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痺れるほどの愛《キス》を


 豚を醜く擬人化したような魔物、仮称オーク。


 魔物の感情なんて読み切ることは出来ないが、少なくともコイツは明らかに普通の精神状態ではなさそうだ。

 目は虚で、口は半開き。涎を垂らして、ブヒブヒと鼻を鳴らす。


 恐らく、アンスリちゃんに所謂魅了(チャーム)(洗脳と言っても良いだろう)されている状態。


 まあそれは重要じゃない。重要なのは強いかどうか。体格(ガタイ)はデカイ。180センチメートルはあるだろう。肉付きも良い、というか良すぎるくらい、まあデブだ。


 「ブギ、ブブブ」


 「臭いなぁ…死ね!」


 とにかく仕掛ける。


 距離を詰めると、オークが腕を振るってくる。中々速く、重さも相まって喰らえばかなりダメージになる筈。回避必須だ。


 しゃがんで回避すると、今度は蹴りが来る。それを転がって避け、そのままオークの背後に回る。


 「ぉッッラァ!!」


 オークの背中に包丁を突き刺す。そして全体重を掛け、腰辺りまで引き裂くと、噴水みたいに血が噴き出て服にかかる。

 汚いが、どうせ殺せば血ごと消えるのであまり気にしない。


 「ッブ!?ブッッヒィ!!?」

 

 鳴き声がうるさい。痛みを誤魔化すためか、無茶苦茶に動き回る。


 そこまで強くはない。強くはないが、危険。まだ攻撃は喰らってないが、喰らうとヤバそうだ。比喩ではなく骨が折れる。


 それと、オークばかりに気を取られてもいけない。そう、アンスリちゃん。ちょっと目を離した隙に姿を消した。

 荒れているとは言え、ここはスーパーなので隠れようと思えば何処にでも隠れられるだろう。


 隠れているだけなら良いけど、まっちゃんとタカシの所に向かっていたらかなりヤバイ。


 さっさとオーク殺して、アンスリちゃんも…殺せるか?僕に。

 …分からんけど、とにかく速くタカシたちと合流しよう。


 その為に。使う。


 「…『英雄特権:限定解放』」


 息を整えて。精神を研ぎ澄まし。魔力を感じる。


 「『斧術』」


 斧を肩に担ぐ。魔力を身体に、斧に流す。


 「ブッギギィ!」


 ちょうどオークの方から来てくれた。だから僕は、必殺の意思で斧を振るうだけで良い。


 「『岩裂』ッ!」


 振るった斧は、オークの腕を断ち、肩に食い込み、そのまま裂き進み、骨を押し切り、心の臓を斬った。


 視界が()で埋まる。が、すぐに蒸発するように消えていく。

 魔物の死による消滅。魔石だけを残して消える現象だ。


 「うわ〜やっぱ人間じゃないでしょ。お前」


 後ろから声を掛けられる。背後を取られていることに驚くが、顔には出さず振り向く。


 「アンスリちゃんか…もう逃げたと思ってた」


 声の主はサキュバス、アンスリ。


 恐ろしいほど顔が整っていてしかも胸がデカイ。人間だったら世界を取れるモデルになれるだろう。それ程の美。

 だが、魔族。人外の者。男殺しの淫魔だ。


 「普通は、今の豚に1対1で勝てるニンゲンはいないし。何より、私たち(サキュバス)を見たら前屈みになって胸ガン見するもんなんですケド」


 それは、まあ仕方ないっすよ。逆にその胸と露出度に惹かれない男ってヤバいよ。


 おっと、戦意削がれた。次にあったら絶対殺すとか言ってくる相手に気を許しちゃあダメだ。


 「…で?何か話でも?」

 

 何故背後を取ったのに何もしてこなかったのか。

 何故わざわざ洗脳したであろうオークを見殺しにしたのか。

 何故こんなスーパーにいるのか。


 「まぁ、ね。その…虫のいい話だと自分でも思うんだけど」


 「…」


 「私の故郷。第5世界に帰れるようになるまで、協力してくれない?」


 「…」


 「もちろん、トキくんにも良い事あるんだよ?それはぁ〜ね?わかるでしょ?」


 「話は終わり?」


 「うん!()()()()()()!」


 目に映ったのは満面の笑み。その笑みは悪戯に成功した子供のように可愛らしい無邪気さと、残酷さがあった。


――何か、ヤバい。確実にヤバい。動かなければ。


 そう思った瞬間。


 ()()()()()()()ことに気付く。


 だが、遅かった。振り向くことも動くことも出来ないまま、羽交い締めされる。

 

 「ラナンありがと!ラナンさいこー!」


 ラナン…。名前か。チラッと見えたのはピンクの長い髪。それといい香りに、柔らかい感触。

 多分女の人だ。それもサキュバスの。


 「ねぇ〜アンスリちゃん!この子"上位個体"だよ!辞めた方が良いって〜」


 上位個体?分かんない単語使うなよ。多分英雄関係なのか?

 それよりも!どうする。どうすれば良い。これからどうなる。

 何故拘束する?殺さないのか?それに『辞めた方が良い』?


 「だからこそだよ、ラナン?お母様も喜ぶよ絶対」


 「お母様が上位個体には関わるなって言ってたじゃん!絶対喜ばないよぉ〜。速く逃げようよぉ〜」


 「ほんっと。胸も小さければ度胸もないんだね?」


 いや、充分過ぎるほど大きいと思いますが?そうじゃなくて…!


 くそっ。力強っ!抜からんねぇ!


 「…」


 「ああっ!暴れないでぇ〜。アンスリちゃん速くぅ〜。やるんなら速くぅ〜」


 可愛いなぁクソ!にしても力強い!どうなってんだよ!


 腕と上半身はあんま動かせないけど、下半身はほぼ自由。けど、この体勢からじゃあ柔道の技使えねぇし、まずそんな技量もねぇ!

 

 「はいはい分かってる。でもその前にラナン、アレで動き止めといて」


 「えぇ〜。まあ良いけどさぁ〜」


 アレとは何なのか。できる限り暴れながら考えていた。

 すると、急に身体が動く。羽交い締めが解かれた。それも向こうから。

 

 だが、今度は頭を掴まれ、引っ張られる。そして、ラナンと言うらしいサキュバスが顔を近づけてくる。

 やっぱめっちゃ可愛い。

 

 …これって。もしかして。


 「《痺れるほどの(キス)を》」


 唇と唇が重なる。キスだ。けど、それだけでは終わらない。口の中に、舌が入ってきた。やっばい…。


 サキュバスの碧眼と眼が合う。可愛い。そして彼女から魔力の高まりを感じる。


 つまり、魔法の発動。


 それに気付いた時には、僕は膝から崩れ落ち、床に伏していた。


 

 「ラナンありがと〜!やっぱり最高の妹だね」


 「もうっ!そう言うのいいから!速くやっちゃって」


 ここで終わりなのか。これで死ぬのか。


 タカシもまっちゃんも咲季も母さんも父さんも、置いて。

 謎の塔。攻略サイト。神。第6世界。英雄。人魚。まだ何も分からないのに?まだ、まだ、まだ。


 血に染まりきれてない。狂気を喰らってない。

 まだ、もっと。命を掛けて、戦いたい、殺し合いたいのに、ここで。


 「トキリン!!」


 「朱鷺ぃ!!」


 …最高。




アンスリちゃん25歳。身長160くらい。バスト…朱鷺くんの経験不足により、今まで見た中で一番大きいことくらいしか分からない。(GとかH)


ラナンちゃん22歳。身長170。筋力A。

バスト…Eくらいなの?おっきい。


どっちも歳上!サキュバスとしてはまだまだ子供!



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