2,恋は変
別視点になります。
私の友人の美里が恋をした。
相手は男子の中でも穏やかな感じの楓くん。
美里は私と小学校から一緒で仲が良かったんだけど、小学校の頃は男子からよくからかわれていた。
フワフワした感じの脳内お花畑な美里はからかいやすかったんだと思う。あんまりしつこくからかう奴らは私が撃退していた。
そんなこんなで美里は男子が苦手になった。
でも楓くんは男子の中でも穏やかで、中学校になってからも美里をからかう連中とは違って、なんというか紳士までいかないけど美里に普通に接してくれた。
同じ班になったとき、苦手意識を感じないってだけで、美里は楓くんにポーッとしてしまったらしい。
それ以来、楓くんとお話はしたいけど一人では無理! って言いはる美里につきあって、私まで楓くんとお昼休みを過ごすようになってしまった。
ハッキリ言って美里は緊張しまくってるし、楓くんは穏やかっていうか口数が少ないから、私が場をもたせるしかなくてしんどかった。それなのに美里は「もっと楓くんの好きなものとか知りたい」とか言ってくるし。それなら自分でも喋りなさいよねって言えば、がんばるってその時は言うんだけど、いつも代わり映えしないんだよね。
しかも楓くんの隣の席を占領してるから、その席に座ってる真琴ちゃんに申し訳ない気持ちもあって……。あとで真琴ちゃんに「昼休み、席を占領してごめん」と言えば「昼休みは大概図書室に行ってるから大丈夫」と気にしないでいいと笑顔で言われた。
ほんとにごめんよ、真琴ちゃん。
☆ ☆ ☆
中体連の地区予選を目前にして、美里が楓くんに差し入れを持って行きたいと言い出した。
家庭科部所属の美里は、地区大会の日にはどこかの運動部の応援に行くことが決まっていて、それはうちの中学校近くの会場の部であればどこでも自由ということだった。
楓くんは卓球部で、うちの中学校の体育館が会場らしい。
「だからね、彼女になりたいの」
彼女じゃないと「なんで差し入れ……?」ってことになりそうで、イヤなんだそうだ。それに、私は美里と違って運動部だったし、当日は美里と一緒にいられない。彼女にでもならないと、なかなか差し入れなんてしづらいだろう。
じゃあ告白するしかないね、となって、美里が告白したのだけど、
「ごめん、他に好きな人いるから」
と楓くん。
見事に当たって砕けてしまったのだった。
「他にって、真琴ちゃん?」
泣いている美里に代わって聞けば
「いや、アイツは関係ないし」
という。
他に楓くんと仲良さそうな女子、知らないんだけど……。
同じ小学校出身だけあって、よく喋ってるの見かけるし。2人でアニメとかマンガの話で盛り上がってるよね???
真琴ちゃんじゃなきゃ誰だって言うのさ。
聞いたけど楓くんは顔をしかめて答えてくれなかった。
☆ ☆ ☆
それからだいぶ経って、文化祭の準備に追われる頃。
真琴ちゃんと同じ展示係になった私は、なんとなく楓くんの話をした。
地区大会のあと、真琴ちゃんと楓くんが付き合ってるって噂があったから。今はそんなことないみたいだけど、真相は気になるじゃない?
「あー、なんか楓が振られたとかなんか言ってて、寂しかったんだか分かんないけど、マンガ本をダシにして家に何回かよばれたんだよね」
は? 振ったんじゃなくて、振られた??? どういうこと!?
明らかにあのとき、楓くんがゴメンナサイしたんでしょうが!
「んー、私も分かんないけど、楓がそう言ってただけだから。面倒だったから深くツッコまなかったし。『ガラかめ』読み終わったから、家に行かなくなったし」
結局のところ、真琴ちゃんと楓くんは、何回か楓くん家で一緒にマンガを読んだだけで、つきあうも何もなかったらしい。
ナゾだ。
楓くんって変。いや、真琴ちゃんも充分変だけどね……。