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楽しい楽しいレベル上げ

 

 「ギィヤァッー!」


 「ギッギギィ!」


 ゴブリンのいやに甲高く、耳障りな音が辺りに響く。

 目につく限りでもうちの周りの空き地に五体、近所の家に侵入しているゴブリンを合わせたらいったい何体のゴブリンがいるのだろう。

 それに、現れた魔物がゴブリンだけなんてこともないだろう。昨日見たアニメではオークやスライムといったゲームでよく見る魔物がいたけど、どうなんだろう。勝てるのかな。


 僕は先ほどの荒ぶる咆哮が嘘のように、冷静に思考している。いや、冷静と言えるのは頭だけだ。


 完全に身体が言う事を聞かないのだ。


 どれだけ強く頭の中で念じても、動きが止まることも、鈍ることもなく、それどころか、どんどん速度を上げ、ゴブリンに向かっている。


 頭と身体が完全に独立して動いている。つまり僕は本能と狂気によって動いている、動かされているって事なんだろう。


 ああ!もう!身体が思い通りに動かせないストレスやら、命の危険に反応してアドレナリンがドバドバ出てるやらで、頭がおかしくなりそうなくらい興奮してきた!


 おかしくなりそうってか、もう精神状態は狂気なのか!じゃあ今さら気にする必要ねぇか!


 身も心も体も何もかも!全部!狂気に委ねろ!そうした方がたくさん殺せる!


 我慢が効かず、さらに、ゴブリンに対抗するように咆哮をあげてしまう。

 ほんと何やってんだろな。慎重のしの字も知らないんだろうな、本能と狂気さんは。家からまだそんなに離れてないのに……


 「■■■ーーッ!■ァ■■ァ!」


 まずは家の周りの空き地にいる奴等から殺していく、らしいね。


 さすがに先ほどから馬鹿みたいに咆哮をあげていたし、全速力で近づいているので、気付かれ、戦闘態勢に入られしまっているが、お構いなしに僕は突っ込んでいく。


 一瞬で、と言うほどではないけど、かなりの速さで接近。勢いに乗り、斧を振るう。

 ゴブリンは防御するように棍棒を構えたが、その棍棒ごと首を斬り飛ばした。


 首の肉と骨を断った感触が伝わってくる。


 ゴブリンの頭は血を撒き散らしながら落下し、地面に着いた瞬間、塵になって消えた。

 それと同時に体も塵と化し、魔石を残して消えた。


 次に、丸腰の、放心しているらしいゴブリンを蹴り飛ばしたら、落ち着きを取り戻しかけている奴の首を、これまた豪快に斬り飛ばした。

 

 蹴りを入れ、体勢を崩したゴブリンに、流れるようにリュックの脇の飲み物入れに入れてある出刃包丁を取り出して鞘から出し、鳩尾から心臓に向かって深く突き刺す。

 包丁は骨に当たったりもしたが、十分に致命傷を与えたらしく、首を斬り飛ばした奴に続くように塵となり消えていった。

 

 周りの空き地にいるゴブリンは残り二体だ。二十メートルくらい離れた所からこちらを見ていたが、ギャアギャアと声を上げ近づいてくる。

 そのまま残りの二体も、首を斬り飛ばして殺した。


 いったん戦闘終了らしい。身体が動きを止め、言うことを聞くようになった。

 

――――――――――――――――――――――――

《戦闘終了》

《経験値を獲得しました》 

《レベルが上昇しました》 

――――――――――――――――――――――――


 お、レベル上がった。まあ五体殺したしね。

 具体的な数値がないからわからないけど、もうすぐにでもレベル上がりそうかな?感覚的なものだけど。


―――――――――――――――――――――――――《スキル「狂戦精神」「バーサーク」が停止しました》

《精神状態が通常に戻ります》

――――――――――――――――――――――――


 上がったステータスを確認したいけど、さすがにこの状況の外で見る気にはならんな。

 とりあえず斧と包丁の状態を確認したら、もう少し遠くに行ってみようかな。


 斧はあんな技術もへったくれもない強引な使い方をしたにも関わらず、目立った刃こぼれや歪みはない。包丁の方も特に問題なさそうだ。

 ゴブリンが残したドロップアイテム?の魔石をリュックにしまった。


 じゃあ次は近くの家に行ってみようか。うちの家は周りが空き地だったり、道路だったりで独立しているので、ちょっとだけ距離がある。

 出来るだけ家から離れたくないけど、すぐに戻ってこれるくらいならいいか。すぐ近くには敵もいないし、これから減らしてくしね。


 駆け足くらいの速さで歩き、二分もすれば、たまに挨拶する程度の仲のお爺さんとお婆さんが住む家に着いた。

 結構な大きさの古い和風な家だ。


 ……まあ助けは間に合わないだろう。明らかに侵入された痕がある。


 犬小屋には頭を潰され、脳みそや眼の様な物体がミンチになっている犬の死体。玄関は破壊されている。それに何より、血生臭い匂いがする。


 まだお爺さんたちを襲った奴がいるのなら、室内戦になるだろう。出来るだけ荒らしたくないけど、そんなことも言ってられない。


 土足のまま家に上がり、警戒を強めて進み、障子がビリビリに破かれている部屋に入った。


 「オェ」


 その部屋の中にあった二つのモノが何か、言うまでもないだろう。


 やっぱ言うわ、まあ死体だわ。これは多分撲殺だろうねぇ。ぐちゃぐちゃだし、さっきの犬もそうだったし。

 それと、襲った奴の気配はない。もう家を出たんだろう。まだそう遠くには行ってないと思うけど。


 さすがに食料を探すために荒らすほど心も荒れちゃいないので、そのまま家を出た。供養する余裕もない。手を合わせる。


 「スミマセン。お邪魔しました」


 気を取り直して!次に行こう!次だ次!


 次に向かうのはこれまたたまに挨拶する程度の仲の新社会人のお姉さんの家だな。お姉さんの印象が強いからそう言っただけで、お姉さんと母親と父親の三人暮らしの家だ。


 すぐ近くなのでもう着きそうだ。というか着いた。


 家の外から見た様子は、そこまで変化ないかな。扉がぶっ壊れている以外には。


 何か物音がするので静かに侵入する。ヘルメットを被り、斧を持っている姿は不審者以外の何者でもないが、こんな状況だからね、許して。


 一階は血の臭いがキツい。リビングらしき所から臭いを感じる。音は二階から聞こえてくる。


 そうっすね、まずは一階の安全を確保してから二階かな。よし、斧を構えて、GO!


 あるのは二人分の死体。()()のはその死体を喰っているゴブリン一体だ。


 「闘争本能」と「英雄」のスキルだけが発動した音が聞こえたが、気にすることなく構えていた斧を振るう。


 頭蓋骨を叩き割った?斬り砕いた?なんでもいいが、致命的な一撃を与えた感触を感じる。

 

 ゴブリンはこれまで通り、魔石を残して塵になって消えた。


 やっぱ弱いな、コイツ。突然のことに驚きすぎだし、反応も鈍いし、脆い。その分、数が多いとかそんなタイプなんだろうけど。

 

 魔石をリュックに入れ、静かにリビングを出て階段を登る。登っていくにつれ、音の正体を何となく察してしまう。

 

 「ぎひぃ!ぎひぃ!ひっひっ!」


 ゴブリンが夢中で()()()()()()()。振られている側の眼は虚で、髪もボサボサ、身体中に痣が出来ている。

 

 前に見た姿とはかけ離れてしまっていて


 「ほんと、胸糞悪りぃな」


 ゴブリンが僕の呟きに反応してこちらを向こうとしたが、その前に僕の振るった斧が命を奪った。


 ゴブリンの身体が消える。それと同時に、撒き散らした体液も消えた。彼女の傷は、無くならないけど。


 お姉さんは気を失っている様で、ピクリとも動かない。

 その姿に、まったく生気が感じられなくて、よく見れば、本当に動いていない。つまり、息もしていない。脈を測ってみても、生命の動きは感じられない。


 僕は、彼女の体に近くにあった布団をかけて、魔石を拾うと、足早にこの家から出た。


 「……お邪魔しました」


 次は、何処に行こうか

 


 


 


 


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