013
翌朝。
下駄箱を開けると、白い封筒が入っていた。
………ラブレター?
朝のさざめきのような騒々しさの中で私は首をかしげる。この組み合わせ………少女マンガだったらそれで間違いないんだけれども。何はともあれ、中に入っていた便箋を開いた。用件めいたことは一切書いていない。それどころか、送り主すら書かれていなかった。
『三時に屋上ね』
丸っこい字。女子だろう。………女子からラブレターは来ない。
溜め息をついた。私だって馬鹿じゃない。“ラブレター”の送り主に想像がつかないわけがなかった。
実は、昨日、神谷先輩と連絡を取って(なぜか先輩も私のメアドをすでに持っていた)、「三時にあの木の下で」と約束をしていたのだ。……正直、迷った。
三時。
先約が入っているのに、こちらを優先させる義理はない。そんなことわかっていた。そうは思いつつも私は―――――先輩にメールを送った。
『件名:山本です
本文:おはようございます。すみません、用事ができちゃって、三時にあの木の下、行けそうもないです。本当にごめんなさい』
一分後。
『件名:Re.山本です
本文:(T□T)』
即レスだった。
どう返そうか思いあぐねていると、手の中で携帯が震えた。
『着信:神谷先輩』
表示を見て、あわてて電話に出る。
「あ、神谷せんぱ―――」
『おっはよぉー! 佳奈グモーニング!』
「あ……お、おはようございます、先輩」
『用事ってどうしたー? あ、いや、言いたくないんだったら全然』
「野暮用です」
『あ、言いたくないのね………』
電話の向こう側で、神谷先輩のうー、ともんー、ともつかない唸り声が聞こえた。
『じゃあ、さ、場所っ! 場所だけ、教えて? どこ行くかだけ、教えて』
「え…………」
ど、どうして?
………嘘はつきたくない。それが本音だ。
「………屋上です」
『そっか』
「どうしてですか? ………クラスの子に呼びだされただけですよ?」
『ん、違う。ただね、気になっただけ』
結局言ってしまった。何でこんなこと聞くんですか? 聞きたかった事は聞けないまま、私は電話を切った。




