目覚め1
「・・・・・。」
「・・・・・んん?」
目を覚ますと視界には見たこともない天井が飛び込んできた。
ただただ白い・・・。
何故だろうさっきまでこれと同じような光景を観ていた気もするのだが
思い出せない。
ただ何故か胸の内が温かくなるのを感じる。
起き上がろうと腕に力を入れると
「イッ!?」
少し痛みが走り、思わず声が出た。
どうやら少しひねっているようだ。
周りを見渡してみるとどうやらここは病室なのだろう。
でもなんで自分がここに寝かされているのかは皆目見当がつかない。
記憶でも失ったのか?などと冗談半分に考えた。
源 隼人
11月3日 蠍座
私立桜ケ峰【さくらがみね】学園2年
趣味は散歩
記憶は・・・失っていな・・・いかな?
その後も色々思い出すことは問題なかったのだが、
なんで病室で寝ていたのかという所だけがぽっかりと抜けてしまっている。
考え込んでいると、病室の外から誰かの足音が聞こえてきた。
足音はこの病室の前で止まり、ガチャリと音を立てながら扉が開く。
そこから現れたのは見慣れた顔で
隼人の視線に気づくと少女は固まったまま動かない。
沈黙に耐えかね
「おう・・・。」
っと手を挙げた瞬間
少女の目から大粒の涙がボロボロと溢れ出し、
次の瞬間
無言で泣きながら飛びついてきた少女を受けとめ、何がどうなったのか
さらに頭を悩ませるのであった。
どれくらいそうしていたであろうか、頭をやさしく撫でてもらっていたのと、一しきり泣いたのとが
重なって少女もやっと落ち着きを取り戻してきている。
「落ち着いたか?」
優しく問いかけられ少女は
「すごく心配したんだから・・・。」
と少しひくつきながら、腕の中で上目づかいに訴えられたが、ゆっくりと頷いてくれた。
隼人は安心して微笑みで返し、
それを見た少女もまた笑顔になる。
「あのさ、聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「?」
少女は首を傾げた。
「俺はなんでここで寝てたのかな?」
隼人は目を覚まして一番最初に感じた疑問の少女に問いかけてみる。
「え!?」
すると少女は鳩が豆鉄砲を食らったような顔になった。
「お兄ちゃん覚えてないの?」
「ああ・・・全く・・・。」
「そうなんだ・・・。やっぱりショックとかそういうのがあるのかな?」
妹は1人でぶつぶつと考え込んでる。
この泣いてたのは妹でアスナ。
小さい頃からはよく俺の後ろをついてくる子だったっけど
それは今でもあまり変わっていない。
このまま考え込ませていても埒が明かないのでアスナに話の続きを催促した。
「あ・・・ごめん。うん、あのね?お兄ちゃん女の子助けようとして事故にあったんだよ。」
そう切り出されて驚きはしたが、その後の妹の話を聞きながら忘れていた事故の日のことを
思い出していた。