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名簿十五番の人


 走る。走る。魔物との戦闘は極力回避。


 「ギィ!」

 

 ただしゴブリンは例外。弱いから殺すのに時間も掛からないし、何より嫌いだから。


 ゴブリンは2体。一体は走っている勢いのまま蹴り殺し、もう一体は殴り飛ばしてそのまま頭を地面に打ちつけてお終い。


 魔石を拾ったらすぐに移動を再開する。


 ………………

 ………………


 「ハァー…フゥー」


 体を動かせば傷は痛むし、いつ襲われるかも分からん状況の中走り続け、魔物から逃げ、たまに殺し合い。

 

 辛い。苦しい。けど、走るのはやめない。どうにか合流する。



 問題は、腕時計はあのデカ魚人との戦闘で壊れたこと。お陰でみんなと別れてからどれくらい経ったか分からない。


 もしかしたら追い越したかもしれないし、もっと先まで進んでいるかもしれない。最悪なのは、魔物に襲われて…ってパターン。ないと祈りたい。


 兎にも角にも探そう。眼と耳と勘も全部使う。


 ちなみにレベルが上がって身体能力だけじゃなくて五感も上昇したのか、視力が上がったし、遠くの音も聞こえやすい。たまに悲鳴も聞き取ってしまって精神的にキツイけど。


 …にしても見つからない。スマホがあれば一瞬で連絡取れるのになあ。ダルい。早くみんなにもレベル5になって貰いたい。


 そうだ、電柱にでも登れば見渡せるか?いや、無理だわ。家が多いから高さが足りない。


 走りながらあれこれ考えていたら。


 「――!―――!」


 聞き覚えのある声が聞こえた。遠くて少ししか聞こえないけど。とりあえず行ってみよう。


 1分も走れば声の主の近くまで近づき、今度はハッキリと声を聞き取ることが出来た。


 「っやめて!来ないでよぉ!」


 声的に若い女の子。聞き覚えはあるけど誰だか覚えてない。

 母さんたちではない事は確実なんだよなあ…まあでも知り合いかもしれないし、一応助けるか。

 

 お決まりのスキル、アビリティを発動。いや、狂身狂霊は初めてか。何が変わったのか分からんけど。


 襲われてるのはやっぱり女の子。にしても何で一人?

 魔物はゴブリンが3体。武器はないけどまあ何とかなる。


 まだ察知されていないウチに出来るだけ近づく。大体五十メートルか。


 「ギッ!」


 「ガッ!」


 足音なんて気にせず全速力で走る。上昇したステータスは五十メートルを5秒ほどで走り切る。

 

 流石にその間に戦闘体勢に入られた。けど、何の問題もない。まずは武器持ちから殺す。


 「ッ!」


 接近。ゴブリンは棍棒を振るうが当たる前に蹴り倒す。そのまま棍棒を奪い取ると同時に頭を踏み潰す。


 今度は2体同時に襲いかかって来る。これでとりあえず女の子は大丈夫だな。


 片方に棍棒をぶん投げる。怯んでいる間に片方を殺す。

 間合いを詰めて右手で顔を殴る。次に左手で顔を掴み、脚をかけて地面に頭から叩きつける。骨と地面が勢いよくぶつかり骨が割れた感触と音が伝わる。これで終わり。


 最後の1体はまだ残っている仲間の死体をみて逃げようと回れ右。逃がしてもいいけど…まあ殺しておこう。経験値が勿体ない。


 普通に棍棒で撲殺。

 

 「大丈夫っすか?あ」


 襲わられていた女の子を見る。服は破られ、髪もボサボサ、顔色も悪い。

 それよりも、この人は確か…


 「えーと、名簿十五番の人だっけ?く、く…」


 「…栗林です」


 そう!同じクラスの!あんまり話したことないから名前覚えてねぇや。名簿番号は覚えてるんだけど。

 

 「あーそうそう栗林さん。で、大丈夫?怪我は?」

 

 「大丈夫です…そんなに…あの、ありがとう水柳く…うぅうう…!」


 うわ泣いちゃった。めんd…まあそこまで大きな声じゃないからいいや。

 それよりもこの後どうしようかな…家まで届けてもいいけど。いや面倒いな。早く合流したいし。


 「栗林さん家近いの?送ろうか?」


 栗林さんが泣き止むまで1分掛かりましたー。泣き止んでくれてアリガトウ。アリガトゴザイマス。


 僕もう帰っていいですか?


 ……話を聞いてみると、何でも家がさっきの化け物に襲わられて、必死に逃げていたら家族と離れ離れになって、なんやかんやで現在に至ると。


 僕もう帰っていいですか?


 「これから…どうすれば良いの…?ママ…パパ…!う、うぅ…」

 

 うーん。そうだ!職業(ジョブ)が何か聞こっと。それ次第で色々変わるよ。色々と。


 「ねぇ…ステータスって言ってみてくんない?」


 やっぱりあーだのこうだの言われたけどゴリ押しで言わせた。結果は…?


 「わ、私の職業は…鍛治職人…でした」


 お、ラッキー!良いよ、ベストだよベスト。早速武器作ってもらおっと。


 「お、イイネ。その職業は武器とか色々作れるよ。試しに剣でも作ってみて」


 「え。いや、私そんな事やったこと…」


 まあ魔石を三つ用意するだけで勝手に作ってくれる。職人とか言っておきながらね。


 魔石とかその他色々説明するのは面倒なので、全部指示して剣だけでも作ってもらった。

 これで一安心。魔物とも普通に戦える。


 さて、これで栗林さんにもう用は無くなったんだけど…。


 「これからどうする?僕は家族と友達探すけど。ついて来る?」


 「は、はい。お願いします」


 んー完全に足手纏いだけどいっか。今度会ったときには冷たくなって動かなくなってたとか、ちょっと気分悪いし。


 とりあえず栗林さんの家族が家族と合流するまでは付き合うか。その家族がいなかったら…どうしよう。


 ……………

 ……………


 栗林さんと家族を探し始めて10分くらい経った。未だに()()家族は見つかっていない。

 

 栗林さんの家族は割と近くで見つかった。冷たくて動かないけど。


 「……あ、あ、ああ」


 マジでどうしよう…もう帰っていいですか?


 「パパ…?ママ…?何で…」


 今まで見た魔物じゃあ出来無さそうな殺し方だな。お二人の死体は心臓を何か太いもので貫かれたような状態だ。


 どんな奴なのかね。強そうってことくらいしか分からない。

 これが角やその他の部位による一撃ならかなり巨大だろう。

 魔術とか不思議パワーならマジでヤバい。対処法が分からない。


 つまりヤバい。


 「っグ…ぅ、うう…あぁああー!」

 

 栗林さんどうしよう。流石に両親の死体なんて見たら精神崩壊の危機だろ。とはいえ下手に慰めても意味ないどころか逆効果。


 生存の道としては放置がベスト。男としてはクソ。


 命か、誇りか。


 僕は…

 


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