14、メキシコでテマスカルの儀式
…えーと、そうそう。
これね、生花で作った花曼荼羅。花びらや葉っぱや萼を規則的に、放射状に並べた美しい円。
緋色と明るい青緑、フーシャピンクと鮮やかな黄色の。
――こんなどぎつい色の花曼荼羅だったか。
私は簡素な白壁の部屋にいた。隅に水を張った大きめの甕が置かれており、その上に花曼荼羅が浮かべられている。
私は裸に白の布を巻いただけの状態で、その鮮やかで美しい円を見ていた。
煙の上るお香が入ったボウルを持った女性と、ほら貝を持った小柄な男性が部屋にはいってきた。
女性は頭に鳥の羽を刺し、濃い緑の葉の首飾りをしていた。私と同じく白の布を身体に巻き、唇に黒の縁取りの入れ墨を施している。
シャーマンだ。
薄い褐色の肌は光を反射して輝き、深い湖のような瞳は目に映っているものとは違うものを見ているような、不思議な目玉。なぜだか懐かしい。そう思いながら見ていると、シャーマンの深い瞳に吸い込まれて、その瞳の中の世界に行ってしまいそうになる。
シャーマンは私の身体の表裏にお香の煙を浴びせ、神棚に祀る榊のような薬草を叩きつけた。そして何かつぶやき、隣に控えていた小柄な男からほら貝を受け取って、
「ぶおおおおおお~ぶおおおおおおお~」
と吹いた。
シャーマンがわからない言葉で私に話しかけた。
助手のような男が片言英語で通訳してくれる。私も片言英語だから、流暢な英語よりすごくわかりやすい。
「アナタハ、イマ[テマスカル]ノギシキヲウケテイル。ココハメキシコ」
男は腰に白い布を巻き、上半身は裸。腕にドラゴンの入れ墨をしている。私と変わらないか少し小さいくらいの背丈で、大きな瞳の底は深い。
夢なのか。自分では夢の中にいるとも思っていない。
シャーマンに誘導され部屋を出た。ここはシャーマンの自宅のようだ。
庭の小道を歩いたところにある、石のドームへ入る。中は暗く、灯りはドーム内の隅に何カ所か置いてある小さなろうそくの火だけ。
足元はヤシの葉のようなものが敷き詰められていて、私はその柔らかい植物のマットの上に腰を落ち着けた。




