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【完結】私と結婚しない王太子に存在価値はありませんのよ?  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
外伝

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アグニ『やがて花開く牡丹』3

 エミリオという人間の友達もでき、ゲーム補正の原動力となるヒロインも片付いた。竜帝テュフォンは無事、己の番相手である竜の乙女エステファニアを悪役令嬢の肩書から救う。これですべてが片付いた。ほっとしながら結婚式前の控室で雑談に興じる。


「陛下ったら、扉を壊してるんですもの」


 くすくす笑う仲間の声に、皆が口々にからかいの言葉をかぶせる。


「そうそう、寒くて目が覚めたな」


「隙間風が凄くて」


「ドアが壊されたからな~」


「「誰かさんに!」」


 げらげら笑いながら緑の竜である兄とハモる。卵生だからちょっと違うけど双子みたいなものだし、意識共有もあって、綺麗に音が重なった。


「くそっ、一生言われそうだ」


「そりゃ言いますよ。一人だけ外へ出るなんて、酷いじゃないですか」


「寝てたお前らが悪い」


 砕けた口調になるテュフォンだが、見た目は整っている。竜が人化すると美形になるらしい。彼らに自覚はないが、元人間の俺はしっかり「美形って得だな」と実感していた。人間は外見の美醜に左右されやすい種族だから、自分達を守るために美形に変化したのではないかと思う。


 いくら鱗が綺麗でも空飛ぶトカゲでは、いつか人間に狩られてしまいそうだ。自己防衛の本能が、人間の目に美形に映るよう姿を整えた。それも進化と種の保存に関する本能ってやつか。


 花嫁エステファニアの控室に入った白青の竜は、今世での母親だ。昔は純白の鱗に見えたが、光を反射すると青い膜を通したように見える。彼女に「花嫁は花束を持つのが習わし」と伝えた。ブーケなんて単語はこの世界に存在しないから短く説明したのだ。


「これをお持ちくださいな。アグニが言うには、花嫁はこれが必要なんですって」


 母が渡した小さなピンクの花束は、前世界での記憶を頼りにレースやリボンで飾り付けておいた。白と銀のドレス姿なのでピンクにしたが……淡いブルー系の花束も似合ったか。いや、今の時期なら黄色い花が多いか。そんな雑念にくすくす笑う母が手渡した花束に、()()()()()()()が飛んできた。


「あら、ブーケね? 未婚女性へ投げるのよ。受け取った女性は、次に結婚できるの。私に投げてね」


 1人のご令嬢から当たり前のように告げられた、異世界の習慣と単語。一度打ち消した疑惑が現実味を帯びて肯定される。驚きに目を見開いた。俺の知識を共有する竜もびくりと肩を震わせる。


 エミリオの婚約者、転生組――ブーケトスを知るのは俺と知識を分かち合う竜達と、ヒロインのみ。他にもいたのかと騒ぐ仲間だが、そもそも悪役令嬢ポジションのフランシスカが敵に回る可能性はない。今まで余計な発言をしなかったことから、今後も関与の可能性は低いと結論付けられた。

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