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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

退魔師青年と幼女妖狐

作者: 結雨

リハビリがてらに勢いで書きました。

退魔師の青年は目の前の出来事が信じられず困惑していた。

目の前には金色の長い髪に、翠色の瞳をした幼い少女が巫女服を着て立っている。ただ普通の人間とは違う点がある。それは、少女の頭からは狐の耳が、そして、臀部の辺りからは狐の尻尾が生えている。つまり、少女は妖狐だった。

「だから、我はそなたの父親だと言っておるだろう。2度も言わせるでない!」

少女は腰に手を当てると呆れ顔でため息交じりに言う。



退魔師の青年には5年前に行方不明となった父親がいた。その父親の跡を継いで青年は退魔師となり、今までに数多くの妖魔達を退けてきた。

「う、嘘だ…。親父が妖狐に負けたばかりか、その仲間になるなんて信じられない…」

青年は震える声で言う。

「嘘ではない。我は母上に敗北し、娘となったのだ。今日は母上の指示により、我の同胞達を苦しめる愚息にお灸をすえる為にきたのだ」

妖狐の少女はそう言うとニヤリと笑う。

「は、母上…?」

「うむ。瀕死となった我は母上の胎内に取り込まれ、身体と精神を妖魔の物に作り変えられたのだ」

妖狐の少女は嬉しそうに笑う。



青年は絶望した。身体と精神を妖魔の物に作り変えるなど、並大抵の妖魔では不可能だし、強力な退魔師だった父親を倒した上にそれを行うなど、自分ではどう考えても太刀打ちできる相手ではない。

「くくく。妖魔となり人間供を甚振るのはとても楽しいぞ。お主も母上の娘とならぬか?」

いつの間にか、妖狐の少女は青年に近付いており青年を見上げて首を傾げる。その表情は期待に満ちていた。

「い、嫌だ。俺は人々を助ける為に親父の跡を継いだ。その親父が妖魔となったばかりか、俺も妖魔にしようとするのなら、俺はそれに抗う」

青年は言うと、懐からお札を取り出す。

「ふむ。ならお主を痛めつけ、我との力量差を思い知らせるとしよう」

こうして、退魔師と妖狐の少女との戦いの火蓋は切って落とされた。



激しい戦いを繰り広げる青年と妖狐の少女を見つめる視線があった。

「ふふふ。頑張りなさい愛しい娘よ。その退魔師を倒す事が出来たら貴女の妹にしてあげるわ」

視線の主は青年の父親を倒し、娘とした妖狐だった。

妖狐は燻んだ長い金髪に、翠色の瞳をしており、妖艶な顔立ちに豊満な胸をしていた。狐の耳が頭から生えているのは少女と同じだが、狐の尻尾は少女が1本なのに対して、9本も生えていた。着ている巫女服も胸を半分しか隠しておらず、少し動いただけで露わになってしまいそうだった。

妖狐は胸を支えるように胸元で腕を組むと、妖しげな微笑を浮かべ青年と妖狐の少女との戦いを見つめていた。



妖狐の少女の耳が母親の囁きを捉える。

(ふむ。愚息が我の妹に…。俄然やる気がでてきたぞ母上)

妖狐の少女の動きが急に素早さを増す。

(くっ…!?な、なんだ急に動きが)

その動きに青年は徐々に翻弄され始める。

「もらったぞ。愚息よ」

妖狐の少女はニヤリと笑うと、手刀による突きを青年の腹部に突き刺した。

「ぐぁっ!?」

青年は後ろ向きに倒れ、腹部から妖狐の少女の手が抜ける。妖狐の少女の手には青年の血がべったりと付いており、妖狐の少女は匂いを嗅ぐと付いている血を舐めた。

「ふむ。なかなかの味ではないか」

妖狐の少女は満足気に頷いた。



もがき苦しむ青年とそれを見つめる妖狐の少女の背後に近付く存在があった。

「良くやったわね。偉いわよ」

それは幼女の少女の母親である妖狐だった。妖狐は娘の背後に立つと、その頭を優しく撫でてやる。

「うむ!母上。早くこの愚息を我の妹にしてくれたもう」

妖狐の少女は振り返ると嬉しそうに尻尾を振りながら言う。

「勿論よ」

妖狐はそんな娘の様子に微笑んで頷き、息も絶え絶えとなりつつある青年に近付いてしゃがむとその身体を抱きしめた。

すると、青年の身体が光の粒子となり妖狐の腹部の辺りに吸い込まれていった。



青年の意識は真っ暗な闇の中で回復した。

(ここは…どこだ…?)

青年は辺りを見回すも闇しかなく、自分がどこにいるのかも何一つ分からない。

(ここは私の身体の中よ。今。貴方の身体は私の娘となるべく作り変えてるわ。安心して眠りなさい)

そんな青年の脳内に響く女性の声があった。その声は不安は感じず、むしろ安心するくらい心地の良い声だった。

青年はその声に身を委ねる事が危険な事だと分かっていても、ずっとこの心地よさに浸っていたいと言う思いが勝ち言われるがままに意識を閉じた。



次に青年が目覚めた時。辺りはまだ闇に包まれていたが、自身の身体が以前のは違うのは直感で分かった。そして、自身の思考が人とのは違う事も。

(ああ…。私はお母様の娘に、お姉様の妹になったんだ…。嬉しい)

青年の身体は妖狐の物に、精神は妖魔の物に作り変えられていた。

(ええ。そうよ。よろしくねわたしの愛しい娘よ)

(うむ。愚息…いや。我の可愛らしい妹よ。よろしく頼むぞ)

元青年に語りかけてくるのは2人の妖狐。1人は退魔師だった自分を娘にしてくれた優しい母親。そして、もう1人は人間だった時は父親だったが、今は自分が妖狐になれるきっかけを作ってくれた姉。

(この2人が私の新しい家族)

元青年は嬉しそうに微笑むと、ついに誕生の時を迎えた。



地面に座り込む元青年の目に飛び込んできたのは豊満な身体をした妖狐と幼い妖狐の少女。

元青年は瞬時に2人が自分の新たな母親と姉であると理解する。

「お母様…。お姉様」

元青年は自分の声が人間だった時とは違う事に気がついたが、特に気にはならなかった。

元青年はゆっくり立ち上がると、妖術で姿見を作り出し自分の身体を確認する。

新たな肉体は、5〜6歳位の少女の背丈をしていて、翠色の瞳をしていて髪は金色の肩口位までの長さで、頭からは狐の耳が生えている。そして、臀部の辺りからは当然のように狐の尻尾も生えていた。

どこか庇護欲をそそられる愛らしい顔にとても合っていた。

「可愛いわよ」

「うむ!」

母親と姉が優しく頭を撫でてくるのが嬉しくて、元青年はゆっくりと尻尾をふった。


姉と同じ巫女服に着替えた元青年は姉と並んで母親の前に立つ。

「早速。2人にお願いがあるの。この近くに退魔師の村があるのだけど、邪魔だから滅ぼしてきて欲しいの」

母親の妖狐は微笑んで言う。

「うむ!我たちに任せておけ」

「う、うん。わかったお母様。お姉様とがんばる」

姉の妖狐は大ききく頷く、妹の妖狐は胸の前で両手を握り2度頷くと夜の森に消えていった。



この夜。1つの村が壊滅した。唯一の生き残りとなった少女の話では幼い妖狐の姉妹が現れ、次々と村人を襲ったそうだ。

「どうだ。我が妹よ。妖狐となり人間供を襲うのは楽しいであろう?」

「うん。お姉様とっても楽しいよ。人間なんか辞めれてよかった」

少女が聞いた妖狐の姉妹の話の中にはこの様な物があったらしい。

詳しい話をさらに聞く為に中央の街から協力な退魔師が来た時。生き残りの少女の姿が忽然と消えていた。そして、数ヶ月後。夜の森で大人の妖狐と幼い妖狐の少女3人が目撃されたと言う。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 親子から姉妹になって、幼女妖狐として幸せに暮らしていく。なんかいい話ですね。
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