15、シャーマンのお告げ
テマスカルのドーム内は、外から想像したより広めだった。
先ほどの小柄な男の人が、焼いた石にハーブの水をどんどんかけ、ドーム内を熱い蒸気で満たしている。深呼吸をすると、セージやティーツリー、レモングラスなどの香りが鼻孔から、皮膚から、すべての細胞に沁み込んでいく気がする。
中の暗さに目が慣れてくると、私の他にも数人ひとがいるのがわかった。白い布をまとった女性が三人、奥のほうで眼を閉じて胡坐をかいて座っている。
私も目を閉じて、シャーマンが何かわからない言葉を唱えているのを聞いてみた。
お経を唱えるようなシャーマンの声はテマスカルのドーム内に響き、地を這い地球を廻り、私のところにやってきて身体の中心に響いているような感覚だ。
身体の中心から表面、そして目の奥から脳みそ全体をビリビリと低周波のような振動がゆっくりと巡り、私はその眠りに入る前のまどろむような心地よさに身をまかせていた。
しばらくしてシャーマンの声が止んだので目を開けると、白の布を腰まで落し思いっきり乳を出していたので、ギョッとしてたじろいでしまった。
もしやあの女性たちも・・・?とそうっと目を向けると、三人とも胸に布を巻いていた。
…よかった。みんな出さなきゃいけないのかと思った。
シャーマンが女性三人の方に向かい、大きめの声で何か言った。
すると、一人の女性が大きな声で何か言った。
それに合わせ、シャーマンと三人は大声で
「オメテオー!」
と叫んだ。
???
なんだ、何をやっているんだ?
それに触発されたようにもう一人も、なにかを大声で言い、言い終わると四人で「オメテオー!」と叫ぶ。なにかを宣言しているような感じだ。
順番に代わるがわるに宣言しては、みんなで「オメテオー!」と叫び、ドーム内は彼女たちの熱気でまさに蒸し風呂状態。
―というか蒸し風呂なので、身体の穴という穴から汗が噴き出ている。熱い。クラクラしてきた。
そこへ焼き石にハーブ水男が私の前に現れ、葉っぱ入りのローズウォーターを瓶のまま頭から容赦なくぶっかけてきた。突然のことで驚きつつも、熱々の身体に冷たいローズウォーターはとても気持ちがいい。
男は私に片言英語で語りかけてきた。
「ジブンノナカノワルイトコロヲサケブ、デテイク。シャーマンガクリアー二シテイル」
「イ、イエース。イエース」
「ツギニ、ナリタイニンゲンノスガタヲサケブ。シャーマンガヨイエネルギーヲイレル」
なるほど…。
自身の悪い事(怒りとか不安とか?それとももっと直截的な例えば腰痛とかそんな身体の不具合?)を叫ぶと、それらが出て行ってシャーマンが浄化してくれると。
そしてなりたい姿(なんだろう、健康とかいつもニコニコしてるとかかな…)を叫ぶと、シャーマンがエネルギーを入れてくれると。
《オメテオ》はキリスト教の《アーメン》みたいな感じなのかな…。
男は私が小さくうなずいているのを見て暖かい笑顔になり、また焼き石にハーブ水作業に戻った。
うわあ、もうやめてくれ…もうじゅうぶん熱いよ…。
額から、耳の後ろから、ダラダラと汗を流しながら熱気に耐えていると、シャーマンが私の前に来て座った。
―私も何か叫ばなければいけないのかしら…。
シャーマンは私の目を見て静かに微笑んだ。
「あなたの中には…」
―なんだろう、懐かしい声…
「…え!?日本語?」
思わず声を上げてしまった。
シャーマンは平然と続けた。
「あなたの中にはエネルギーはない。出すものがない。まずはそれを取り戻しなさい」
「エネルギー…」
「あなたは時計回りをしなかった。反対に回した。でもそれでよかったのです。これからいろいろな次元に行くことになります」
「時計回りって、ああ!あの!エナジーエッセンスのですか?花曼荼羅の上を回す?私時計回りにしてなかったのか!?そんなに大事なことだったのか、時計回りというのが?」
「私はずっと祈っています。あなたが取り戻すのを…」
あああ。
なんかこの人の目の中に吸い込まれていく―
ああ、そうか、この人、みたまさんだ…




