第25話 色鮮やかな竜の舞
赤、銀、青、水色、緑、黄……様々な色の竜が空を舞う。見上げた黒い空を自由に飛び交う巨体に、驚きで声が詰まった。よく大きな蜥蜴に羽が生えたと表現されるが、もっと優美な形をしている。手足を畳んで風の抵抗を少なくし、我が物顔で空を支配する流線形の竜は美しかった。
「ふむ、数は少ないが……こんなものか」
テュフォンの言葉に目を瞬かせた。腰を抱く彼に押されるようにして、大広間のテラスへ出たが、この数のドラゴンを前にして少ないと口にする。まだたくさんのドラゴンが眠っているのだろう。
「どうしましょう……食料が足りませんわ」
この国は竜の加護があり、実りは豊かだ。他国の侵略も退けていただいたので、略奪されたこともない。それだからこそ、備蓄の量は少なかった。前に進言したけれど、国王陛下……じゃなかった伯父様に却下されたことを思い出す。
「確か『毎年確実に得られるゆえ、蓄えは最低限で良い』だったかしら」
伯母様が呆れ半分で、当時の夫のセリフを繰り返す。記憶力のいい方ですけれど、そっくり繰り返されて記憶が鮮明になった。確かにこの国が突然の不作になって苦労した話は聞きません。それでも突然くるのが不作であり、天候不順です。天災で台風が襲うかも知れません。
進言した私を退けた時点で、伯父様には何も期待しませんでしたが……。
「安心しなさい。我が派閥の貴族は、領地に蓄えをしている……が、あの巨体では1ヶ月も保たないか」
眉をひそめて計算を始めた父に、何でもないようにテュフォンが言い放った。
「問題ない。我が眷属は地脈から力を得るゆえ、人と同じ食料は不要だ」
「そうなんですの?」
「ああ」
頷くテュフォンの整った顔を見上げながら、腰を撫で回す手をきゅっと抓る。撫ですぎですわ。他の貴族に見える場所ですのよ。唇を尖らせた抗議に、「すまなかった」と謝るテュフォンだが腰の手は離さない。
撫で回さないなら、婚約者が腰に手を回すくらいの動きは許しましょう。淑女の武器である扇がなくなってしまったため、伯母様のハンカチで口元を隠した。
ローズ系の良い香りがしますわ、よく見たら刺繍は薔薇じゃありませんこと? さすがは伯母様、素晴らしいチョイスで見習わせていただきます。
「耳を塞いでおれ」
両手で耳を塞ぐ仕草をされ、慌てて自分の手で耳を塞ぐ。手が離れた腰が、どこか涼しく感じられた。ずっと温かな手が触れていたせいですわね。
フランシスカも、伯母様も同様に手で耳を隠す。父や王女達も同じ仕草をするに至り、慌てて貴族も倣った。
キィイ!!
甲高い音がして、空を舞う竜が次々とテラスへ向かってくる。呼び寄せたのだと気づいて、慌ててしまった。こんなにたくさんの竜が降りられる場所はありませんのよ。それに、重さも耐えられなくて、建物が崩れますわ。
訴えようと手を外した私の前に、それはまるで魔法にかけられたような光景が広がった。




