変わらない日常
人が増えると文字数も増えることに気がつきました
僕は自転車を漕ぎながらさっきのことを思い出す。
あの生物の見た目はゴブリンと呼ばれるものと完全に同じだった。まぁ、呼ばれると言ってもそれはゲームや漫画での話ではあるが。
それはそれとして、ずいぶん簡単に勝てた。これは恐らくあの謎の声の言っていた「スキル」のおかげだと思う。僕はあんな全力で何かを殴ったことなんてないし、まず喧嘩もしない。
そしてゴブリンを殺した後、あの声がレベルが上がったと言っていたが、レベルっていうのはRPGとかのゲームのものと同じなのだろうか?
そんなことを考えていると突然声をかけられた。
「おーい!トキリーン!前見ろ前ェ!」
タカシの声だ。無事なのか!?ハッとして、気付かぬうちに下を向いていた頭を上げ、前を向くと僕は民家の壁に衝突してしまった。
「大丈夫ー?馬鹿やのぉ。ぼーっとしてだからだぞ」
でもまぁ衝突したのは自転車なので僕にケガはなく、衝撃が伝わってきた程度だ。それよりも…無事だったのか。正直ゴブリンや何か別の魔物?に襲われているんじゃないかと思っていたけど。
「おーい?トキリン?大丈夫かぁ?」
「ごめごめ。ていうかもう着いてたんだ、結構待った?」
「いや、俺も着いたばっか。あとはまっちゃんだけだなー。アイツいっつも遅いもんなぁ」
タカシこと斉藤 高士。中学からの付き合いでこうして休みの日に遊ぶ程度の仲だ。
「てかトキリンさぁ、何?めっちゃ急いだの?汗めっちゃかいてんじゃん」
「う、うん。ちょっと起きるの遅くて。あ、そうだ!なぁ、なんか変な、そのなに?変な生き物、見なかった?」
「はぁ?変な生き物?そんなん見てないけど。何?ツチノコでも見たっての?」
タカシはゴブリンと遭遇していないらしい。でも一匹だけってのもおかしな話しだ、何匹かいるはずじゃないか?
「その、さぁ。ご、ゴブリンみたいな?」
「はぁ?ゴブリン?ゴブリンってあのゲームの?」
「あ、ああ。そのゴブリン」
タカシはキョトンとした顔になっている。それから、
「ックク、っひひ、っははは!なぁマジで言ってんの!?なんだよその真面目な顔!?トキリン昨日何時までゲームしてたんだよ!っひひ、ははは!!」
タカシは腹を抱えて笑った。
いや、笑えないんだわ。さっきのが現実だろうが幻覚だろうがどっちにしろヤバイ状況なんだよ!
くそっ。取りあえず誤魔化そう。じゃないと後1週間はこのネタでいじられる事になりそうだ。
「いや、違うんよ!何かYout◯beでね?何かゴブリンいた!っていうのが何か話題だったから!」
タカシは高校生なのにYout◯beをあまり見ない希少個体だ。なのでこんな嘘もタカシ相手なら通用するだろう。
「ふぅー、いや笑った笑った。朝から元気でたわ。おっ!まっちゃんもきたぞ!いつもより少しだけ早いな!まぁそれでも遅刻だけどな!」
まっちゃんこと松本 海斗。まっちゃんも中学校からの付き合いで基本この3人でいることが多い。つまりはいつものメンバー、イツメンってことだ。
「まっちゃんおせーよ!もう釣り始めんぞー!」
タカシに軽く怒られ、まっちゃんも軽く謝る。
「悪りぃ、夜更かして寝坊した」
「早くいこーよ。僕釣りすんの初めてだからよろしく頼むわ!」
…難しいことは後回しにすることにした。今が楽しければいいやの精神で生きているのだ、僕は。
それから僕たちは釣りをした後、タカシの家でゲームすることになった。ちなみに特にたいした魚は釣れなかったが2人との会話は楽しかった。
自転車に乗り、タカシの家に向かう。その途中で魔物と遭遇するなんてこともなく、何事もなかった。
10分も経たずにタカシの家に到着した。
「お邪魔しまーす」
「邪魔するでぇーい」
「おっし、お前ら俺の部屋は二階だからな。覚えてんだろ?絶対他の部屋には入んなよ」
そう言ってタカシは飲み物を取りにリビングに行った。
「りょうかーい」
「り」
さっきからまっちゃんが適当なんだが…多分眠いんだろう。さっきから欠伸してばっかだ。
「まっちゃん眠いんだろ?夜更かしするからだぞ。」
「いや、それがさ!めっちゃ面白いアニメ見つけてさぁ!ちょ後で教えるわ!」
急にテンション上がった。まっちゃんはアニメの話になると元気になる。というか、なり過ぎる。
話していたらタカシの部屋に到着したので入り、座布団に座ると、まっちゃんにアニメの話の続きを促した。
「それで?まっちゃんが寝坊した原因のアニメって?」
「そうそう。じゃあまず話の内容からな。えーとな、そのアニメは突然日本に魔物が現れるんだけど、それを神様からチートをもらった主人公が倒して、世界を救って、女の子とイチャイチャするって話でさ、戦闘は爽快感あるし女の子が可愛いしで面白いんだよ!後で3人でみよーぜ!」
まっちゃん大当たりだわ。