おしゃれな動物たち
「ひだまり童話館」参加作品です。
森には床屋さんがあります。当然森の動物たちのため。店長は熊の熊五郎さん。助手はカニのカニ子ちゃん。
二人の床屋には、多くの動物たちがやって来ます。毛を染めたり、カットしたり。様々なお客さんがいます。
主に熊五郎さんがカラーリングを、カニ子ちゃんがカットをしています。
さあ、今日のお客さんは誰でしょう。
カランカラン
「いらっしゃいませ」
「こんにちは」
「やあ、ウサギさん、こんにちは」
「熊五郎さん、お久しぶり」
「今日はどうしたんだい?」
「そうねえ、少し色を変えようと思って」
ウサギさんは白から色を変えたいようです。
「何色にするんだい?」
「耳にメッシュを入れて欲しいの」
「色は?」
「どうしようかしら」
「ウサギさんにはピンクが似合うよ」
熊五郎さんが言うと、ウサギさんは喜びました。
「じゃあピンクにするわ!」
あとは熊五郎さんにお任せ。熊五郎さんのセンスで皆お願いしているのです。
熊五郎さんはウサギさんの耳を見ながら考えました。
そして、カラーリングが始まります。
ぺたぺた
ピンクの色を耳に塗っていきます。
ウサギさんはウキウキとして、塗られるのを見ていました。
「さあ、できたよ」
鏡で後ろを見せてもらったウサギさん。
「まあ! 素敵なピンク色!」
ウサギさんの片耳に、ピンクの筋が斜めに入っていました。ウサギさんは大喜びで帰って行きました。
さて、次のお客様は誰でしょう。
カランカラン
「いらっしゃいませ」
「やあ、熊五郎君」
「やぎ爺さん、お久しぶりですね」
「今日はひげを切ってもらおうと思ってね」
今度はカニ子ちゃんの出番です。
「カニ子ちゃん、お願い出来るかね?」
「もちろんよ!」
チョキチョキ
カニ子ちゃんは丁寧にやぎ爺さんのひげを切っていきました。最後にブラシで綺麗に整えると、やぎ爺さんは喜びました。
「やあ、若返ったようだよ」
「良かったわ」
やぎ爺さんは満足して帰って行きました。
今日はもう閉店です。
大体二人来れば、終わりなのです。
翌日も熊五郎さんの床屋さんは開店します。
今日はどんなお客様でしょうか。
カランカラン
「いらっしゃいませ」
「こんにちは」
「やあ、ハリネズミ君。今日はどうしたんだい?」
「針に艶がなくなっちゃって……」
「ああ、じゃあ、少しずつ塗っていこうか」
「うん! よろしく」
ハリネズミ君は嬉しそうに笑いました。
そして、熊五郎さんはカニ子ちゃんに指示を出しました。
「閉店の札を出して来てくれるかい?」
「はい」
カニ子ちゃんは扉に閉店の看板をかけました。
「ごめんね」
ハリネズミ君は謝りました。
「いいんだよ」
熊五郎さんは優しく言いました。
何故閉店にしたか。ハリネズミ君の針を一本一本塗っていくのには時間がかかるからです。
ぺたぺたぺたぺた
一本一本丁寧に艶を出す薬を塗っていく熊五郎さん。
そんなとき、扉が開きました。
カランカラン
顔をのぞかせたのはカラスさんでした。
「今日はもう閉店かい?」
「カラスさん、ごめんね」
謝ったのはハリネズミ君でした。
「やあ、ハリネズミ君。それなら閉店なのがわかったよ。また明日来るよ」
「待ってるよ」
熊五郎さんは言いました。
翌日、カラスさんはやって来ました。
「昨日は悪かったね」
と、熊五郎さん。
「熊五郎さんのせいじゃないよ」
「今日はどうしたんだい?」
「うん、少し色が落ちてね。黒くしてもらえるかな?」
「お安いごようさ」
熊五郎さんは答えました。
ぺたぺた
熊五郎さんはカラスさんに黒色のカラーリングをしていきます。綺麗に真っ黒になったカラスさん。満足して帰って行きました。
カランカラン
お客様です。
「やあ、熊五郎さん」
「やあ、白熊君」
次のお客様は白熊君でした。
「今日はどうしたんだい?」
「うん、今度、鹿さんの子供に会いに行くんだよ。それで、子供が喜ぶ水玉模様にして欲しいんだ」
「そうなんだね。わかったよ」
熊五郎さんは言いました。
と、その時です。熊五郎さんはつまづいて、カラスさんの黒いカラーリング剤が白熊君にかかってしまいました。
「「わあ!」」
声を揃える二人。
「大変!」
カニ子ちゃんがあわててタオルを持ってきました。と、その時、カニ子ちゃんもつまづいてしまいました。
「きゃあ!」
タオルが飛んでいきます。それは熊五郎さんの顔へ。
「わっ」
さらに白熊君にかかる真っ黒なカラーリング剤。
「と、とにかく洗い流そう!」
熊五郎さんはあわてて白熊君を綺麗にしました。出来るかぎり……。でも黒のカラーリング剤は、そう簡単には取れません。熊五郎さんは謝りました。
「ごめんよ、白熊君」
「いいよ。これはこれで模様のように見えるし。今日はこれで帰るよ」
「また来ておくれ」
「うん」
白熊君は帰って行きました。
ふと、熊五郎さんは思いました。白熊君のあの模様……。
翌日、パンダちゃんと仲良く話している白熊君がいました。
「白熊君、私に似てるわね」
「本当だね」
「私達は笹を食べるの。美味しいのよ。白熊君も食べてみたら?」
「え……」
「さあさあ」
パンダちゃんに言われて、笹を口にする白熊君。
「まずい……」
「何か言った⁉」
「何でもない……」
白熊君は半泣きで、笹を食べたのでした。