日本終了?ウケる
今は朝の5時くらいだろう。それなのに何故家に置いてあったスコップと包丁なんて危険な、警察官に見つかれば一発職質、その後警察署にレッツ、ゴーな、物を持ち出しで外に出ているのか。もちろん、さっきの声だ。
家の周りを見渡してみるとまあ、いる。ゴブリンだ。そいつらは、うちの隣の空き地でぎゃーぎゃー騒いでいる。なので、殺すことにする。
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《スキル「狂戦精神」が発動します》
《アビリティ「闘争本能」が発動します》
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殺したい。壊したい。虐めたい。潰したい。鳴かせたい。
どんどん溢れ出てくる。気持ち悪くて、醜く、戦闘の邪魔にしかならない感情を抑え込む。それと、叫び声も出さぬよう気をつける。
ゴブリンは三体いる。そいつらは僕には分からない言語で会話を楽しんでいるらしい。こちらに気づく気配はない。背負っていたリュックを静かに置いた。
僕は刃が鉄で出来ている、手入れされておらず錆びてしまった1メートル強くらいのスコップを肩に担ぐ。
このスコップはそれなりに重いはずなのだが、おそらくスキルかアビリティで身体能力が強化されているらしく、かなり軽く感じる。
息を整え、一気に走り出す。
ゴブリン達までの距離は、家の端から端くらい。強化されている今なら、2秒も掛からない。
まずは一体仕留める。驚いているうちに次のやつに襲い掛かり、最後の一体は……なんとかなるでしょ!
「ッ!」
一気に接近。走る音に反応してゴブリン達が一斉にこちらを向くが、遅い。肩に担いでいたスコップで首元を狙い、勢いよく振り下ろす。
「ギッ、ギィ……」
バキバキと、骨が砕ける音がする。勢いが良すぎて、スコップが少し肉に食い込んでしまったので、ゴブリンを蹴り飛ばし、スコップを肉から外した。
ゴブリンは驚きでまだ硬直しているので、この隙を逃さず、もう一体仕留める。
「シィッ!」
スコップを左手に持ち、空いた右手でゴブリンを殴る。ゴブリンは倒れ込んだ。
スコップを両手で持ち、頭の上まで振り上げ、倒れたゴブリンの首に一気に振り下ろす。
ゴブリンはさっきの奴と同じような声を上げて白目を剥く。
どちらのゴブリンも体が崩れ始めないので生きてはいるのだろう。戦えはしないと思うが。
最後のゴブリンが腰にぶら下げていた50センチくらいのゴツゴツした麺棒のような、棍棒で殴り掛かってくる。
急いで後ろに下がり、攻撃を避ける。攻撃が空振り、体勢を崩して、ゴブリンの頭が膝蹴りするのにちょうど良いところに来たのでそのまま膝蹴りを叩き込む。
「ギャァ!……グ、グゲェ」
ゴブリンが倒れたので、確かめる意味も込め、股間を全力で蹴る。
しっかり付いてますね!てぃんてぃん!
「ッ!〜〜ギャァァッ!!」
ちょ、うるさいうるさい!近所迷惑です!いや、でもこんな状況だし気にするだけ無駄なのかなぁ?
まあこいつらは殺すけど。
その前に動かなくなったゴブリンの足を口に突っ込み、黙らせる。
ここで、問題発生。どうやってトドメを刺すか、ということだ。前回は頭を地面に打ち付けて殺せたけど、ここの地面はそんなに硬くない。
どうしよっかな。首でも捻るか?今の力なら出来るかもしれないし。よし、試してみよう。
動かないゴブリンの顎を右手で、頭を左手で持ち、一気に、回すように、捻る!
バキぃ、ボキぃ、と音を立て、ゴブリンの首は180度回転した。成功した。
同じ要領でもう一体の動かないゴブリンにトドメを刺す。
さっき股間を蹴り上げてやったゴブリンはまだ悶えているのでスコップを首に振り下ろし、動かなくなったところで、こいつの首も捻って殺した。
ちょっと血が服についてしまった。ばっちぃ。
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《戦闘終了》
《経験値を獲得しました》
《レベルが上昇しました》
《ステータスを確認してください》
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《スキル「狂戦精神」が停止しました》
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息を整える。ゴブリンの死体が崩れ、後には紫がかった水晶のような物が残る。前も見た現象だ。たぶんゲームでいうドロップアイテムなんだろうか。この水晶もゲーム風にいえば魔石ってところだろう。使い道は不明だけど。
キリも良いので、急いで家に帰ることにする。そろそろ他の家族も起きる頃だし。
魔石?を拾う。大きさはソフトボールくらいでまあまあ重い。置いておいたリュックに仕舞い込み、軽く走って家に帰る。
扉を開け、玄関に入った。
「ただいまーッス」
「おお、朱鷺。どこ行ってたんだ?こんな朝早くから」
お父さんが起きたらしい。呑気なことだと思うが、まあ無理もない。あの声の事など変な夢程度にしか思っていないだろう。
「んー、散歩。それより他の二人起きた?起きてないなら起こしてきてくんない?」
「ああ、まだ寝てるけど。何かあったのか?」
「全員揃ったら話すわ。僕は手洗ってくるから、よろしくね」
そう言って僕は洗面所に行き、手を洗った。ゴブリンはめちゃくちゃ臭いのに変わりはなく、首を捻ったときに臭いが手に移ったが、ゴブリンと一緒に消えていってくれたらしい。
手をタオルで拭いてリビングに向かう。他の家族を待つ間にステータスを確認しておく。
僕はテレビの前のソファに座った。
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水柳 朱鷺 職業ジョブ:狂戦士 レベル:2(↑1)
身体状態:通常
精神状態:通常
生命力:110(↑10)
持久力:70(↑10)
魔力:30(↑5)
筋力:15(↑5)
技量:8(↑3)
敏捷:8(↑3)
耐久力:15(↑5)
精神力:8(↑3)
知力:8(↑3)
――――――――――スキル―――――――――――
狂戦精神 バーサーク 生命力強化 身体能力強化
英雄(new)
――――――――――アビリティ―――――――――
生存本能 闘争本能
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ふんふん。レベルとステータスが上がってる。あんまり、強くなった実感はないんだよな。
漫画とかでありがちな力加減ミスってドアノブ壊すなんて事もないし。まぁ、どうでもいいな。それよりステータスだ。
横の数値は上昇したステータスだろうな、まだまだ2レベだから確実ではないけど、僕は筋力と耐久力が伸びやすい前衛型って感じかな?
それと明らかに怪しいスキルが追加されたな、「英雄」ですって。強そうではあるけどねぇ、面倒ごとになりそうな予感がするんだよなぁ。気のせいならいいけど。
「朱鷺?どうしたの?」
「あ、ごめん。全員揃ってたんかい」
母さんの声で気づく。僕以外の家族、父さん、母さん、妹は椅子に座っていた。
「ねぇ兄ちゃん?なんか目逝っちゃってたけど?大丈夫?」
妹に心配された。
どうやら他人にはステータスが見れない仕様らしい。
「それで朱鷺、どうしたんだ?家族全員集めて欲しいなんて」
「あー、そね。たぶんテレビ見ればわかるんじゃねぇかな」
僕は机の上に置いてあるリモコンでテレビの電源をつける。
すると、すぐにニュース番組が映った。テレビ映るんだね。まだ被害は少ないのかな?
男性のニュースキャスターの声がリビングに響く。どうやらヘリコプターからの生中継のようだ。
『えー、速報です!全国に謎の生物が同時に大量に現れ、人を襲っています!皆さん!家の外に出ないで下さい!正体不明の凶暴な生物が人に襲い掛かってきます!』
「ってな、具合でして。かなりヤバイです。つーか、日本終了?みたいな?」