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3,推理してみた

昼休みは図書室タイム。

もはや日課になっている。行けなかった日は調子が悪い気さえする。

さて、今日は何を借りようか。



 ☆ ☆ ☆



私が卒業した小学校は小さかったので、食堂で全校で集まって給食を食べてた。

みんなで「いただきます」「ご馳走さまでした」の挨拶してさ。

全校で100人いなかったしな!

で、全校生徒がいるもんだから、給食終わりの頃になると各委員会からのお知らせを6年生の委員長さんたちが発表する。


「図書委員会です。

 今月、たくさん本を読んだ人を発表します。

 1年生 ちだ まことくん

 2年生 すずき ……」


1年生だから図書カードの名前も平仮名で、そのせいか男の子と間違われたらしい。紛らわしいよね、まことって。『誠』とか『真』なら男っぽいけど、『真琴』なら女の子っぽいし、男でも女でもいける名前だと思う。思い出すと今でも苦い気持ちになる出来事だった。

まぁ、ガサツで男っぽい自分だから仕方ないといえば仕方ないのかもしれない。

そういえば、楓も同じように名前だけ見て女の子に間違われたことがあったっけ。楓も女の子にありそうな名前だもんな。



 ☆ ☆ ☆



いつものように図書室で本を選んでいると、男子たちの塊が見えた。

普通ならあのメンバーに混ざっているはずの楓はいない。

昼休みにあの女子たちと一緒に過ごさなくなってから図書室通いが復活してたのに珍しいな。まぁ、いつでも奴等と一緒ってわけでもないんだろうけど……と思っていると、何やら思いつめた感じの楓が図書室に入ってきた。

男子たちを無視して、誰かを探している様子。

私を見つけた途端、私の方へ勢いよく歩いてくる。

なんなんだ。

楓は私の前まで来ると、意を決したように口を開いた。

「あのさ……。文化祭の展示係、代わってくれ」

「は?」

もう準備が始まっちゃってるのに? 途中交代???

「代わるって、今さら??? あんた、何の係だっけ?」

「……巨大版画の彫り手」

巨大版画というのは、学年全体で各部分を分担してつくり上げる壁画のような版画のことである。学年でテーマが決まっていて、各クラスでテーマに沿った版画をデザインして、連作みたいな感じにするのだ。

その彫り手が文化祭の係の中で一番人数が多いのだが、楓はその中の一人だったらしい。

原画を考える係とかじゃないなら、私でもなんとかなりそうだけど。

「いいけど、でも、なんで……?」

「マンガ、読ませてやっただろ」

はぁ? 今更、そういうことを恩着せがましく言うか? いや、読ませていただいたのは私だけどさ。

これは理由は聞かずに代われってことだろうか。

「代わってもいいけど、他の子たちになんて説明するのさ」

「お前の方が美術の成績が良いだろ。だから版画の彫り手を代わってもらったって言えば……」

版画の彫り手は多いから、有耶無耶でなんとかなるとして。私以外の展示係は青山さんと間山さんと渡辺くんだ。

あれ? なんか引っかかった。

間山さんって、この前まで楓と昼休みによく話してなかったっけ? 私の席を占領して。

んで、渡辺くんって間山さんと同じ小学校出身だから、係の仕事のときよく話してたし。

……ふ・ふーん。

「もしかして、間山さん?」

「おまッ! ……誰にも言うなよ」

バッと顔を赤らめた楓が口止めしてきた。

ダメだよ楓、そういう時は「何のことだ」ってとぼけるとかしないとバレバレじゃーん。

けど、あぁ、そうか。

楓に気があったのが佐藤美里さんで、佐藤さんと仲が良い間山さんがくっついてって話しているうちに楓は間山さんに片思い……と。

で、佐藤さんが告白してきて楓はゴメンナサイ、一方で間山さんはそういう素振りがなかったから楓的には振られたって感じだったんだ。その上、文化祭の係では渡辺くんが間山さんと仲良くしてるし、楓的には諦めきれなくて……って感じか?

すべてナゾが解けてスッキリだよ。我ながら名探偵っぽいんじゃね? 推理小説読み耽ってるだけあるかもしんないね。

しかし楓がねぇ。へぇ~、ほー。

「進展するといいねぇ~」

思わず生温かい目になる。

「ホントに誰にも言うなよ!」

うん。でもね、なんか男子の塊がこっち見てるんだよね。ふふふふふ。

楓ってば顔を赤らめてるし、誤解されても仕方ない感じだよねぇ。残念なことに私はそんな雰囲気は無いニヤケ顔だけどな!

ちょっと前に私が楓ん家に行ったりして、いつの間にやら噂にもなったらしいけどな! 誤解だけど。


案の定、話が終わった楓に男子がわちゃわちゃ寄ってって、なんかからかってる。

知~らないっと。

今日借りる本はファンタジーものにしとこうっかな。短時間で頭使ったから、推理モノはやめとこうと思った。


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