼は優しいが自分にその優しさが向かないところは何とかしたほうがいいと思う。


「ともかくだ、町までの道はサノスさんから聞いたことがあるし剣もある。魔術も使える。食料も町に着くまではあると思うし何もしないままここにいるよか、ましだろ?」

「・・確かにそうだね。うん。わかったよ。」

「ほんとか!?」

「ただし、できるだけ魔物との戦いは避けていこうね。」

「ああ、わかってる。じゃあ明日には出発しようぜ。」


そうして彼は大きなリュックを用意しその中に必要なものを入れ始める。

僕も準備を手伝いその日のは早めに眠ることにした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そして翌日。朝早くから起きた僕たちは出発のため正門があった場所にいた。


「よし、じゃあ出発するぞ。何か忘れ物はないか?」

「大丈夫だよ。リュックも持ったし護身用のナイフもこの通り。」


腰に差したナイフを見せる。

あまり切れ味は良くないがここにあるものの中で一番使い勝手が良かったのがこれしかなかったので妥協した。


「それなら大丈夫だな。俺が前を歩くからルドは後ろからついてきてくれ。何かあればすぐに言うんだぞ。」

「うん、わかったよ。ジルも何かあったら頼ってね。」


そう言って僕たちは歩き始める。

村の周りは焼けてしまったため何もなくなっていたが、少し先には背の高い草が生えているのが見える。少し歩くと道に沿うように川が流れてきていた。

川のそばを道なりに歩き続け大きな森を抜けると町に着くらしい。

だから僕らは川の近くを歩き続けた。

川は浅くきれいで小さい魚も泳いでいたため食料調達もできそうだ。

そうして長い間歩き続けていると少し疲れてきたので川のほとりで休憩することになった。


「今のところ順調に進んでるな。」

「そうだね。サノスさんはこんな距離を毎回来てたのかな?遠いのにすごいねー。」

「確かにな。こんだけ歩いてんのに森がまだあんなに遠く見えるし。」


話しながら川に顔を近づけて水を飲む。

冷たくておいしい。

ただ右手が使えないせいで飲みにくいが。


「これは今日中には着かなさそうだな。もう少し歩いて休めそうな場所を見つけるか。」

「そうだね。できるだけ森に近づきたいところだけど。」


今は日がちょうど上に来たくらいでありまだ明るい。

日が落ち暗くなるまでは歩くべきだろう。

休憩もそこそこに僕らはまた歩き始めた。


歩いていると少し先の道に黒い人のような形の生き物が見えた。

手には大きめの木の棒が握られており、細い腕なのにかなり力があることが見て取れる。

こちらを向いてはいないためおそらく僕らには気づいていないだろう。

僕らはすぐ近くの草むらに伏せて隠れる。


「おい、ルド。見えたかあの黒いの。」

「うん。見えたよ。たぶん魔物だよね。」

「ああ、たぶんな。くそ、こんなことならサノスさんから魔物についてちゃんと教えてもらえばよかった。」


そういうジルの声には悔しさが感じられた。

顔は見えないが見ることができたならきっと悔しそうな顔をしているのだろう。


「このまま行っても戦うことになっちまう。あの棍棒、受け流すのはできても盾がダメになっちまうな。どうしようか。」

「この道を避けていくしかないんじゃない?」

「そういってもよ、この道を避けて行くとなると道がわかんなくなるかもしれねえぞ?」

「そっか・・・。」


僕らが話している間魔物はずっとひとりでうろうろしている。

仲間のような魔物が近くにいないのが救いだ。

しかしこのまま待てばどこかへ行くというわけではなさそうである。


「避けて通れないなら戦うしかないんだよね‥。」

「そうだな。でもまともに戦ってけがなんてしたら直しようがねえし、せめてあの棍棒さえなんとかできりゃなあ。」

「ならこんな作戦はどう?」


僕はジルへ作戦を話す。

ジルは少し不安そうにしたが首を縦に振ってくれた。


まず僕たちは身軽にするため草むらの中へ荷物を下ろす。

次にジルが盾を構え、僕はその後ろを慎重についていく。

ある程度距離が近づいたころ魔物がこちらに気づいたようだ。

一瞬警戒するそぶりを見せたが、僕ら二人しかいないと気づいたからだろう。

薄気味悪い笑みを浮かべ何か叫びながら勢いよく僕らに迫ってきた。

段々と距離が詰まっていく。

そしてあともう少しで攻撃が届いてしまいそうな距離まで近づかせ・・。


「土よ!!」


魔物の足元の土を少しだけ盛り下げる。

急に足場がなくなった魔物はバランスを崩してこけてしまった。


「炎の槍よ、敵を貫け!!」


僕は炎の槍を出現させ放つ。

ジルは無言で炎の槍を展開しながら魔物に近づいていた。

そして二つの槍は魔物、ではなく木の棍棒に当たる。

炎の槍は威力がなかったせいか棍棒を貫くことはできなかったが燃やすことには成功したようだ。

火が付き驚いたのか魔物は棍棒を放してしまった。

その隙をジルは逃さない。

喉元を剣で一突きすると何もできないまま魔物は動かなくなった。


「やったね!さすがジルだよ!!」

「そんなことないさ。ルドが作戦を考えてくれなきゃこんな無事に勝てなかったしな!!」


僕らは初めて魔物を倒せた喜びを二人で分かち合った。

そのあとジルは川で剣についた血を洗い流し、僕は置いてあった荷物を取ってくると、僕たちは少し上機嫌に再び歩き出す。

それからは魔物に会うこともなく暗くなるころにはかなり森の近くまで進んでいた。


「よし、周りも暗くなってきたし火を起こして交代で休もうぜ。」

「そうだね。ジルも疲れてるだろうし先に休んでいいよ。」


そういいながら焚火の準備をする。

村にいた時に何度も焚火をしていたのでそこまでの苦労はなかった。

お腹もすいてきたのでリュックの中から食料を取り出して食べる。

保存食なのでそこまでおいしいものではないはずなのに、今日はいつもよりおいしく感じた。


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