表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】私と結婚しない王太子に存在価値はありませんのよ?  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/66

第14話 翼も鱗もありませんわ

「まだご自分の立場がわからないのね。お気の毒な方」


 同情するようなフランシスカの発言だが、その声は笑みを含んでいた。私を侮辱した男が置かれた状況に「当然ですわ」と言い切る気の強さは、実に兄好みだ。淑女の仮面の下で、私に本音をチラつかせる親友と伯母様の案内で、大広間を出た。


「皆様へのご挨拶を忘れましたわ」


 淑女としてあるまじき振る舞いだと気づき、私が嘆くと、ソファを勧める伯母様が笑顔で一礼した。


「安心しなさい。私が戻って収めておきます。フランカ、一緒にいてあげてね」


「お願いしますわ、伯母様」


 ざわざわと声が聞こえる大広間へ戻る伯母様が、丁寧に扉を閉めて出て行った。途端に噂の声が遠くなる。


 手を引かれるまま腰掛けたソファで、テュフォンは当然とばかり隣に座った。まさかと思っていた事態に、慌てて離れようとしたが腰に回された手が許さない。どうしましょう、こんな距離で……他の方に見られたら。真っ赤な顔で俯く私の向かいに、遠慮がちにフランシスカが腰掛けた。


 彼女がいることで、未婚の男女が密室に2人という状況を避けられる。醜聞になりかねない状況に改めて気付かされ、今度は青ざめた。王太子に婚約破棄された夜に、別の男に腰を抱き寄せられるなんて。


「あの、離してくださいませ」


 手を離して欲しいと訴えたが、ゆるりと首を横に振られた。浅く姿勢良く座るテュフォンは心地よい声で説明を始める。


「竜の乙女であり我が花嫁たるエステファニア嬢。竜の伝承は知っているか?」


「はい、眠り続ける竜を起こすのは『婚約者のいない竜の乙女』というお話ですわね」


 この国の民ならば、幼子でも知っている伝承だ。童話に近い絵本で、眠る時に読み聞かせられる。幼い頃に亡くなった母の声は覚えていないが、乳母にせがんで何度も読んでもらった。


 世界で最強の竜は神に等しい。魔法を使い、国を豊かにしてくれた。その竜への恩に報いるため、20年に一度竜の乙女が舞うのだ。私が舞ったのは一昨年だった。16歳になった私の舞いはワルツより先に繰り返し練習した成果だ。民が美しいと褒め称えてくれたのを覚えている。


「その竜が我だ」


 端的な説明すぎて、首をかしげてしまった。目の前にいらっしゃるのは、長身だけれど人に見える。竜は大きな身体を持ち、全身を鱗に覆われ、背に翼を持つ生き物だと描かれていたのに。


「ですが、鱗がありませんわ。翼も……」


「後で見せてやろう。背に乗せて飛んでも良いぞ。其方は我が妻になるのだから」


 話が理解できず、さらに首をかしげた。この方は説明が苦手なのではないかしら。頭にまったく内容が入って来ないわ。


 さすがに失礼なので言葉を飲み込み、もう一度説明をお願いしようとした時、バタンと乱暴に扉が開かれた。伯母様が戻られた大広間に広がる扉ではなく、廊下に繋がる扉が悲鳴をあげて開く。


「テュフォンは、竜帝陛下でしょお? あたくしの、最推しじゃなぁい! 素敵、あたくしを迎えにきてくれたのねぇ」


 耳障りな声で飛び込んだ痴女に、部屋にいた3人は同時に眉をひそめた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ”痴女”がこの部屋に入ってこられるはずないでしょ、、、 そこそこ面白いスタートだったのに、こんなつまらないことで躓くとは残念です。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ