0,プロローグ
小さい頃から暇があれば、何かを読んでいた気がする。
なんとなく字が読めたのは保育園に通っていた頃。
最初に読んだのは、ちょうちょの一生を描いた絵本だったと思う。
先生が読んでいたのを覚えてしまって、それを字と照らしあわせたのかもしれない。
この字が「あ」で、こっちの字が「は」で……と、ある日突然、なんだか読めてしまったのだ。
小学校に上がる頃には、新聞の簡単な見出しくらいなら漢字が入っててもなんとなく読めた。
テレビから聞こえる言葉の言い回しとか大人の話とか聞いていれば、ここはこんな言葉なんだろう……と予想がついたから。
運動は得意ではなくて、普通だったと思う。
けど、小学校の同級生の中では足が遅い方だった。(中学校に上がったら、それでも真ん中くらいだった。)
昔から背が高かったせいか、よく
「何か運動してるの?」
と聞かれた。そんなに運動が得意そうに見えるんだろうか……。鬼ごっこすれば、みんなからおいて行かれてしまう方なのに。
そんな相手に申し訳なく思いながら「何も……」と応えることは恥ずかしいやら何やらで、大きな体を縮こませるしかなくて。
そんなだったから、外で遊ぶより家の中で本を読んでいることの方が多かった。
時間はたくさんあったから、子ども向けの科学雑誌や新聞、何でも読んだ。
父がどこからかグリム童話の古い本をもらってきたことがあって、既にボロボロだった本をさらにボロボロになるまで読んだ。
とにかく何かを読むのが好きだった。
唯一、好きだったスポーツはバドミントン。
遊びでやっただけだけど、足の遅い私でもできるスポーツだったから。
だから、中学校に入って部活を見学して歩いたとき、私がバドミントン部を選ぶのは当然の成り行きだったように思う。
昼休みは図書室で過ごし、放課後は部活で汗を流す。
そんな中学校生活が始まった。