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【完結】私と結婚しない王太子に存在価値はありませんのよ?  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
本編

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第24話 匂いを嗅ぐのはお止めください

「……ステファニー」


 首筋に顔をうずめて、すんすんと匂いを嗅ぐ殿方の頬を軽く叩く。跡がつくほど強くないが、驚いたテュフォンが「我を叩いたのか?」と呟いた。その呆然とした声に、眉をひそめて言い聞かせる。


「いい加減失礼ですわ、陛下と呼ばれる方の礼儀とは思えません」


 叱られた犬のような顔で、忍び笑う父へ視線を向けたテュフォンが尋ねる。


「番となる相手の匂いを嗅ぐのは、人間では失礼に当たるのか」


「ああ、そうですね。寝室以外、特に人前では控えた方がよろしいでしょう」


「わかった、我慢する」


 竜帝陛下と呼ばれた時点で、この方が伝承の竜なのは間違いない。その上、父ベクトルは伝承を確かめに飛び出し、彼を連れて戻ったのだ。前後の事情を思い出しても、竜なのだろう。そこでふと疑問が浮かんだ。


「陛下」


「テュフォンと……いや、テユと呼べ。ステファニーにだけ許す」


 愛称なのでしょうが、随分と短いですわ。私の愛称は長くなってしまったというのに。ああ、違いますわ。増えてしまったのでした。多少混乱しているようです。


「かしこまりました、テユ様」


「テユだ」


「テユ……様」


 頑張ってみたがすぐに敬称なしは無理だった。そもそも陛下を呼び捨てにするなど、王妃であっても許されないのが通例です。伯母様は別ですけれど……人目がない場所で、吐き捨てるように呼び捨てておられましたわね。


「まあよい。じきに慣れるであろう」


 優しく頬を撫でられ、接触過多な竜帝陛下に淑女との距離をどう理解していただこうかと悩む。婚約者になったばかりで、まだ婚姻したわけではない。髪や頬もたまに触れる程度で、ずっと手を滑らせるのは触りすぎだった。


 さりげなく腰を抱く癖も、直していただきたいです。ついでに手が上下して、腰を撫でる行為も……うなじの匂いを嗅ごうとしたり、髪に顔を埋めようとするのも、マナー違反ですわ。


 遠回しに警告したところ、彼はきょとんとした顔で聞いたあと「人間は面倒な種族なのだな」と眉尻を落として落ち込んでしまった。どうやら竜の「番」という婚姻関係では、問題ない行為ばかりのようですが、私は人間なのでこちらに合わせていただけると助かります。


 さすがに胸や足に触れてこないので、腰は譲歩することにした。テュフォンにはよく言い聞かせ、人前で撫でたら殴ると明言しておく。フランシスカが扇の陰で笑っているけれど、見ないフリでやり過ごした。だって恥ずかしいんですもの。


「そろそろ我が民も目覚める頃であろうが、どこぞに空いた建物はあるか?」


「……人間サイズでよければございますぞ」


 照れている間に男性陣の間で話が進んでいる。目覚める我が民って、まさか竜……?


 ガシャン! 大きな音と同時に、広間に続く扉がノックされて開いた。血相を変えたメレンデス公爵派の貴族が数人飛び込んでくる。


「た、大変です! 巨大な空飛ぶ生き物がっ!!」

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