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桜花-OUKA-  作者: zinto
10/13

目覚め2

翌日から事故は多くのニュースで取り上げられた。


”勇敢な高校生!3歳の女の子を庇い自らが犠牲に・・・”


各MCやコメンテーターが隼人の行動を褒め称える一方、


ニュースは主にテロップや3Dホログラミングによる物ばかりで、


実際の事故現場や、トラックの写真などは一切報道されなかった。


恐らくは国から報道規制が入っているのだろう。



事故のことは学園の生徒にも説明がされ、


男女問わず沢山の生徒が隼人の回復を願ってお見舞いに詰め寄ってくれた。


アスナは隼人の人気にかなり面食らってしまったようで、


特に女子からの人気には危機感を抱いた。



「え?お兄ちゃんってあんなに人気あったの・・・?


・・・。女の子に間違われるような外見だし、


カズ君がモテるのはわかるんだけど・・・え~・・・・」



アスナの中で隼人に認識はかなり変化したようである。


和輝も毎日顔を出してはその日学園であったことなんかを話したり、


睡眠学習ができるかもしれないと、


約二時間隼人の耳元で数式をつぶやいた日もあった。


心なしか隼人の表情がいつもと違った気がするが気のせいだろう。


そして昏睡状態から丁度1週間が過ぎた今日、


アスナが学園から病室に向かうと、隼人がひょっこり起きていたのだ。




「・・・といった感じだよ。」


アスナが一通り話してくれたおかげでやっと抜け落ちていた記憶が戻った気がする。


「そっか・・・。俺みんなに心配かけちゃったな・・・。


あ・・・!女の子!女の子は無事なの!?怪我とかしてない!!?」



最後に投げ飛ばしてしまったのだ・・・打ち所が悪くてみたいなことになっていないだろうか?



「うん。女の子元気だよ。隼人が入院してから毎日のようにご両親とお見舞いに来てくれてるよ。


たぶん今日も来てくれるんじゃないかな?」


よかった・・・。


正直今俺が出せる全ての力を使ったつもりだ。


それなのに最後の詰めが甘くて女の子が大怪我なんてしてたら俺は俺を許すことができそうにない。


そういえばあの時、今までにない感覚があった・・・。


身体の奥底から湧き上がってくるようなあの感覚・・・。


俺の源流体術はまだ免許皆伝とまではなっていないことからしても、


不完全で伸びしろはあると思う。


でも、あの感覚はそういったこととは別な気がする。


俺の中にある・・・一族の力はまだ使い切れていないのか?



そんなことを考えていた時、


「アスナ~。なずなちゃん達今日も来てくれたわよ。」


そんな声とともに母さんと、小さい女の子そして母さんと同い年くらいの男女が入ってきた。


女の子と女性には見覚えがある。


「あ~~~!!お兄ちゃん!!」


女の子はパタパタとかけよってきて


「今日は眠くないの?」


不思議そうな顔でそんな風に話しかけてくれた。


「ああ!隼人・・・あんた・・・。」


母さんはさっきまでの様子とはガラッとかわってゆっくりと近づいてくると


フワッそんな感じで抱きしめられる。


「よかった・・・本当に・・・」


何時もの明るい母さんと違って、今は二回りほど小さく感じる。


相当な心配をかけてしまったな・・・。


しっかりとその小さい身体を抱きしめ返し


「・・・ごめんよ。」


小さな声で呟いた。





俺が助けた女の子はなずなちゃんと言うらしい。


両親と一緒にやってきては


「今日もお兄ちゃんねんねしてるね~、眠んだね・・・。」


俺の頭をなでながら子供ながらに心配してくれていたようだ。


両親にはこちらが申し訳なくなるくらい謝られた。


気にしなくて大丈夫と言っても


そういうわけには!


といった感じの押し問答を繰り返して、


最終的には俺の意識が戻った連絡を受けて駆け付けてくれた


爺ちゃんと父さんが無難な落としどころを見つけてくれたようだ。


こういった場合、気にしなくていいと本当に思っても


無下に断ると突き放したようになってしまうので、


相手側の気持ちも考えて、何かしらの落としどころを見つけてあげることも


大事なんだぞと後で父さんが教えてくれた。


俺とアスナがなずなちゃんと遊んでいると


「やっぱりお姉ちゃんの目青くて綺麗だね~!


でも今日のお兄ちゃんのおめめ蒼くないね!


お兄ちゃんのおめめ蒼いの綺麗だったからまた見たい!!」


あの一瞬に目が合っていた気がしたけどやっぱり見えてたんだ・・・子供ってすごいな


「ほんとね!お姉ちゃんのおめめ青くてきれいだね~!


でもお兄ちゃんのおめめは綺麗な黒色だよ?」


なずなの母親は首をかしげていた。


「あの子ったら、あの事故の後からずっとお兄ちゃんの目が蒼かった、綺麗だったって・・・。


すみません・・・。」


申し訳なさそうに謝る母親に


「いえいえ~。なずなちゃん何かと間違えちゃったかな?」


母さんがアハハと笑う。


隼人達は皆目の色が変わると同時にもともと高い身体能力が更に飛躍的に向上する。


そしてこのことは世間一般には知られていないため、


とぼけるしかないのだ。


ちなみに、源流体術に出稽古のために訪れる人たちも、


隼人達の基本的な部分の身体能力を見て驚いているということになる。



出会いこそ悲劇からではあったが、


隼人の意識が戻ったため話も盛り上がり、


今ではすっかり打ち解けていた。


爺ちゃんと父さん、そしてなずなちゃんの父親は


コーヒーが飲みたいと三人で下にいる喫茶店に向かった。




「なずなちゃん!今度家に皆であそびにいらっしゃい!


うちの庭広いからバーベキューしましょう。」


母さんはなずなちゃんがお気に入りのようだ。


「うん!」


なずなちゃんが満面の笑みで答えたその時、




「ちょっとなんですか!!?あなたは!


ここは病院ですよ!!?」




なにやら廊下が騒がしい。



「ぅるせーーーーー!!それどころじゃねーんだよ!!」



病院内に声が響き渡る。



この声は・・・。




「ここか~!」



バンッ!!!!!



力いっぱい開かれたドアがけたたましい音を立てる。



「隼人!!!!死ぬんじゃね~~~~~!!!!」


鼓膜が破れそうな大声とともに大男が現れた。



「うわーーーん!!ゴリラーー!!!!」



突然の訪問者に驚いたなずなちゃんは力いっぱい泣き出すのだった・・・。

隼人の病室にゴリラが!!??

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