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『ロックミュージック研究会』  作者: たうゆの
3曲目  Minority
19/87

Break2

 二曲立て続けに演奏をして、身体も会場もだいぶ温まった。久しぶりのライブだったが、みんな調子は良さそうだ。


 不意に四年前のライブが思い出される。あの時は、今よりもずっと下手くそで、がちがちに緊張していた。


 無理もない。あれが多くの観客の前で演奏する初めてのライブだったんだから。

 あの頃は、ライブの経験なんてなかった。せいぜい気心が知れた人たちに披露する程度だ。だから、あの四年前のライブのときは、公演前からもうみんな吐きそうで真っ青な顔をしてステージ袖に待機していた。

 あの時、あいつはどうしていたっけ?確かあいつだけはあまり緊張した様子を見せずに黙々とチューニングをしていたような気がする。


 そうだ。俺は、あのライブで一曲目からやらかしたんだった。簡単なコード弾きから入る曲だから楽勝だと甘くみていた。いざステージに立って観客を目の前にすると袖で待機していた時とは比べ物にならないくらいの緊張で、頭が真っ白になった。半ば放心状態。そんな状態ではドラムのカウントが耳に入るはずもなく俺は曲の入りを飛ばしてしまったんだ。


 だけど、あいつがフォローしてくれた。


 あの頃の俺は、自分はギターがうまいと思っていた。あいつは認めなかったが、当然のようにあいつよりもうまいと自信を思っていた。

 だから、あの時のライブは、俺がメインギターであいつがサイドギターだと言って譲らなかった。結局、交互にメインギターを弾こうということになって、一曲目は俺が担当した。それなのに俺はミスをした。


 大事なライブだったのに、自分が真っ先にミスを犯してしまった。その事実に動揺して、混乱して、落胆していた。あのままだったらライブ全体のパフォーマンスにかなりの影響が出ていただろう。

 あいつはそんな俺の状態に一瞬で気づき、俺が弾くはずだったフレーズを弾いてくれた。目で「大丈夫だ、落ち着いていこう、次のパートからチェンジな」って合図までしてくれた。なんで目だけでそれが分かったかって、それは俺とあいつが親友だからだ。それ以上の理由なんかいらない。


 とにかく、そのおかげでその後は最後まで落ち着いてギターを弾くことができた。


 ちょうど四年後の今日。あいつは今のところここにはいない。今のところというのはあいつが今日必ず現れると信じているからだ。


 ここまではミスらしいミスもなく上々の出来だ。俺だけじゃない。他のニ人だって、下手したらいつも以上の、これまでで最高のパフォーマンスかもしれない。


 このまま突っ走ろう。


 三曲目もこのまま休みなく入る。


 いつ、あいつが現れてもいいようにどの曲も全力だ。


 ドラムのカウントに耳を向ける。


 よし、次も気合入れていこう!



『Minority』

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