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「・・ろ、・・ろよ、起きてくれ、ルド!!」
「・・・あれ、ジル?」
体を揺らされだんだんと意識が覚醒してくる。
土と鉄の味が口に広がる。それがどうしようもなく気持ち悪くて目が覚めた。
あれからどれくらい時間がたったのだろうか。
周りを見渡せば日が昇り始めている。
どうやら何とか生き延びれたようだ。
「大丈夫か?」
「うん、なんとか。」
「そうか、ならよかった。俺めっちゃ心配したんだぞ。気づいたらあの大男はいなくなってるし、お前はボロボロで倒れてるし。」
「そうなの?心配してくれてありがと。ジルの方こそ大丈夫?」
「俺は全然大丈夫だ。体がすげぇ痛いけどな。」
そう言ってはにかんで見せるジル。
ぱっと見だが、けがが大きくなさそうでよかった。
そんなことを思い安心しているとジルの表情が曇り始める。
「なあ、本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ。この通り僕は元気、元気。」
そういって心配をかけさせまいと右手を挙げようとして気づく。
右手の肘から先の感覚がない。驚き右手を見てみると黒く変色していた。
拭ったり引っかいたりしても何も感じない。
ジルが心配そうにこちらを見つめている。
今はこの腕についてどうしようもないと思った僕は話題を変えることにした。
「僕の事はいったん置いておこう。そんなことよりも他のみんなはどうなったんだろう?」
「おまえそんなことって・・。」
「大丈夫。痛くもないしちょっと動かないだけだから。それより僕たちのほかに生きている人がいないか探してみよう」
そういって立ち上がりすぐに歩き出す。
全身に痛みが走るがジルに心配をかけさせまいと我慢する。
ジルはまだ何か言いたげだったが何も言わなかった。
そうして焼け落ちたり倒壊していたりする家を一つずつ見て回る。
正門に近い家ほど焼けている家が多かったが逆に遠い家はそこまで壊れているようなことはなかった。
そのため家の中にも入り探してみたが結局誰も見つけることはできなかった。
「なあ、ルド。もう探すのはやめにしようぜ。」
「なんで?ほかにも生きている人がいるかもしれないよ?」
「それはわかってる。わかってるが今はみんなの供養をしてやりてぇなって。このまま放置しとくのは、なんていうか、その・・・」
そこで言葉が途切れてしまう。
確かにジルの言う通りだ。
僕もみんなをあんな状態のままにしておくのは嫌だ。
「そうだね。まずはそうしよう。たしか土の下に埋めるんだよね?」
「ああ、兄さんたちはそうしてたな。とりあえず魔術で穴を掘ってそこに埋めようぜ。」
そうして僕らはみんなを供養して回る。
本当ならちゃんとした場所があるんだろうけど、どこかも分からない僕らは広場や門の近くに魔術を使って大きな穴をあけ、そこにみんなを埋め供養した。
村のみんなの姿を見ると悲しさがあふれ涙が止まらなかったがなんとか皆供養することができた。
そうしているうちに日も暮れてしまった。
あまり壊れていない家に入ると食料を頂き食事を始める。
肉を焼いたがなかなか食べる気が起きない。
いつもならもっと豪快にかぶりついていたジルもその勢いは全くない。
それは僕も同じで全く食欲がわかないためか、いつもより食べる量がかなり減っていた。
「俺たちこれからどうしような。」
そういいながら不安げな顔で焼いた肉をほおばるジル。
そこにいつもの明るさはなく暗い顔をしていた。
そこで何かないかと考えていると思いつく。
「確かもうじき行商のおっちゃんが来るはずだったよね?おっちゃんに話をして助けてもらおうよ。」
「確かにそんな時期だな。なら明日からはおっちゃんが来るまで食料とか着るもんを探すか。」
「うん、そうしよう!!」
そう話していると少しだけ場の空気が明るくなったように感じる。
こんな状況だけど少しだけ希望が見えてきた。
「そうなると明日も朝早くから動きたいしもう寝るか。」
そういうとジルは寝床に向かう。
僕もそれに倣って寝床に向かいベッドにもぐりこむ。
ベッドの温かさがやけに心地よくてすぐに寝てしまった。
それから一週間、おっちゃんが来ることはなかった。