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純粋な殺意で


 やっとスーパーに到着した。


 五百メートルくらい歩いただけなのに、ここに来るまでに、二回も戦闘があった。

 一回目はゴブリン二体、二回目は薄汚い灰色の犬みたいな奴だ。

 犬の魔物に爪で腕を引っ掻かれ、少し怪我をした。引っ掻かれたところの服は破けて、血も出たけど、今ではもう傷が塞がった。


 そう、傷が塞がった。

 

 これはステータスの生命力の影響だと思う。命の強さ、これが何を意味するのか全ては分からないけど、少なくとも、自然治癒力が跳ね上がっているのは判明した。

 この調子でどんどん調べていきたいな。自分の持つ力を使いこなせないのは勿体無いし、かっこ悪いからな……狂戦精神とバーサークのスキルからは目を逸らす。

 

 まあ兎に角、無事に目的地のスーパーに到着したんだ。それを喜んでおこう。


 今、スーパーの駐車場から中の様子をチラッと覗いてみたけど、やっぱり沢山いンねぇ。

 見えるだけで、ゴブリン十数体、犬の魔物五、六体、見たことのないデカ目の奴。実際はもっといるだろうけど。


 それと、さっきから、僕のアビリティが主張しているような気がする。

 アビリティが主張って、意味がわからないけど、そんな感じだ。「生存本能」はやめておけと忠告しているように感じるし、「闘争本能」はやっちゃえ!みたいな事を言っている気がする。

 

 あくまで、感覚的なものだが、こんなファンタジーな状況だからこそ、感覚的なものや直感に従ったほうが良いと、僕は思う。

 魔術なんてファンタジーの塊みたいなモノもあるらしいしね。

 って事で、殺しに行こうか。レベル上げの時間ダヨー!


 問題は、狂戦精神とバーサークを使うかどうかだな。確実にコイツらが原因で身体が制御出来ないし。でも、使った方が明らかに強いし、身体の使い方も僕より上手いんだよなあ、悔しいけど。


 まあ、いっか。使おう。


 みんな経験値に変えてやれ。


――――――――――――――――――――――――

《スキル「狂戦精神」「バーサーク」「英雄」を発動します》

《アビリティ「生存本能」「闘争本能」を発動します》

――――――――――――――――――――――――


 僕は、静かに、スーパーに向けて移動しながら、剣を右手に持ち、左手に斧を持った。


 すげぇ!二刀流じゃん!これで戦えるんだ僕!?


 自分の事なのにな、何なんだろうな。

 

 ていうか意外だな、てっきり叫びながら敵に突っ込むしか脳がないと思ってたのに。

 

 完全にガラスが破られ、破壊された自動ドアをくぐり、自然に、周りに溶け込むように気配を消して侵入する。いや、入店だね、入店。

 

 まあ…完全に不法侵入だよなぁ…でも、完全に魔物のレストランになってるし。それを救うって考えれば不審者じゃなくてヒーローなんじゃね?うん。ポジティブに行こう。


 馬鹿な事を考えていたら果物・野菜コーナーにいた、バナナを食ってるゴブリンに見つかった。

 気配を消すって言っても、見えなくなってる訳じゃないしね。

 身体は、一気に踏み込んでゴブリンの首を左手の斧で切り落とした。

 落ちていく頭をサッカーみたいに足でトラップした。


 えぇ…?こんな事サッカーボールでも出来なかったんですけど。もしかして僕、身体の使い方下手だった?


 僕の驚きなど知った事かと、どんどん進んでいく。恐怖とか感情ないのかな、僕はめっちゃ怖いんだけど。


 前から二体、ゴブリンが襲いかかってくるが、右手の剣を軽々と振るい、一体のゴブリンに首に深い傷を負わせ、左手の斧でもう一体を袈裟斬りして殺した。

 すぐに、首を斬りつけたゴブリンにトドメを刺し、二回目の戦闘も終了した。


 一応、剣は三キログラムくらいあるんだけど、よく片手で扱えるな。いや、僕の身体がしてる事だし、バーサークのスキルに頼らなくてもいずれできるようになるだろうけど。

 

 周りを見渡し、敵の位置を確認している。


 奥の肉・魚コーナーに犬の魔物が一、ゴブリンがニ体。


 犬の魔物は鼻が良いのか耳が良いのか、はたまた両方なのかこちらに気が付き、()()()


 それに反応する様に店の奥からも別個体の吠える音が聞こえてきた。吠えているのは前のコイツを含めて三体くらいか。

 さらにゴブリンが少なくとも後十体に、外から見ただけだが、160センチ位はありそうなゴブリンに似た役が一体いる。


 ヤバくね?どうすんの、コレ?と思った瞬間。


 「■■■ッァァーー!■■ッ!■■ッ!」


 口と舌を動かし、喉を震わせ、空気を振動させた。つまり、お得意の咆哮だ。


 嘘だろ!マジで馬鹿だろ!逃げれば良いのに、何でぇ!?さすがに無理だろ!


 やっぱり身体は僕の言うことなんて聞かず、声を上げて敵に向かって走っていく。


 「ガァウッ!ガウァッ!」


 「ギィヤ!ギッギッギ!」


 「■■ッ■ー!」



 そろそろ、僕も覚悟を決めようか。


 今の僕は身体と心が噛み合っていないと言うべきか、まあ万全ではない。身体は戦いを求めているけど、心はそうじゃない。


 それじゃ駄目だ。生き残れない。心と身体は揃っていないと、100%の力は発揮出来ないだろう。



 だから、闘争を求めろ。


 心を殺意で満たせ。純粋な殺意で。


 燃えるような狂気で。焦がすような狂気で。


 世界を穢すような悪意を宿せ。


 

 「()()


 


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