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英雄と人とサキュバス


 タカシとまっちゃん。2人は魔物との戦闘で傷を負ったらしく、血を流している。

 痛いだろう。怖いだろう。それなのに、助けに来てくれた。

 やっぱ、持つべきは友ですよ。


 「トキリンを、返してもら…!?」


 「朱鷺ぃ!大丈夫かっ…!?」


 何にそんな衝撃を受けてんの?速く助けてくれると嬉しい。冷や汗が止まらないんです。


 「「乳、でけぇぇ!!」」


 「「めっっちゃ!可愛いぃぃ!!」」


 えぇ…うそ…。


 分かるよ?分かるけど。今じゃねぇだろ…!


 「…は…よ、たすけ…て」


 「っあぁ!ごめんトキリーン!」


 「朱鷺を返して貰おうか!綺麗なお姉さん方!」


 2人は我に帰れたらしく、こっちに駆け寄って来た。


 「はい、《魅了(チャーム)》」


 2人の動きが止まった。そしてアンスリの高まった魔力に《魅了》という発言。


 もしかして、詰みですか…?


 「良かったぁ〜。流石にこっちの子たちは上位個体じゃないね〜」


 「そんなに上位個体がいたら堪んないでしょ。ああ、アンタたち《武器を置いて、私の前に平伏しなさい》」


 命令されるがままに2人は手に持っていた武器を置き、アンスリの足元に伏せる。

 チラッと見えた表情は虚で、涎が垂れてる。完全に魅了されてるらしい。


 「よし、これで邪魔は入らないわね」


 「ん〜まだ子どもだけどいっか〜。トキくん?だっけ。もっと強くなるよね〜上位個体だし?」


 殺すつもりは無いと見ていいか?それならまだ何とかなるかもしれない。

 

 少しずつ身体の痺れにも慣れて来た、あと少しでそれなりに動けるようになるだろう。


 問題は魅了されてるタカシ達と、ラナンとか言うサキュバスだ。多分、力は僕と同じくらい。速さはどうか分からんけど、2人を抱えて走るなら確実に負ける。

 

 「けどさ〜()()使うの〜?失敗したら怖いよ?」

 

 「大丈夫に決まってるでしょ。お母様直伝だよ?失敗なんてナイナイ」


 呪法…?ヤバそうだなぁ。どうすっか。

 

 アンスリを人質にする?いや、逆にタカシ達も人質にされそうだけど。

 ダメだダメだ。敵の手を知らな過ぎて何も出来ない。

 はあ…出来の悪い頭が憎い。急にIQ5倍くらい上がんないかな。


 現実逃避していると状況は完全に悪化した。


 アンスリを中心に魔力がめちゃくちゃ荒ぶっていると、今までに無いくらいハッキリと感じ取れた。


 「《煩悩の花が咲く。煩悩の花が舞う。

   貴方は呪われ、縛られる。

   快楽に溺れ、花に支配される。

   嗚呼、美しき煩悩の花。開花の時。

   美を知れ、花を知れ、呪いを知れ》」


 「《呪法:快溺美縛(チャーム)煩悩の花(Anthurium)》」


 沢山の花が舞った。ハートの形をした赤い花、白い花、ピンクの花。

 その花はまるで意思があるように動き、僕を覆っていく。腕も足も頭も腹も、全て覆われる。

 視界が花で埋め尽くされ、何も見ることができない。


 「《咲け、煩悩の花》」


 ()()()()()()()


 とっても穏やかで、すごく優しくて、どこか懐かしくて、なんでか安心する男性の声だ。


 『英雄の少年。星の未来を背負う者よ』


 『君は今までよく頑張った。けれど、もう少しだけ頑張って欲しい』


 『どうか、立ち上がっておくれ』


 誰なのか、何故なのか、どうやったのか分からない。分からないけど、頑張れる。


 立ち上がり、一歩進む。変わらず花で覆われて何も見えないし歩きにくい。

 

 「あぁぁ嘘!?アンスリちゃん、()()()()は!?」


 「……やっっばいかも」


 花が全然取れない。あ、取れた。やっと見える。


 「やってくれたなァ!淫魔ァ!!」


 正直ファーストキスが貴女で良かったです!ありがとうございました!!死ねぇいぃ!!


 「くっ!」


 全力の右ストレートを片手で止められた。が、そのまま蹴りを入れる。

 ラナンとか言うのはマ◯リックスみたいに後ろに反って避ける。かっけぇ。


 「今、相手してる場合じゃっ!ないのっ!」

 

 超鋭いハイキック。ギリギリ頭を逸らして避ける。追撃、羽を利用した回し蹴りが来る。

 両手で防御すると、軽く宙に浮くくらい吹っ飛ぶ。

 

 力ヤべぇ!腕めっちゃ痛い!けど楽しいぃ!!


 「楽しいっすねぇ!?」


 「全っ然!」


 着地と同時に走り出す。


 やっぱ自分よりちょっと強い奴と戦うのが楽しい。柔道と一緒。


 今度は向こうから右の殴り、速い!受けんのは無理。何とか避ける。

 

 「足!」


 「うぉっ!?」

 

 ちょうど気が緩んだ所で足払い。バランスを崩される。

 それを逃してくれるはずも無く、蹴りが入る。


 吹っ飛ぶ。吹っ飛びながら、ちょっとゲロを吐く。


 「っ、うぇっ。ゴホッ」


 ゴロゴロ転がり、床にゲロを吐いていると、何やらラナンが話しているのが聞こえる。相手は僕じゃなく、アンスリだ。


 そういえばアンスリの存在忘れてた。急に動かなくなったけど、ジュソ何とかが関係してんのか?


 「アンスリちゃん!大丈夫!?…もうっ!だから上位個体には関わるなってお母様が…!それに呪法なんて使って!」


 ラナンはアンスリに怒っている。そして当のアンスリは目を閉じて動かない。寝てる?

 すると、ラナンはアンスリを肩に担いだ。つまり、戦闘の意思がない?そりゃあ…ダメでしょ。


 「逃げんの?」


 「…お姉ちゃんが失礼しました。お友達はすぐに治ります。それでは」


 …まあ勝ち目無いし、タカシたちが無事なら良いか。

 負けたのめちゃくちゃ悔しいけど、深追いはやめとこ。目的は飯だし〜?別に。

 

 そのまま淫魔どもはどこかに飛んで消えていった。本当に帰った。本当に?殺しにこない?こなさそう。


 あと、去り際に見えたお尻がえっちだと思うのは、僕が健全な証拠です。


 よし、とりあえず2人を起こそう。マジ役立たz…いや、来てくれただけでも有難いか。ありがとね。


 

 「「はっ!」」


 「起きたか」


 1分もしない内に2人は目を覚ました。あと、軽く店内を見たけどもう魔物はいなさそうだ。本当に軽くだからまだいるかも知れないけど。


 「お、俺は一体何を?綺麗な姉ちゃん達は?」


 「最高の夢を見ていた気がするぜ…」


 人がゲロ吐いて頑張ったのに、コイツら。まあ楽しかったから良いけど。


 「そんなのどうでも良いから。さっさと飯をリュックに詰めろ。僕は咲季たち呼んでくる」


 ついでにもっと店に魔物いないか見ておこっと。


 早歩きで入口に向かう。魔物もいなそうだ。


 「あ、お兄ちゃん。大丈夫?怪我ない?」


 「まあほとんどない。そっちは?」


 「こっちも大丈夫だったよ」

 

 特に問題もなさそうなのでそのまま2人を案内して、色々とリュックに詰めてもらう。

 

 「あーこのカップ麺食いたかった奴!持ってこ」


 「お兄ちゃんこの野菜持っていってね。あとこれも」

 

 「グミも持って帰って良いよね?」


 「米!発見!チンするタイプもあるよ!」


 「コ◯ラ!ファ◯タ!ポ◯チ!アイス…溶けてるぅ!?」

 

 命懸けでゲットした戦利品(食べ物)を漁る。


 やってる事は空き巣とか強盗とかハッキリ言って犯罪行為みたいだけど(一応後で適当にお金は置いておいたからセーフ?)。


 「よし、もう良いな?悔いはないな?帰るぞ!気ぃ抜くなよ!」


 「「おー!」」


 重くなったリュックを背負い、店を出る。


 ……………

 ……………


 行きで魔物を結構殺したおかげか、帰りは2回の戦闘で済んだ。2回目の時タカシが怪我をしたけど、咲季の治癒で治ったのでヨシ!


 家に、着いた。


 家も壊れてないし、燃えてもない。最高ー!


 「ただいま!全員無事に帰宅しました!」


 「無事でーす」


 「生きてまーす」


 「ご飯いっぱい持って帰ってきたよ!」


 扉が開き、残ってた全員が出迎えてくれる。向こうも無事そうで良かった。


 「おかえり!全員いるね!よかったよかった」


 「はー…心配で禿げたよ」


 「俺も…」


 父さん可哀想…。親父の髪は無事じゃあなかったんだね…。

 

 「まあとにかく入らせてあげて。中で話そう」


 浩二さんあざます。


 家に入り、重たいリュックを置いて横になる。ようやく、と言っても家を出てから2時間も経ってないんだけど、まあようやくリラックスできた。


 「で、どうだった?」


 それから、互いに何があったか話し合い、持ち帰った食料をみて喜び合った。


 「いや〜本当、よく出来た子たちだ」


 「それな。自分でもそう思う」


 タカシはサキュバスに魅了されて寝てたけどな!って言いたいけど、雰囲気ぶち壊しなので辞めておこう。僕は優しい。


 「あ、それとレベルめっちゃ上がった!俺なんかもうレベル5だぜ!」


 まっちゃんとタカシはレベルが5まで上がったらしい。そこまで魔物を倒していないのに何故と思ったけど多分サキュバスだろう。

 僕は相性良すぎるだけで、アイツら格上も格上だ。接近戦して感じた。精神攻撃に特化してるんじゃないかな?ラナンとか言うのは知らんけど。


 レベルの仕組みは全く分かんないけど、強い奴と戦うとレベル上がりやすいっぽい?


 「(なあ朱鷺くん)」

 

 滝さんが小さい声で話しかけてきた。こそこそ話か?


 「(何ですか?)」


 「(実はな?俺、サキュバス?のお姉さんたち動画で撮っておいたから後で観ようぜ?)」


 「マジすか?」

 

 コイツも人がゲロ吐くほど頑張ったのに何しとんじゃと思ったけど、まあそれなら許しますわ。


 「(乳たぷんたぷんやでぇ…へっへっ)」


 たぷんたぷんか…へっへっ。


 「どしたの?」


 「へっへっへ。別に何でもないっす」

 

 「あっそ」


 そのまま咲季は母さんの方に行った。


 まあ乳は後のお楽しみにしておいて。ステータスでも見ようかな。僕も今回ので合計3レベル上がったし。


 にしても、乳かぁ…。ええなぁ…。へへ。


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