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案内人


 あの雑居ビルから離れて1時間ほど経ち、かなり塔に近づいてきた頃。


 辺りは、死に満ちていた。


 血、血、血!


 死体、死体、死体!


 街は見渡す限り血に染まっている。男も女も子供も老人も等しく殺され、血の匂いが街に充満している。


 「くっせぇ…」


 怖いとか、悲しいとか、復讐してやるとかは微塵も思わなかった。ただただ不快だ。

 

 そんな自分が一番怖い。人の死を何とも思っていない。僕はアナと雪◯女王で泣ける超純粋(ピュア)な男の子だったのに…いつからサイコパスに?


 まあいっか!それよりもここから逃げよう。()()()()()()()


 少し移動し、近くのベンチの上に登る。


 ベンチに登って一息ついたその時、()が出現した。そう、以前も起きた謎の現象。

 ()は血と死体の海を呑み込み、そして消失した。


 寒気から鳥肌の立った腕をさすり、気持ちを落ち着ける。


 "アレ"が何なのか、考えるのは無駄だろう。どうせ分からない。だけど一つだけ確信がある。

 いや、もはや確信では収まりにきらない。


 『塔に行けば全てが分かる』


 異常なまでの思い込み。何者かに洗脳されているのではないかというほど。


 気持ちが悪い。そして腹立たしい。


 他人が死んでもどうともなかったのに、自分が何かされれば怒る…どうやら、今の僕は結構ダメ人間みたいだ。

 多分、ストレスが溜まっているんだろう。流石に人の死に近づきすぎた。


 「た、助けてぇ…そこ、の…人」

 

 うわぁ〜あの中にまだ息のある人がいたんだ。ってことはあの闇は死体しか呑み込まないのかなぁ?

 

 「大丈夫ですか?どこを怪我してますか?」


 血まみれで人相が全く分からない。声的に男の人だけど。


 「ぜ…んし…痛ぇ…」


 よく見るとこの人、腹に穴空いてるし腕も足も千切れかけてる。

 こりゃダメだ、長くは持たないだろう。むしろよく息がある。


 「どんな奴にやられましたか?話せますか?」


 「そんッな…事、より…助け…ガハッ!」


 男の人は血を吐くとピクリとも動かなくなってしまった。申し訳ないことをしてしまったな…。

 せめて最後は安らかに眠らせてあげれば良かった。


 とりあえず離れておいて。ちょっとした物陰に身を潜め、少し考え込む。


 あの傷は何なんだろうか。喰らうわけでもなく、ただ傷を与えて殺した?嫌な感じだな。


 不安はある。恐怖はない。


 …進もうか。塔まであと少しだ。

 

――GrryaaaAーッ!!


 ごめん。やっぱ怖い。


 何の遠吠え?ヤバすぎでしょ。絶対避けていこっと。


 ……………

 ……………


 さて。ようやく、ようやく塔に着いた。やはり馬鹿デカいな。本当に雲に届きそうだな…。

 

 ここに来るまで何度戦い、殺し、死にかけたことか。

 何人もの死体を見たし、殺される瞬間だって見た。


 たった数時間で、多くの死に触れた。


 けれど、今、僕の前に。


 今までに触れた死を鼻で嗤うほどの、()が立っている。


 『ようこそ。私の塔に』


 『歓迎するよ、狂戦士の英雄"水柳 朱鷺"くん』


 ソレは、魔法使いの様な地味な色のローブを着ている。背丈は僕と同じくらい。少し見える顔はとても整っているし、中性的で美しい声だ。

 だが、この世のものとは思えぬほどに。

 

 ()()()()()()()()()()()()


 恐ろしい。心の底からそう感じた。


 「…貴方は?」


 そう問うと、ソレは少し意外そうな表情を取った後に口角を上げた。


 『すごいね。さすが英雄だ!』


 『常人なら私の声を聞いた時点で気を失うか、発狂するかのどちらかなんだよ?英雄であっても多少は精神にクる筈なんだけどねぇ』


 『誇って良いと思うよ。その精神力』


 確かにソレの声を聴くたびに背筋が凍り、心臓が締め付けられる様な感覚に襲われる。気が狂ってもおかしくはないだろう。あと褒められても嬉しくない。

 

 「それで、貴方は?」


 『そうだね…私のことは"案内人"とでも呼んでくれ』


 『よし。早速だけど仕事を果たすとしよう』


 『着いてきて』


 そう言うと、案内人は背を向けて塔の入口らしき門に向かって歩き出した。

 怒らせたらどうなるか分からないし、大人しく後を追う。


 そしてすぐに門に到着し、案内人はこちらに振り向いた。


 『入る前に一つ』


 『一度この塔に入れば攻略するまで外には出られない。覚悟は良いのかな?』


 「…ああ」


 『じゃあ一名様ご案内〜』


 案内人が見上げるほど大きい木製の門を押して開くと、手を引かれ、中に連れ込まれる。

 そして中に入ると同時に門は一瞬で閉じられる。


 塔の中は意外と暗くない。それは壁にかけられた松明だけでなく、天井に吊るされた謎の光を発する球体のお陰でもあるだろう。


 『うんうん。じゃあ塔について説明しよっか』


 『まずはこの塔について。この塔の名前は城塞(ルーク)の塔と言う。そして二百階建てになってる』


 『キミには最上階目指して頑張ってもらおう!各階層に魔物が配置され、キミはそれらを倒し、次の階への階段を探して進む』


 『分かりやすいだろ?』


 まぁ…分かりやすいけど。いやぁにしても二百階は大変だな。


 『質問はあるかな?』


 「…外で、人の死体を回収してるのはお前か?」


 『違うね』


 「どんな魔物がこの塔にいる?」


 『教えられない〜い』


 ダメだな。何回か質問したけど対して答えてはくれない。もうさっさと攻略してやろう。


 『質問はもう良いみたいだね』


 『それじゃあ最後にサービスしてあげる』


 『秘密の扉を開けなさい。きっと貴方に幸運が訪れますよ』


 『それでは頑張ってください』


 そう言い残して案内人は、瞬きをした後には跡形もなく消えてしまった。


 「フゥーッ」


 考えても仕方ないし、先に進もう。


 目指すは最上階。魔が巣食う塔を攻略する。


 

 


うとうとしなごら書いたんでガバあったら許して下さいその内直します

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