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うんこするさ。人間だもの


 「ひっ、ひっ。はぁンげほッ、げほッ……お、おい。朱鷺、くん?大丈夫、か?」


 「明さん、こそ、大丈夫、ですか?」


 明さんは限界に近い。僕も結構やばいくらい疲れたけど、明さんの疲れっぷりを見ると、そこまで大したことないんじゃないかと錯覚する。

 実際のところは僕の方が3倍は働いた。が、別にそれは良い。レベルと歳の差、仕方のないことだ。


 それはそれとして、5階に到達した。


 僕は、5という数字はひとつの区切りだと思う。


 例を挙げれば、スキルの獲得だ。僕はレベルが5の倍数になる度にスキルを選んで獲得できる。

 他にも、レベル5になると攻略サイトを利用できるようになったりした。


 5なんだ。


 理由は知らないし、この塔に関係あるかも分からない。だが、実際に5という数字は何らかの区切りとして使われている。何かあってもおかしくはない。


 「明さん。危機察知は?反応ありますか」


 「それが、少しもない。全くないんだ。壊れたのかな?」


 スキルが壊れるなんて事あるのか?あるとしたら、使う方の頭が壊れてるんじゃないかな。頭が。


 「……」


 「い、今何か聞こえなかった?」


 確かに、物音が聞こえた。


 この階も暗くはない。暗くないけど、流石に何十メートル先も見えない。そんな暗さ。


 魔物か?魔物だろうな。最悪だな。


 出来ればゴブリンとかであってくれ…!雑魚こい!雑魚こい!ボスとかマジで勘弁な!


 こつ、こつ、こつ。と、規則正しく音がする。恐らくは足音だ。

 こつこつと音が鳴るってことはかなり皮膚が硬いか靴でも履いてるってことだ。


 その音の主が少しずつ姿を表す。


 一歩、足が見える。靴だ、靴を履いている。


 二歩、脚の全体が見える。肌、人のようだ。


 三歩、全体が視界に映る。


 「あ、あの〜…もしかして、人。ですよね?」


 人間だ。小柄な…女の子、だろう。


 人がどうか問われたが、こっちの台詞だ。お前は人間か?そう聞きたい。


 「えぇ。"私たちは"人間です。貴方は?」


 そう答えながら、剣の柄を強く握る。


 「よかっったぁ〜!人だぁ〜!」


 急に歩行速度が上がる。どんどん近づいてくる。速度自体は、人間と変わらないが…。

 安心は出来ない。淫魔(サキュバス)という前例がある。


 「止まれ!それ以上近づかないで下さい」

 

 「えっ、朱鷺くん?どうしたの」


 明さんは相手が人間であると確信し安心している。僕も人間だと信じたいが、死にたくもない。なのでまずは疑ってかかる。


 「に、人間ですよっ。見てわかりませんかっ」


 女の子は、怯え、焦ったような表情をしている。


 「朱鷺くんもしかして、頭打っちゃった?どう見てもふつーの女の子だけど」


 「とりあえず。ゆっくり、ゆっくり歩いてきて下さい」


 出来るだけ穏やかに伝える。


 「は、はい…」

 

 見た目、声、仕草、全て普通の女の子。魔力は…明さんと大して変わった印象は受けない。

 少なくとも、怪しい所はない、か?


 「すみません。こんな状況ですから、とりあえず疑ってしまいました。ほんとに申し訳ない」


 「こちらこそ脅かすような真似をして…」


 大丈夫そう?明さんも特に何も無さそうだし。申し訳ない事したな。ごめんね。


 「あの、お名前は?」


 女の子から名前を問われる。先に答えたのは明さんだった。


 「あ、俺は鈴木明です」


 「自分は水柳朱鷺って言います」


 「私は中村みうです。えっと、◯◯高校の2年生です」


 同じ高校の先輩かよ。そういえば見たことあるわ。


 「あー、自分も◯◯高っす」


 「そういえば見かけたことある?かも」


 それからは結構リラックスして話ができた。


 いつからこの塔にいたのか。どうやって過ごしたか。ステータス・職業(ジョブ)・レベルについて、魔物について。


 …………

 …………


 「『錬金術師』っすかぁ。かっけぇすね」


 「俺も錬金術師が良かったなぁ〜」


 「え〜戦士も冒険者も強そうで良いじゃないですか」


 はっ。こんな和んでる場合じゃねぇよ。


 「明さん、中村さん。そろそろ真剣な話しましょうか」

 

 まずはこれからどうするか。具体的には先に進むかどうか。進むにしてもどうやって?という話。

 人手が増えるのはメリットもあるが、デメリットもある。

 まず単純に足手まといなこと。それと飯やらその他の消耗が早まる。これがデカい。

 

 見捨てて先に進むのも選択肢だが、流石に僕の道徳が許さない。


 「あー…まず、この塔から出るには、塔のてっぺんまで登らないといけない訳でして。なんで、進むのは絶対何ですよ」


 「てっぺん?何階まであるの?」


 そう中村さんに聞かれるが、正直に200階って伝えたら気絶しない?


 「200階です」


 「「に、にひゃく??」」


 2人がふらりとよろめく。


 まぁ、200って頭おかしいよな。東京スカイツリーも涙目だろ。てか明さんには言わなかったっけ?言ってない?ごめんね。


 それから塔について詳しく説明した。


 「…朱鷺くんは進むの?危ないんでしょ?なのにどうして?何か理由が?」


 理由かぁ。理由、理由ねぇ。


 …そういえば何でこの塔に来たかって言えば、トークルームで変なやつに『行かないと死ぬ』って言われたからだよな。それを何故が僕は信じた。

 更に、外で見た死体を呑むあの闇について、この塔に来れば分かると信じ切った。


 誘導されてるよなぁ、やっぱ。


 塔への誘導。案内人。闇。塔の中の生存者。


 謎が多いね?


 「理由はまァ、んー、流れ?的な感じです」


 「えー…なにそれ」


 あ、誘導以外にもあったわ。流石に口には出せないけどさ。

 だって、()()()()なんて言ったら2人とも離れていっちゃいそうだし。


 「まあ良いじゃないすか。それじゃ、進みますよ」


 「あの、朱鷺くん」


 明さんが深刻そうな顔をしている。一体何がどうしたのか。


 「トイレって、どうしたらいいかな?漏れそうなんだけど…大が」


 うわ〜中村さんの好感度20くらい下がったよ明さん!ひでぇ顔してるぞ!


 「その辺ですれば良いじゃないですか。出来るだけ離れて下さいよ」


 「か、紙がっ!」


 「僕持ってますよ」


 「ありがとう…!!」


 リュックからトイレットペーパーを取り出して渡す。明さんは受け取ると駆け足で壁際へ向かった。

 僕と中村さんの2人は少し、いや結構距離をとった。

 

 「まぁ人として当たり前の行為な訳ですから…そんな顔しないであげて下さいよ」


 「そ、そうだよね。ごめん」


 僕も貴方も、みんなうんこするんだよ。


 そして尻を拭く紙は僕が用意してあげてるんだからね。使うんだったら感謝して拭いてね。


 「いや〜助かったよ。2人は大丈夫?」


 な、なんともない顔をしているっ。むしろ晴れやかだ!

 

 とんでもない図太さ。魔物の前ではあんなに震えていたのに、JKの近くで野糞は良いのか。

 これが、大人の余裕ってヤツなんだろうか?リスペクトっす。


 「2人ともちょっと下がって。魔物です」


 足音から判断して2体。ゴブリンか。


 「ギッギィ〜」


 相変わらずブサイクだなぁ。


 「うわキモッ」

 

 中村さんはゴブリン初めてなのか。ほんと運良いな。もし遭遇したら酷い目にあっただろうな。ほんとに運が良い。


 さて。剣を下段に構える。


 距離を詰める。近づいてきたゴブリンを下から掬い上げるようにして斬り、上半身と下半身をおさらばさせる。

 勢い止めず、残りの1匹も首を刈り取り、終了。


 あっ、トドメは2人に刺させれば良かったな。忘れてた。


 「うっ…血が…」


 中村さんの気分が悪そうだ。もしかしなくても、これが普通の反応か。

 次からは首捻ったりして、血が出ないように殺すね。ごめんね、気が使えなくて。


 

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