二日目 出発
「頭いて…」
朝から嫌な夢見るの勘弁してほしいんですけど。いや、夢だったのか?前みたいに夢じゃなくて本当に海外があんな状況ってことなのかね…わかんね。
とりま朝ごはん食おう。今日は大変だからね。
体を起こして布団から抜けると、隣には父さんが寝ているのが見える。
こんな事態であるので、リビングに布団を敷いて家族全員で固まって睡眠を取った。
最初は夜襲を警戒していたけど、気付いたら寝落ちしてしまった。マジで不用心。
「おきろーおきろー。魔物にー食い殺されるぞー」
全員、布団の中でイモムシみたいにモゾモゾしてから目を覚まして起き上がってきた。
「笑えないが…」
「起きてすぐに重いんだよ…普通に起こせ」
ごめん。
「とりま飯食おうよ。おかん頼んだ」
「ハイハイ」
ごはんはカセットコンロで調理している。ガスも電気も止まったまま、変化ない。仕方ないけど。
食材はクーラーボックスに詰めておいた。そして、長持ちしない食材を優先して使っていく。肉や魚、冷凍食品だな。
それが尽きるまでにまたスーパーで確保しておきたい。流石に初日から強盗は気が引け、昨日は盗ってこなかったけど。
朝ごはんは昨日作った親子丼を温めて食べた。
現在の時刻は午前七時。外を覗くと、天気は空と雲の割合は4:6で晴れ。陽は登っていて明るい。
悪くはない条件だと思う。あとは気温と魔物次第。
「お母さん、水出して」
咲季が顔を洗う為母さんに魔術を使わせている。そう魔術。
母さんが使える三つのうちの一つ「発生:水」は、その名の通り水を発生させる魔術だ。
一回で桶一杯分くらいの水が発生する。それと母さん曰く、十回使えるかどうからしい。
なんでも魔術を使うたびエネルギーのようなものが減っていくらしい。多分魔力だろう。寝たら回復したらしいけど。
「お前、そんくらい我慢しろよ。今日母さん魔術使えなかったらマジ危ないぞ」
「あ。お母さんゴメン!」
「使うのは良いんだけど〜。本当に今日?まずは父さんからにしない?」
「俺も嫌なんだが…」
押し付け合いが始まりそうなので先手を打っておく。
「母さんと咲季の二人で留守番させんのは怖いでしょ。だから父さんが家に残って、僕は外。オーケー?」
「oh…けぇい」
「お父さんがんば〜」
緊張感ねぇんだよなぁ。魔物に襲われれば嫌でも覚えんのか?別に襲わせはしないけど。
「はぁ…じゃあ準備して」
「どんな準備すれば良いの?」
あー、確かに。魔術師は前に出て戦うタイプじゃないだろうし、武器は持たなくても良いのか?
とりあえず動きやすくて防御力の高そうな服…何てないよなぁ…。
「持ってる?」
「持ってなーい」
ですよねー。じゃあ動きやすいけど硬くない服か硬いけど動きにくい服のどっちかだな。
「せっかくだし、朱鷺は柔道着でも着れば?黒帯締めてさー」
「ヤだよ」
一応柔道は初段は取ったが、自慢できるほど強くない。でも柔道の経験が活きてないわけでもない。いや、かなり活きてるか。
それは置いといて、僕は昨日と同じでいいな。上の服は一部裂かれたから変えないといけない。
母さんは…体操着でも着てもらおうか。見た目がキツいのと、防御力が皆無なのが問題だけど。
魔物は僕が近づけなきゃ良いだけの話だ。見た目は気にしたら負け。
「じゃ、よろしく。それと父さん、槍も作ってもらって良い?」
「了解。剣と斧はどうする?どっちとも研いでおいたけど」
「斧は持ってく。剣は置いてく。」
そう言えば、父さんは職業が鍛治師になった影響か、武器の状態が分かったり、研いだり修理出来る様になっていた。
「あ、レベル上がった!」
「え、マジ?」
どうやら武器を作ったことでレベルが上昇したらしい。これでレベル2になった訳か。
「ステータスはどんくらい変わった?」
「あー。生命力、持久力、魔力が5ずつ上がって、筋力と技量が2ずつ上がった!これヤバくね!?」
「え、マジ?」
僕の半分しか上がってないな。いや、僕は全ステータス上がってるし半分以下か。
これは何の差だ?個人差?アビリティ?英雄のスキル?
まだ例が少なくて分かんないな。トークルームで聞いてみよう。生きて帰って来れたら。
槍を持ってみる。長さは刃も含めて僕の身長と同じか少し高いから170センチくらい。
刃は15センチ定規二個分くらいだから30センチくらいだ。
形はオーソドックスって感じ。先が鋭く、幅は10センチあるかないか。
「ほい。レベル2鍛治師の作った槍ですよ〜」
「はい。レベル7狂戦士が使いこなしますよ〜」
はっ!レベル2程度で調子に乗るなよ!こちとら歴戦の戦士やぞ!歴戦!(戦闘回数5、6回程度)
「準備出来たよ〜」
母さんが着替え終わり、リュックも背負っている。僕もそろそろ切り替えよう。これからは殺し合い、生存競争だ。
「あ、ヘルメットあげる」
「朱鷺は良いの?」
「私、全部避けるので」
スルーされたけどまあ良いや。僕はリュックの中身を確認する。水、カロ◯ーメイト、絆創膏、包帯、消毒液、あとお金も持って行こっと。
盗むのは良くないからね、意味ないかも知れないけど。一応ね。
「オッケー。じゃあ行こうか」
玄関に移動し、靴を履く。扉の覗き口からも外を確認する。魔物の姿はない。
「行ってきます」
「父さん。留守は頼むね」
父さんは胸を叩いてドヤ顔をした。
「おう。レベル2鍛治師に任せておけ」
咲季は少し不安そうな顔をしたが、すぐに切り替え、いってらっしゃいと言ってくれた。
「行ってくる」