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闇。豚。それと…


 移動再開から5分程経った頃、僕たちは辺りの雰囲気が変わっていることに気が付いた。

 

 何というか、空気が重い。空気が、汚れているような、まとわりつくような、不愉快な感じ。


 「なんかぁ、雰囲気変わったな」


 「…おい、あそこ。白い壁の家の所」


 まっちゃんが何か見つけたようで、指で教えてくれる。

 そこは、以前に僕が一人でスーパーに向かった時にゴブリンに襲われていた人たちの家だ。


 近づいてみると、そこには5人分の死体が転がっていた。


 「うぇっ。ひでぇな…」


 「…」


 中々に無惨な死に方だ。

 

 腕や足が食いちぎられたように破損し、首は横に捻られ一回転している。臭いもかなりキツい。


 「…進むか?」


 滝さんにそう問われる。この先にコレを成した魔物がいる可能性が有るからだろう。


 自分もこんな死に方をするのではないかと、想像しているのかみんなの顔は青白い。


 「もちろん、進みますよ」


 僕がそう答えると、皆んな僕の顔を見て止まった。次の言葉を待っているということ何だろうか?


 「だって、勝てば良いだけでしょ。殺せば勝ちだよ?みんなで家に帰ってコー◯とかファ◯タとかで祝杯を挙げンのよ!父さんたちにはビール持って帰ってさ」


 そう言うと、みんな気が少しはほぐれたのか顔色がマシになった。


 「…それも、そうだな。ああ!俺ぁ菓子いっぱい持って帰って食うわ!腹一杯になるくらい!」


 こういう時、タカシが一番に乗ってくれる。お陰で更に雰囲気が良くなった。


 「わ、私も。チョコいっぱい食べる!あとマシュマロ!」


 咲季は可愛いなぁ…癒しだよ癒し。


 「じゃあ、行こう。もうちょっとでも到着だし」


 移動し始めようと歩き出したその時。


 身体が()()()。いや違う、恐怖で、動けなかった。


 何故か。それはすぐ近く、五つの死体の下に、()が現れたから。


 闇、としか言いようがないそれは。地面を黒く塗りつぶすように広がると、死体を呑み込み始めた。


 死体が闇に沈んでいく。


 死体が完全に呑み込まれると闇は、少しずつ縮んで黒い点程に小さくなり、最後には消えてなくなった。


 「……と、とりあえず。進もうか?」


 全員頷き、静かに、怯えるように足を進めた。


 今の闇は何なのか。何故死体を呑み込んだのか。どうやって現れて消えたのか。分からない。理解できない。


 いや、それで良い。分かる必要はない。むしろ、知ってはいけないモノであったように思える。


 「何だったんだろうな、アレ」


 「分かんねえ。ヤバそうなのは分かるけど」


 「さっさと飯取って帰ろう。それが一番」


 憶測でしかないけど、あの塔の影響なんじゃあないか。今まであんな現象見たい事ないし。まあそれは良いや。家に帰ったら攻略サイトで聞いてみよう。


 それより今は、目の前の魔物だ。


 「ゴブリン5体!もうスーパーは目の前、瞬殺して先に進む!」

  

 「魔術撃つ!そしたら朱鷺突っ込め!」


 「おっけー!」


 すぐにまっちゃんから火球が放たれ、1体のゴブリンを火だるまにする。

 

 そして火球が放たれたと同時に駆け出した僕は、燃えている仲間に気を取られ、隙だらけのゴブリンの首を刎ねる。

 

 「ッラァ!」


 これで2体。


 勢いそのまま、ゴブリンを蹴り飛ばし、殴り、斬った。


 瞬殺と宣言した通り、決着はすぐに着いた。


 魔石を拾い、息を整えたらすぐに進む。

  

 そしてすぐにスーパーに到着する。スーパーは前に来た時より荒れていて、まるで車に突っ込まれまくったようにガラスは割れ、壁も崩れている。


 「滝さん、中の様子見えます?」


 「…ああ。ヤバイ。見える限りで、ゴブリン7体、犬4体、デカいゴブリン3体。それと、人型の豚みてぇなヤツがいる」


 人型の豚?初見の魔物か。


 「たぶん、オーク?かねぇ。だとしたら強い、かも」


 と、まっちゃん。


 オークは僕も聞いたことがある魔物。かなり有名な方じゃないかな。ゴブリンの次くらいに。


 「どうする?トキリン」


 責任重大。僕の判断に全員の命が掛かってる訳だ。


 「行く。けど…咲季と滝さんは待機。かな」


 「どこで?外?駐車場?入口?」


 「入口…で良いんじゃないかな」


 近くの適当な場所で姿を隠し、作戦を練る。まあ作戦と言っても簡単な物だけど。


 「こっからは本当(ガチ)の命懸け。全力で行こう」


 「「了解」」


 今のうちにスキルとアビリティを全て発動する。


――――――――――――――――――――――――《スキル「狂戦精神」、「バーサーク」を発動します》

《精神状態が狂気に固定されます》

《スキル「英雄」を発動します》

《アビリティ「闘争本能」、「狂身狂霊」を発動します》

《全能力が上昇します》

――――――――――――――――――――――――


 少しアナウンスが増えた?何でかな。それに今までよりも力が漲るというかなんというか。


 「お兄ちゃん…」


 咲季に泣きそうな声で話しかけられる。


 「死んだら。お兄ちゃんの…スマホの検索履歴…ママにバラすから…絶対、死んじゃダメだよ…」


 「絶対死なないから絶対バラすなよ?絶対な??」

 

 コイツ…もし死んだら化けて出るぞ僕。


 「朱鷺くん。まあ咲季ちゃんは俺が守るから。海斗は任せたよ」

 

 「はい。任せて下さい。それと咲季に怪我させたらさせた分殴りますね」

 

 よし、これで安心だ。心置きなく戦える。


 「じゃあ、良いな?ゴブリンと犬は2人に任せるよ」


 「トキリンも頼むよー。一番ヤバイのトキリンなんだしさ!」


 「タカシ、朱鷺。行くぞ」


 まっちゃんの声で話を止め、走り出す体制になる。3人顔を見合わせ、目でタイミングを測り、息を揃える。


 そして走り出す!


 先頭は僕、次にタカシ、まっちゃん。その後ろに咲季と滝さん。


 作戦はシンプル。タカシとまっちゃんに犬とゴブリン(雑魚)は任せて、他の魔物は僕が全力で殺す。それだけ。

 武器は僕は斧と、サブで出刃包丁。タカシは槍、まっちゃんは剣だ。


 すぐに入り口に到着し、突入する。


 店内は荒れている。食べ物は散乱し、食品棚は倒れて少し広く感じる。

 そして食品棚が倒れているということは視界が開け、魔物を見つけやすく、見つかりやすいということ。


 隠れるのは無駄。だから、全力で戦闘に集中できる。



 入口付近に固まるゴブリンと犬の魔物を無視して奥に進む。


 でかゴブ2体がこちらに気付き、棍棒を構えて向かってくる。


 「■■■ァッ!」

 

 足は止めず、走りながら斧を振るう。でかゴブが棍棒でガードするが、所詮は木の棒。棍棒ごと首を刎ねる。


 「ギ!?」


 もう1体は足払いで転ばせ、左手の出刃包丁で喉を掻き切り殺した。


 残りはでかゴブが2体に、滝さんの言っていた仮称オークが1体。だけの筈だが、違和感がある。何か他にもいる?分からない。とりあえず殺し尽くす。


 「■■■■ーッ!」


 「ギィアア!」

 

 「ギィッ!ギギ!」


 2体のでかゴブがオークを守るように前に出る。コイツらはどういう関係なのか。


 「■■ッ!」


 刎ねたでかゴブの頭をオークめがけて蹴り飛ばす。それと同時に走り出し、でかゴブを殺りにいく。


 オークはゴブリンの頭を腕で払い落とした。まあ気にせずにでかゴブへ突っ込み、蹴り倒す。


 もう1体のでかゴブが棍棒を横薙いで攻撃してくる。それを倒れ込むように回避する。倒れ込むついでに蹴り倒したでかゴブの心臓に包丁を突き刺して殺す。


 「ギィ…!」


 ラスト1体。オークに動く気配はない。本当にどういう関係なのか。仲間ではなさそうか?


 「シィッ!」


 体制を整え、ラス1のでかゴブの腹に拳を叩き込んだ。

 すると腹を抱え、俯いてゲロを吐き始めた。ちょうど良いところに首が来たので斧で刎ねる。


 「おィ豚ぁ…!仲間死んだぞ?殺ンねぇのか?」


 「ブギ、ブギィ!」


 豚語分かんないわ、日本語話せない?アンスリちゃんは話せたんだけど。

 …まあ魔物だし、無理か。


 アンスリちゃんは自分のこと()()って言ってたし。

 あんま魔物との違いが分かんないけど。チンパンジーと人間みたいなもんなんかね?

  

 ま、どうでも良いか。何か殺る気あるみたいだし。


 「じャあ…いくぞ」

 

 走り出そうとした時、気配を感じて足を止めた。


 「誰だァ?豚以外にもいるよなァ…?」


 「うわぁ…バレた。ホント、気持ち悪いんだけど」


 女性の声が響く。とても美人そうな声だ。そして僕はこの声の主を知っている。


 つい昨日の夜、出会ったばかりの魔族(サキュバス)


 「お久しぶりッすねぇ!アンスリちゃん?」


 アンスリちゃんは不愉快そうな顔でオークに命令する。


 「はぁ…キモい。さっさと片付けなさい、豚」


 「そいつアンスリちゃんのペットなん?趣味悪いね。てか同じ魔物でしょ?仲良くしなよ」

 

 そう言うと僕を睨み、イラついた声で話す。


 「私は、"魔族"。もう忘れちゃったのかなぁ?教えてあげたばっかりだよね〜?お馬鹿さんなの?」


 まあ正直その辺はどうでも良い。にしても煽るねぇ。せっかくとっても可愛くて胸も大きいのに、殺したくなってしまう。


 「まァどうでも良いよ。さっさと殺ろう。そんで…」


 僕は思い出す。


 『戦いを求めろ。血に染まれ。狂気を喰らえ』


 「血に、染まろう」




 

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