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「これ、魔術の制御が乱れておるぞ、ルド。」
「そうはいっても難しいよ、サノスさん」
日差しがさし風が心地よいある日のこと。
僕は村に来ていた白髪の老人、サノスさんから魔術を教えてもらっていた。
彼はこの村出身の魔術師だそうでたまに村に帰ってきてはこうして魔術を教えてくれる。
「下手だなー、ルドは。俺なんかもう目を離してもできるぜ。」
そういう青髪の少年をにらみつける。
彼はジル。いつもは優しくしてくれるのに剣術と魔術の練習の時だけこうして意地悪をしてくる。
こんな彼だが魔術も剣術も才能があるようで器用にこなしてしまう。
だからいつも悔しい思いをするのは僕の方だった。
「ルド、ジル、ご飯ができたよー」
「早く来ないと俺が全部食べちまうぞー」
そう言いながら僕の姉さんとジグの兄さんが仲睦まじそうにやってくる。
二人はおいしそうな匂いのする料理を持ってきていた。あの肉をパンで挟んだ料理は僕の大好物だ。
「やった!僕先に行ってるね!」
「俺もいくー!!」
「これ、待たんか二人とも。まだ修業は…」
サノスさんの静止も聞かず僕らは走り出す。
朝から魔術の練習ばかりでおなかが空いていたのでとてもうれしい。
料理の前にたどり着いたと同時にパンにかじりつく。その瞬間僕の口の中は幸せでいっぱいになった。
「すいません、サノスさん。この子達せっかく教えてもらっているのにこんな様子で…」
「なに子供は元気が一番じゃ。少し元気すぎる気もするがのう。」
そういって苦笑してみせるサノスさん。
彼もおなかがすいていたのかゆっくりと食事を始める。
そうしてみんなで食事を囲みながら穏やかな時間を過ごした。
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食事を済まし魔術の練習を続けると夕方になっていた。
するとサノスさんは「次来るまで修行をさぼらぬように」と僕たちに言いつけて足早に帰っていった。
なんでも町の方で急に仕事ができたらしい。
大変そうだなとそう思った。
姉さんと二人で家に帰った僕は料理の手伝いを始める。
今日僕の両親は村の見張りのため帰ってこない。
そのため姉さんと二人で食事をすることになった。
「明日はジルの兄さんと剣術の訓練をするんだ。とっても楽しみ!」
「そっか、なら早く寝ないとね。」
食事をしながら取り留めもない事を話していると睡魔が襲ってくるようになり、ベットに体を潜らせる。
明日への期待を胸に抱えながら僕は眠りについた。