12、効かない神社
「そこ、効かないよ」
二礼二拍手の後、少し手のひらをずらした状態で熱心に祈りを込めていたとき、後ろから声がした。
思わず振り向くと、短いグレイヘアにテロンとした素材の半袖ブラウス、足首が出る丈の薄い色のズボンのおばあさんが、鳥居をぐくりこちらへ歩いてきている。
「へっ?」
「この神社、効かないんだってば」
腰は曲がってはいるが、細身で骨が硬そうな、芯がしっかりした足取りだ。
「ああ、そうですか……」
本屋でみたまさんの「どうかめんどうがらないで」という追記を見て、すぐに百均へ向かい小さなプラスチックの容器を買い、そこから一番近い神社へ来たのだ。エナジーエッセンスを作るために(…他人に言えない)。
しかし、この神社には湧き水、御神水はないようだったので、とりあえず参拝していたのだった。
「あんた、そんなごっついのにお水入れてくの?」
おばあさんは、私の肩から下げた袋に入っているボトルを見て言った。
黒目がちの、というか目いっぱいの黒目の小さな瞳がなぜか少女を思わせる、不思議なおばあさんだ。
なんでそんなに目がキラキラしているのだろう。
「ああ、これはスーパーでお水もらうためのやつです。…あ、え?ここ、御神水湧いてるんですか?」
「御神水って、そんなたいそうなもんじゃないよ。冷たい水が出てるってだけ」
「えっどこっ?」
おばあさんが私にシュッと手招きをするので、後についていった。
神社の横の階段を降りたところに、石と石の間から水が流れて、大きなくぼみのある石に水が溜まっている、石の洗面台のようなところがあった。〈御神水〉などの表記は一切ない。金柄杓が一本、そっけなく置かれてる。水に触ってみると確かにひんやり冷たい。
「そのごっついのに入れるの大変だよ」
とおばあさんがまたしても言うので、
「あ、いえ、これに入れます」
と、先ほど購入した小さなプラスチックの容器に御神水を入れた。すぐに水はいっぱいになった。




