初恋だお
僕の親友、仮に虹男と呼んでおこう。
彼はオタクだった。生まれてから20数年恋というものにまったくの無縁の存在だった。
小学校からの付き合いで、中学、高校と彼とともに青春を送ってきたのだが、虹男はきっとこのままオタクとして人生を謳歌するだろうと思っていた。
自分も恋というものに興味無かったので、同士だと思っていた。
だが、それはあっさりと覆されたのだ。
ある日のこと。
携帯電話に虹男から着信があった。
「はい、もしもし。突然どうしたの?」
普段、あまり電話をかけてこないので何かあったのかと思った。
「…実は…。何というか…。」
虹男にしては滑舌が悪い。しばしの沈黙のあと。
「好きな人が出来たんだ。」
「それはまさか三次元でか!?」
虹男は二次元にしか興味がないと思っていたので思わずそう問いかけた。
「二次元?そんなものに興味ないよ。三次元というか普通の女の子なんだけど。」
このとき、僕の中の常識は脆くも崩れさった。明日、世界が滅亡したらきっと虹男のせいだ。血迷ったのか、それとも多重人格になってしまったのか、まさか新種のウィルスに感染したのか?
僕は恐る恐る聞いてみた。
「本当に虹男か?」
「虹男だよ。何言っているの?どうしたの?」
平然と答える虹男。嘘をついているようには感じられない。
僕は鈍器で殴られたかのような衝撃を覚えた。
虹男に限ってそんな一般人のように恋をするなんて信じられない。
これは夢なのか?思わず自分の頬をつねる。痛い、現実だ。
その後、一通り話を聞いて通話は終了した。
どうやら片思いらしい。見たこともない女の子だが、話の内容からちょっぴりギャルっぽいそうだ。
そんなギャル子ちゃんに恋をしてしまった虹男。
そんな話を未だに信じがたい僕。
噛み合わない恋愛話に花が咲くことはないが、一方的に虹男から相談されることになろうとは思いもよらなかった。
僕に言っても無駄だと思う、リア充とはかけ離れているんだから。
この物語は僕の体験を元に脚色して書いております。
虹男の物語はもう少し続きますので、連載にしました。