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桜花-OUKA-  作者: zinto
11/13

覚悟

「誰がゴリラだ!よく見ろ!俺は一応人間だ!!!」


一応でいいのか・・・と思わず心の中でツッコミを入れてしまう。


なずなちゃん一応人間と認識できたのだろうか。それでもやはり突然の大男登場には


びっくりしているようで今度はフリーズしてしまった。


「あら!晃君じゃない。どうしたの血相変えて?」


「ああ!姉さん。やっぱ今日も美人ですね~・・・。」


突如登場したこの大男は俺とアスナの中学からの友達で


東堂 晃。


とても高校生とは思えぬ体格で、


海外のアメフト選手にもひけをとることはないだろう。


頭髪は短髪でサイドには綺麗なラインアートが剃り込まれている。


そんな風貌からなずなちゃんがゴリラと間違えるのも素直にうなずける。


地元でも有名な極道である東堂組の若頭なのだが、


親父さんの高校まではちゃんと出ろとの方針で


高校受験のない桜ケ峰学園に中学から入学している。


この恵まれたがたいや見た目とは裏腹に盆栽が趣味で、


高校からの選択講義では造園関係を選考しているため、本人も満更ではなさそうだ。



「あら!晃君たらいつもうれしいこと言ってくれるわね~。」


晃は母さんを見るたびにこうである。


「アッキーいらっしゃい。最近みなくてどうしたかと思ってたよ?」


「おう!アスナ。それがよ・・・組の抗争が激化して一週間ほど県境まで・・・」


どうやら入ってきた時の勢いは母さんとアスナの雰囲気にのまれて鎮火・・・


「て!ちげーーー!そんなこと言ってる場合じゃなんだよ!隼人がよ!!!」


してなかった。


「隼人ならここにいるよ?」


アスナが俺を指さす


「おお!隼人!!!」


ガシッ!!そんな音が聞こえてきそうなくらいの力で両肩をつかまれた。


「おい!隼人!死ぬんじゃね~~!!


俺にはおめー以上のダチなんて今後表れる気がしね~!


死んだら許さないからな!


姉さんやアスナ残してどうすんだ!こら~~~!」


言葉と一緒にグワングワン揺らすんでまた記憶でも飛ばしてしまいそうだ


「アッキー!!お兄ちゃん起きてるから!!」


「なんだって!?」


アスナに突っ込まれ停止した晃は



「隼人!?・・・お前なんで死んでないんだ?」



今度こそ鎮火した。






「お前ね・・・。俺に死んでほしいのか死んでほしくないのか・・・。」


「いや~~すまねぇ・・・。


抗争がやっとのことでまとまってよ、家に帰ってみたら組のやつから


”若が留守の間に源の坊ちゃんが事故にあったようで、


今も入院してて意識が戻ってないみたいです”


なんて言われたもんでよ。


事故にあって意識ないって言ったら生死の境さまよってると思うだろうがよ。」


晃の言うことはよくわかるが


「それにしたって


お前なんで死んでないんだ?


はないだろ・・・。」


「いや~本当に面目ね~」


申し訳なさそうに頭をボリボリとかいた。


晃は昔から猪突猛進なところがあって、


こうと思ったら後先考えずにまず体が動くタイプだ。


和輝とは真逆のタイプだからよく二人はいがみ合っている。


最近


「僕が中学の間留学なんてしなければこんな単細胞を隼人とアスナには近づけさせなかったのに・・・」


「こんな眼鏡が本体みたいな陰険ヤローは、御天道様みたいな隼人とアスナには不釣り合いなんだよ!」


俺の知らない間にこの話題からついに全力でぶつかってしまったようなんだけど、


二人ともボロボロになった後、互いに認めるところはあったみたいで、


今でもいがみ合ってはいるけど高校に入ってすぐのころとは雰囲気は別物だ。




「嬢ちゃんもビックリさせてすまなかったなぁ・・・。」


母親の背中にすっかり隠れてしまったなずなにも晃は目線近くまでかがんで謝っている。


「おじちゃん・・・怖くないの?」


「おじ!?・・・・おう!俺はいけすかねー野郎以外には怖くねーぞ!」


おっかなびっくりといった感じで母親の背中から現れたなずなちゃんは


晃のがたいの大きさに興味があったのだろうか?


「肩車・・・」


とボソッとつぶやいた。


母親に大丈夫ですか?と確認をとった時、


晃の風貌のせいで流石にギョッとしていたが、


母さんに大丈夫よと耳打ちされていた。



なずなちゃんを抱え上げて肩車すると


「うわー!高い!!すごい高いよ!!ママ!」


さっきまでの警戒心はどこかへ飛んで行ってしまったらしく


晃の頭をペチペチ叩きながらご満悦の様子で喜んでいる。


晃も根はやさしいので、そういう所を見抜ける子供や動物なんかには


すぐになつかれることが多いし、本人も実は子供好きである。




「では、私たちはそろそろ帰りますね。」


母さんとの雑談に一区切りついたなずなちゃんの母親はそう告げると立ち上がり


何か思いつめた表情でしっかりと俺に向かって頭を下げた。


「先ほども言ったんですが、


このたびは私の不注意からこんなことになって本当に申し訳ありませんでした。


隼人さんがいなければなずなを失っているところでした。


事故の後、なずなが無事で本当に安堵したんですが、


隼人さんが・・・。


そこからはもう気が動転してしまってダメでした・・・。


なずなが痛い想いをして奇跡的に助かっていても


さくらさんや皆さんが抱いている心労を本来ならば自分達が受けるはずなのに


人様の大事な息子さんをこんな目にあわせてしまって・・・。


その上でそんな私をさくらさんをはじめ皆さんは


逆に励ましていただいて・・・。」


なずなちゃんの母親は泣いていた。


「なんど伝えても足りません・・・。


本当にありがとうございました。」


そんな様子を見て母さんはやさしく抱きしめてあげている。


「これからは、なずなちゃんから目を離さないこと!」


次になずなちゃんに向き直ると


「なずなちゃんはお母さんから絶対に離れないこと!」



それだけ言うと満足したようでパンッ!っと大きく手を叩くと



「はい!湿っぽいの終わり!


隼人も目が覚めたし万事解決!


さっき言ってたバーベキュー私本気だからね!


今度会うときは私の友人としていらっしゃいね!」



こういうことをサラッとやってのける母さんが俺は好きだ。


恥ずかしくて本人にはとても言えないけど。




「バーベキューやるんすか!いいっすね!」


「あら?もちろん晃君も予定空けときなさいよ?来ないと怒るわよ?


なずなちゃん肩車してあげないと。」


「いきますいきます!家から肉もってきますから!


なんなら親父の秘蔵熟成肉くすねてきます!」


またひとしきり盛り上がってなずなちゃん達は帰っていった。


「お兄ちゃん、お姉ちゃん、アッキー!バイバイ」


と元気よく帰っていったので、なずなちゃんは今では晃が大のお気に入りのようだ。




「じゃあ俺もそろそろ帰るかな。」


ふと時計に目をやると面会時間を過ぎそうになっている。


「隼人はいつ退院するんだ?」


「先生が明日は念のために一日かけてもう一度検査するってさ。


それで特に異常が見られないようなら早ければ明後日には退院するよ。」


「そっか!んじゃ今週末には学園出てくんだな。」


そう告げると母さんとアスナにも挨拶をして帰っていった。




俺が目が覚めてから賑やかだった病室は


三人だけになり、急に本来の形である静けさを取り戻した。



「母さん仕事のことはよくわからないから生涯でこれっきりしか言わないね。」


静まり返った部屋で母さんがまっすぐと俺を見据え


「隼人、なずなちゃんをよく助けたね。


母さん、あなたがやったこと誇りに思うよ。」


自然とアスナも母さんの横に立っている。


「でもね、このことも覚えておきなさい。


あなたが眠っている間


アスナに私、剛久さん、お爺ちゃん、皆が心配したわ。


それに、たくさんの人がお見舞いに来てくれたのよ。


あなたはそれだけの人に想われているの。


だからね、あなたはそれだけ想ってくれている人を守るためにその力を使いなさい。」


源流の教えにも似たようなことはあるけどこれは母さんの考えなのだろう


「そしてね、その想ってくれている人すべてのために、


あなたがこれから進んでいく・・・


お爺ちゃんや剛久さんと同じ、


人を守るという仕事をするうえで


どんな状況になっても”自分も”生きるということをあきらめちゃダメよ。」


母さんが俺を想って伝えてくれたこの言葉はすんなりと俺の心の深い場所に浸透していく。



「お兄ちゃん。私からも・・・。


お兄ちゃんこれから仕事をするようになると、


きっと私が想像もできないような危ないこともいっぱいあるんだと思う。


でもね、私とお母さんは美味しいご飯を作って待ってるからちゃんと帰ってきてね。」


アスナは優しく微笑んでいる。


なぜだろう・・・いつも俺の後ろをついてきていると思っていたアスナから


今日は母さんと同じような・・・そんな包み込んでくれるような優しさを感じる。




俺がこれから進んでいく道は文字通りの




”命懸け”




様々なことから依頼者を守り抜くことが仕事だ。


命懸けで壁になってその場は守れてもその直後に依頼者に何かあっては意味がない。


依頼者のために生き抜くことはもちろんだが、


アスナや母さん、父さん、爺ちゃん、和輝、晃・・・


俺を想ってくれるみんなのために生き抜く。



その為にもなずなちゃんを助けるときに使った力、


あれをうまく引き出せるようにならなければ・・・。



隼人は覚悟をしっかりと胸に刻み込むのだった。

話はまだまだ続きますが、とりあえず一段落しました。


いかがでしょうか?ここまで読んでくださってる方々本当にありがとうございます。


ブックマーク登録してくださってる方がいてくれてすごくうれしいです。


もしよろしかったらご意見、ご感想をおきかせください。


雑談でもオッケーです!喜びます。


twitterもやってますんで、そちらでも構いません是非お気軽に話しかけてくださいね。

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