城塞《ルーク》の塔、攻略中
最高のクリスマスプレゼント貰っちゃったよ…。
感想ありがとうございます!!
メリクリ!
「ギィァ!!」
「ギッギグァ!?」
斬って蹴って殴ってトドメ。
飽きるほど聞いたゴブリンの鳴き声を、この塔の中でも耳にしなければならないようだ。
塔の中でも大してゴブリンに変化はなく弱い。が、数が中々多く、場所もよろしくない。
問題はない。問題はないけど、ストレスだ。
塔は、例えるなら…中世の西洋風な城塞?古城?の様な感じで、迷路の様でもある。
床天井は石造りで、灯りは壁の松明と天井の謎の球体。
広さはまあまあで、天井は4メートルくらい、横の幅は6メートルくらいかな?
武器は剣だけど、問題がないとは言えない。格闘に移らざるを得ないこともしばしばだ。
さて。
あの案内人は、上に登る階段を探せ、と言っていた。
塔に入り探索を始めて30分。戦闘は4回。
右に行ったり、左に行ったり、真っ直ぐ進んだり。迷路の様ではあったけど、意外にも早く見つけた。
視界に映った階段の前には、障害がいる。
「ギッヒヒィ…」
剣を持った、大きいタイプのゴブリン。まあでかゴブ自体は別に珍しいわけじゃない。
けど、それなりの武器を持っている個体は初めて見る。今までのは、素手か粗悪な石斧か棍棒の3パターンだった。
「ちゃんと使えるかぁ…?お前の脳みそで」
「ギッヒヒャァ!」
でかゴブが両手で剣を振るう。速さだけはまあまあだ。
軽く身を引いて躱し、一歩二歩踏み込む。
「ッ!」
まずは腕を斬り落とす。
「ギィィァ…!?」
次は、首を。
でかゴブが落ちていく自身の腕に気を取られている間に、剣に魔力を流し、首を斬る。
首も腕と同じく転がると、でかゴブの身体は塵になって散り、消えた。残るのは魔石一つ。
「楽しかった、ありがとう」
感謝は忘れずに。
…少し休んだら次に行こうか。
リュックからカロリー◯イトと水を取り出して食べる。美味ぇっす。贅沢を言えば牛乳が良かったけど。
食べながら少し今の戦闘を振り返る。
ここでは剣の練習なんてする暇はないので、実戦で鍛えていくしかない。適当な相手で色々試したりして、改善していく。
これが中々に楽しい。部活を思い出す。
技を使って、駄目なとこを見つけて、直して。
また使って、駄目なとこを見つけて、また直していく。
そんでより強く、より上手くなる。
楽しくないわけがない!更に命懸けの殺し合いなら尚更に。
次の階はもっと楽しめるかもしれないと思うと、やる気が湧いてくるよね。
じゃあ行こう。
「よっこいしょ」
…爺さんみたいだからこの掛け声はやめよう。
パパッとゴミをしまって、剣を拾い、軽く柔軟しておく。
準備完了。
階段を登り、木製の扉を開ける。
見えた景色は…
今までと変わらない石造りの壁と床だった。
「はぁ〜…」
まだ2階だしそんな変わんないかぁ…。てかまだあと190階以上あんのかぁ…。
もう既に、けっこうな精神的な疲労が。殺し合いは楽しいけど、それはそれ。だるいモンはだるい。
「…?」
何か感じたので振り返ると、扉が消えていた。
どうやら、進む以外の道はないみたいだ。こっちもそのつもりだったから良いけどさ。
……………
……………
前の暗闇から、ばたばたと足音を立てて何かがやってくる。
「ヂュウー!!」
小汚い、いや。めっちゃ汚くて臭いネズミが3匹やってくる。
もちろんただのネズミじゃない。大きさは中型犬くらい、微力だけど魔力を放つ、魔物だ。
出来るだけ近づきたくも触りたくもない。病気持ってそうだし。
槍が良かったなぁ…と思いつつ剣を握る。
「「ヂヂューゥ!」」
1匹のネズミの魔物は僕の頭部辺りまで飛び跳ね襲い掛かり、残りの2匹は体当たりか噛みつき。
剣に魔力を流し、フェンシングの刺突剣と同じような構えを取る。
もう少し、もう少しだ…今!
「ッシィ!」
弾丸のように速く、鋭い刺突。
剣はネズミを頭から尻まで貫いた。
地面を走ってくる2匹のネズミは壁を蹴って高く跳び、回避。
突き刺したネズミが塵になって消える。
着地と同時に駆け出し、1匹を蹴り飛ばす。残るもう1匹は剣で縦に半分に斬った。
蹴り飛ばしたネズミは最後の抵抗に噛みつこうとしてきたが、問題なくトドメを刺して終わり。
戦闘終了。魔石を拾って、先に進む。
2階を探索し始めて…20分か。
この階で今のとこ見た魔物はゴブリンと今のネズミだけ。つまんない。
あとは1階と変わらない風景だ。レベルもまだ上がってないし、スキルもまだ何も…仕方ないけどね。
お、分かれ道。右か左、どっちにしようか。
「右で」
曲がるときは特に気を遣う。音と気配と魔力を感じ取って…おっけい。進もう。
それから数分、変わらない石の壁を眺めながら進むと、少し開けた場所が前に見えた。
気配を消して静かに近づき、目を凝らす。
見えたのは、剣を持ったでかゴブ2体と階段。さっきの分かれ道は大正解だったな。
「ギィ〜」
「ギッヒ、ギヒギヒ!」
楽しそうだね?談笑中かな?
「失礼しまァす!」
スキル、アビリティを全発動。魔力を脚に集中して、一気に距離を詰める。
でかゴブに反応される前に、右側の1匹を首を刈って仕留めた。
残り1匹は固まってる。
なので簡単に足を斬り飛ばせた。
「…ギィ?」
ちょっと面白いね、その間抜けな声。
剣ばかりじゃつまらないので、格闘しよう。ネズミとかじゃ出来ないしね。
「シィッ!」
天井まで飛ばすくらいの勢いで腹に右の拳を叩き込む。衝撃で宙に浮き、白目を剥いて無防備。左で顔面も殴る。
そのまま壁まで飛び、ぶつかってズルズル落ちていく。まだ消えないので生きているんだろう。
なので頭を踏み抜きトドメ。
お!レベル上がった!
家を出た時が16で、塔来るまでに2上がったから…19か。
いい気分だ。勝利とレベルアップで水が美味い。
よし。魔石も拾って、水も片付けて、あとちょっと伸び。首を回すと骨がパキパキ鳴った。
それじゃあ3階もがんばろー!
階段を登って扉を開く。
やっぱり景色は変わらず石の壁と床。
…がんばろー。
振り向くと、扉が消えて壁に変わる。
気味が悪いね。もう慣れてきたけどさ、こういう感じの現象。
「お、おい。君…君は」
うわ誰だこのおっさん!!
「ッ…」
気付いたら前に立ってたおっさんから距離をと…いや、後ろは壁だ。クソっ。
剣の柄に手を掛けると、おっさんが口を開く。
「ちょ、ちょっと待て!落ち着け!敵じゃない!敵意はないんだ!落ち着いてくれ」
小太りのおっさん―よく見たら30代後半くらい―があまりにも必死に宥めてくるんで嫌でも冷静を取り戻す。
「あー、すんません。大丈夫です。こっちも敵意はないです」
「お、おう。よかったぁ…死ぬかと思ったぁ…」
おじさんはちょっと涙目だ。なんか、ごめんなさい。