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狂戦士

 

 窓から入ってくる日差しが眩しくて目が覚めた。


 眠気をかき消すように伸びをする。今日は何故かめちゃくちゃ体の調子が良い。僕は朝に強い方ではあるけど流石に今日は調子が良すぎて逆に違和感を覚えたが、そんな気にしなくてもいいだろう。

 ベットから抜け出し、洗面所に向かう。うがいして顔を洗う。鏡で自分の顔を見る。

 

 「別に変わってないなぁ」

 

 鏡に映る自分は昨日と何も変わっていない。短めの黒い髪に茶色い瞳、それなりに整った顔。

 

 すると、お腹が鳴ったので朝ごはん食べる。両親はまだ寝ているので朝ごはんは適当に昨日の残りものを食べた。

 着替えを済ませ。鞄にスマホや財布など色々詰め込んでいく。準備が終わったので時計を見ると、現在の時刻は4時30分。海までは自転車で30分掛かるくらいなので、ちょうどいいタイミングだろう。では、出発。


 

 「いってきまーす」


 自転車に乗り、道をいつもよりずっと速く進む。とてもギアを軽く感じる。ぐんぐんスピードを上げていく。過去最高の速度だ。テンションが上がってしまう。

 

 僕は両手を広げ風と一体になった。

 

 犬の散歩をしていたおばさんに変な目で見られたことで落ち着きを取り戻した。

 テンションの差が激しいのは僕の欠点だと思う。まぁ直すつもりもないけど。

 

 辺りを見渡す。今日は車通りも人通りが少ないな。さっきのおばさんくらいだ。いや、土曜の朝4時30 分なんだし、当たり前か。

 前にある信号が赤に変わったので少しずつスピードを落としながら止まる。待ってる間にスマホで地図を確認しておく。あまり海までの道は慣れてない。

 

「ハアァ…ィミャ」


 欠伸を噛み殺そうとして失敗し、変な音が出た。恥ずかしい。人がいないか確認するため辺りを見渡した。いないらしい、良かった。

 と、いうか信号が青に変わったので逃げるように少し急いで僕はスマホをしまってペダルを漕ぎ出した。


 家を出てからもう20分はたった頃だろう。海が近いっていうのは良いよね。津波が怖いけどねぇ…。そういえば最近小さい地震が何度か起きているらしい。小さすぎて感じ取れもしないけど。

 

 そんなことを考えながらどんどん前に進んでいたら突然、何処からか異臭が漂ってきた。

 くっさ。生ゴミを炎天下に1週間放置したみたいな臭い。吐き気がする。

 僕は服で鼻を覆い、この臭いから逃れようスピードを上げた。が、進めば進むほど臭いが増している。正直吐きそうだ。ちょっと涙目。

 

 仕方ないないな。少し遠回りだけど別の道で行こう。臭すぎて気持ち悪い。

 道を戻ろうと後ろを振り向いた瞬間、気配を感じた。いや、気配を感じたとかじゃなく、臭いを感じ取った。

 僕は振り向くと

 見てしまった。

 曲がり角から出てきたその、生物を。


 ソイツの肌は汚い緑。

 

 ソイツの顔は醜悪で。


 ソイツは僕の胸に届かないくらいの身長で。

 

 鼻が曲がるほどの臭いがする。


 僕はソイツを知っている。でも、それは、ゲームや物語の中でだけ。その筈なのに。

 

 「ご、ゴブリン……?」


 「ギィ、ギィ、ヒヒャ?」

 

 僕の声に反応してソイツはこっちを向いた。目が合った。

 僕は動けない。くそっ、動け、殺される。

 ソイツが近づいてきた。臭いがキツい。焦りと臭いで目が涙で滲む。

 僕はどうしても動けない。動きたいと思っても体が動いてくれない。

 

 「イヒィッ!キャッキャッ!!」

 

 嗤ってる。

 動けない僕を見て。走って近づいて来る。手に持った斧で僕のことを殺すんだ。

 殺す気なんだ僕のことを。殺した後は僕の死体で遊び、飽きたらまた人を襲うのだろう。

 

 でも、どうする?どうすれば良い?

 分からない、なんでこんな奴がいるのか、出会ってしまったのか、殺されなければならないのか。


 思考はまとまらない。答えは出せない。でも、体は、本能は、動き出す。生存への道を。


 

 

 殺されてたまるか!こんなことで、こんなやつに!

 

 殺されたくない、死にたくない、だから、僕が殺すッ!


――――――――――――――――――――――――

《スキル「狂戦精神」が発動しました》

《精神状態が「狂気」に固定されます》

――――――――――――――――――――――――

 


 僕の中で呟きが聞こえた。僕の中で何かが叫んでいた。


 殺せ!敵だ!敵を殺せ!血を流せ!

 

 殺すしかない。殺さなければならない。

 

 生き残るためには


――――――――――――――――――――――――

《スキル「バーサーク」の発動条件を満たしました》

《スキル「バーサーク」が自動発動します》

《アビリティ「生存本能」「闘争本能」が発動しました》

――――――――――――――――――――――――

 

 その呟きに、叫びに、僕は、応えた。


 「■■■ッ■■!」

 

 殺す、殺して、僕が生き残る


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