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桜花-OUKA-  作者: zinto
4/13

日常1

「・・・997・・・998・・・999・・・1000!!」


「はぁ~~きつ・・・。」


日課の鍛錬を終え,


道場の床に寝転がった。ひんやりとした感触がほてった身体に心地良い。


そこへ


「おはよう、隼人。今日も朝から精が出るな。」


いつものような落ち着いた口調で幼馴染の和輝が道場にやってきた。


「おはよう、和輝。ちゃんと鍛錬しないとすぐに鈍るし、


なにより爺ちゃんの雷が落ちるから・・・・。」


そう言いながら寝転がっていた体勢から逆立ちへ、


そのまま腕力だけで飛び上がり、くるりと回転しながら


軽々と着地する。


「お見事。」


その言葉と同時に床に置いてあったタオルを渡してくれた。


「今日はめずらしく早いね。なんかあったっけ?」


時計を見るとまだ7時を回ったばかり


和輝がいつも迎えに来る時間にしては30分以上も早い。


「昨日から母が家を空けててね、朝食を隼人達と一緒に頂こうと思って。」


「あ~そうなんだ。うん!大丈夫だと思うよ。家いつも多めに作ってるし。」


「隼人は外見に似合わずよく食べるもんな。」


「アスナのご飯美味しいからつい食べ過ぎちゃうんだよ・・・。」


「それは異論を挟む余地はないね。」


和輝もアスナの作るご飯が好きなんだなと改めて感じてうれしくなった。


「お兄ちゃん。朝ごはん出来たよ。」


タイミング良くアスナが道場に声をかけに来てくれた。


今日も満面の笑顔だ。きっと朝ごはんの出来に満足しているのだろう。


「おはよう。アスナちゃん」


「あれ!?カズ君来てたの?」


思わぬ客人にアスナは驚いてる。


「ああ、隼人には今話したんだけど昨日から母が家を空けててね、

 

朝ごはんを頂こうと思って。」


「そうなの?それなら早く言ってくれてればカズ君の好きなメニューも作っといたのに・・・。」


残念そうにアスナがつぶやく。


「いつも通りのアスナの飯が一番美味しいよ。


そんなの気にして朝から何品メニューを作る気だよ。」


隼人は少しおどけて見せ、


「そうだな。そんなに気を使われると気軽にご飯を頂きにこれなくなるしな。」


和輝もそれにのり肩をすくめてみせた。


そして隼人と和輝はお互いに顔を合わせるとうんうんと頷きあう。


「ありがとう二人とも。優しいね。今日もいっぱい作ったからたくさん食べてね!」


アスナはとてもうれしそうに笑顔でそう告げると準備のために先に道場を出て行った。


「隼人の家はいいな。アスナちゃんにしてもさくらさんにしても料理を楽しそうに作ってくれて。


そして、何より出てくるものがすべて絶品ときてる・・・。」


「まぁうち、食事には爺ちゃんをはじめ、父さんもうるさいからねぇ・・・。


でも母さん料理が趣味だし、アスナはその影響モロにうけてるよね。」


「家とは大違いだな・・・。あの母は食事は栄養を補給できればいいくらいにしか思ってないから。」


「親父さんはその辺りなんにもいわないの?」


「あの人はそもそもあまり家にいないしな。家の食事なんて興味ないんじゃないかな?」


それまでの落ち着いた口調なのは変わらなかったが明らかに冷たいものが混じっているのを


隼人は感じる。



いつからだろうか和輝と出会った頃はそんなこと無かった気がするのだが、


いつの間にか自分の家族の話になると決まってこうだ。


和輝と出会ったのは小学1年の頃だった。


アスナと俺は本当の兄妹ではない。


俺が4歳の時に父さんが今日からお前の妹になるアスナだ!


と言ってどこからかつれて帰ってきたのだ。


突然のことで俺、爺ちゃん、当時はまだ健在だった婆ちゃんがポカーン・・・としばらく固まっていると


母さんだけが


「まぁ!お人形さんみたい!!すっごいかわいい!やったわ!!!」


なんてド天然なのか、肝が据わっているのかは不明だったが速攻で承諾して家族になった。


髪は光を集めたような美しい金髪で、その目は透き通った海のような青い眼。


最初は少し俺も戸惑ったけど、なれない場所で言葉も通じず毎日不安そうにしているアスナをみて、


この子を守ろうと子供ながらに決意するまでにそう時間は掛からなかった。


いつもアスナと一緒にいた。どこへ行くにも、ご飯を食べるときも、寝るときも四六時中。


するとだんだんとアスナに笑顔がこぼれだしあるとき俺を日本語で


「お兄ちゃん」


と呼んでくれた。


それ以降はアスナはいつも俺のシャツのすそをつかんでついてくるから


母さんが隼人のシャツはすぐにダメになる・・・とぼやいていたが


俺はそのシャツのすそが延びてしまうことが嬉しかったのを良く覚えている。


そんな日々をすごして、俺とアスナが揃って小学校に入学した時、


同い年で兄妹なこと、


そして何よりアスナの外見でかなり異質な目でみられた。


そこに


「二人を見てるとなぜだかほっておけない」


と和輝に声をかけてもらってからの仲だ。


昔のことを思い出していると


「どうした?行かないのか?せっかくのご飯が冷めてしまうぞ・・・


なんなら隼人の分も俺が美味しくいただくが?」


その口調は割と本気だ。


「勘弁してよ。俺だってもうお腹ペコペコだよ・・・すぐ行くよ。


ちょっと頭を水で流したいから先に行っておいて。」


「わかった、じゃあ先に行く。お前の朝食の安全は保障しないがな。」


冗談だよね?という言葉を投げかけるより先に和輝は行ってしまった。



・・・冗談だよな?



今となっては和輝を信じるしかないが・・・まぁ最悪アスナがそれを許すとは思えない。


さっさと汗を流して向かおう。


蛇口から勢いよく水を出し頭を突っ込む。


鍛錬で火照った頭部に冷たい水がかかり、毛穴が一気に引き締まるような感覚が心地いい。


今日もいい一日にしよう!そんなことを思いながら隼人は居間へと急ぐ。

この作品を目にしていただいている方がポツリポツリと増えてきていただけているようですごくうれしいです。

まだまだ序盤で何ともいえないでしょうが、もしなにか思うことがありましたら気軽に感想などをいただけるとありがたいです。


更新ペースは遅いかもしれませんがこれからも努力していきます!

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