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救いと絶たれた帰路

目の間に立った女の人が助けてくれたのだろう。ホッとしたのも束の間。私は再び恐怖に震えた。なぜならその人…いや、人とは言えない。彼女は人の形をしているが目が人間ではなかった。手も人間みたいな形はしてるが見た目は人間とは程遠い。間違いなく魔物だ。だが人型の魔物なんて聞いたことがない。けれど目の前にいるのは紛れもなく魔物だ。

「もう…いや…。」

そう呟いてボロボロと涙を流す。こんなにもあの空気から逃れるのはだめだったのか。規則を破ったからこうなったのか。もういやだ。こんなことならめんどくさがらずに先生にないということを言えば良かった。外に出たくて家族を無理やりな理由で説得させ、嘘を混ぜた申請理由で何とか通した結果がこれだ。これなら外に出なければ良かった。そうすれば私はこの恐怖を知らずに不自由だが幸せな生活を送れていたのに。もしくはこんな思いをするならあの時喰われていれば良かった。もう怖い思いをしたくない。逃げる気力も出ずただ涙を流すことしか出来なかった。だがいつまで経ってもその魔物は襲ってくることはなかった。不思議に思い意識を戻しその魔物を見てみる。その魔物は剣を下ろし私のことを見ていた。私が見ていることに気付くと敵意はないと言うように手を横に振った。何か言葉を発しているが私には分からない。魔物特有の言葉だろうか?しかし魔物特有の言葉があるなんて聞いたことがない。だがそこでふと思い出す。人型の魔物もいると聞いたことがない、と。もしかしてまだ見たことないだけで人型の魔物や魔物特有の言葉はあるんじゃないだろうか?それならば納得がいく。だがそれでも警戒を解くことは出来ない。その事が分かったのだろうか?その魔物は少し離れた場所に腰を下ろした。今なら逃げ出せるんじゃないか?今なら戻れるのではないのだろうか?そう思ったけどもしかしたら他の魔物がうろついているのかもしれない。その可能性が高い。ならここにいる方が安全なのかもしれない。そんな事考えていたら疲れたのか眠くなってきた。い、ま、ここ…で…ねむ…ってしまっ…たら…だ…め………


ハッとして体を起こして慌てて起きる。どうやら寝ていてしまったらしい。手に布の感触がある。見ると布団らしきものがかかっている。寝る前はなかったからあの魔物がかけてくれたのだろう。少しは信用していいのだろうか?だけど……。ふと命の恩人なのにお礼どころかあの魔物と差別して失礼な言い方をしていたのに気付いた。それにここでずっと怯えて警戒するのは得策ではないだろう。ここには自分を守ってくれる絶対的な存在はいない。性別は女の人だと思うから彼女、と呼ぶことにする。今自分を守ってくれる存在は彼女だけだろう。ならばここは一歩踏み出してみよう。これが間違っているかは分からない。だけどここで彼女に見捨てられて魔物にずっと怯えて死ぬのは嫌だ。勇気を出して呼びかけてみる。

「あ、あの!」

声が震える。怖い。彼女が振り返る。言葉が出ない。やっぱ私には出来ないのかな…。俯いて涙を堪える。

「ーー。ーーーー。」

ふと声が聞こえて視線を彼女に向ける。相変わらず何を言っているか分からない。だけど視線が優しいということに気付いた。

「ー。ーー。」

声音も優しい。信用していいかは分からない。だけど私はこの優しさを信じたい。

「さ、さっ、きは、あ、ありがとうござい、ま、した、!怯えてしまっ、て、ごめん、なさ、、い、、!」

たくさん噛んでしまったけど何とか言えた。言った後にふと思った。言葉が通じないのにこれを言って意味があるのかと。どんどん恥ずかしさと後悔が心の中を支配した。すると彼女はこっちに近付いて来た。ドキってしたけどもう怖がらないって決めたから逃げない。彼女のことを見つめる。彼女も私を見つめ返していた。数秒見つめ合っていたら唐突に彼女が微笑んで頭を撫でて来た。

「!?」

驚いたけど撫でてる手が優しくて涙が出た。もう1人ぼっちじゃない。もう大丈夫なんだと思って涙が止まらなくて号泣してしまった。魔物に襲われて怖い思いをしたけど優しい魔物に助けられた。同じ魔物だけど魔物は怖いだけの存在じゃないって分かった。彼女に出会えて良かった。彼女のお陰で救われた。いっぱい泣いたからかスッキリした。これからどうするか考えられるようになった。そろそろ戻らないと魔討伐隊の人に申し訳ない。探してくれてるだろうし。

「そろそろかえりた…。」

言葉が通じないから言っても分かんないだろう。どうしよ…。うーん、うーん悩んでたら絵を描けばいいと思い付いた。外に魔物がいないかキョロキョロする。いなそうなので外に出て木の棒で家の絵を描いた。次に人を描いて家に帰る様子を描いた。チラッと見ると頷いているので分かってくれた…と思う。何か思い付いたのか木の棒で私の絵に付け足しで描き始めた。家の前に斜めの線を描いてる。それを2本描いてるから…。これは道、だろうか?道らしきものの途中に人の絵を描き始めた。これはつまり途中まで送ってくれるって事でいいのかな?そうならめちゃくちゃ嬉しいし助かる。途中でまた魔物に襲われる可能性があるから1人で帰るのは正直嫌だった。帰ろうと思って来た道を戻る。と言っても必死で逃げてたから覚えてない。だからそれっぽい道のとこを歩いている。斜め前の木の間から魔物が現れた。すかさず彼女が魔物を殺した。魔物は血を流して死んでいる。思わず目を逸らす。見慣れないし見たくもない。そんな様子に気が付いたのか彼女は道を進み始めた。それに追うようにして私も進む。また魔物が現れた。またすかさず彼女が殺す。現れては殺す、この繰り返しだ。しかも魔物の数がどんどん増えている。ガサガサと音がし前に現れたのは5体の魔物だった。彼女もやばいと思ったのだろう。私の手を取るとながら元来た道を走り出した。道を曲がったりして魔物が追って来れないようにした。そしてまた廃墟に戻って来た。なぜ、どうして。さっきからずっとその言葉しか思い浮かばない。外は暗くなって来ている。それにつられるように私の気持ちもどんどんくらくなっていく。もう大丈夫だと救われたのにまた絶望が私を襲った。

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