九:勉強開始!
再投稿です!章の関係で…
「「未来の勉強を教えてください‼︎」」
と、固い決意のみなぎった目で二人に見つめられた華凛と永夜は、一旦平成に帰ってきていた。ここは華凛の家である。
「とりあえず、私が小学生のころの教科書を持っていくね。算数と…何にしよっか」
彼女の家には何年か前の(現在、華凛と永夜は13歳である)教科書が残っていたので、山吹や儺光に勉強を教えるためにそれらを取りに来たのだ。
「あ、そういえばさぁ」
自分の棚から二冊の教科書を取ろうと背伸びをしながら、華凛が永夜に言った。
「儺光って、なかなかかっこいいと思わない?」
その拍子に手が滑り、バサッと音を立てて算数の教科書が落ちる。
「ん?…ああ、そうだな」
永夜は落ちたそれを拾ってやりながら、上の空な返事を返した。そんな彼を見て、華凛が微笑する。その妖艶な美しさは、永夜が幼馴染として知っている華凛とはなんとなく違う。
「勿論、永夜も負けてないよ?」
「…バカ」
突然顔を覗き込まれて、永夜は赤くなった。華凛はいつも、こうやって自分をからかってくる。お互いそんな感情は持っていないというのに。
「あははっ。冗談冗談。やっぱ永夜ってツンデレだよねっ」
「…」
黙りこくった永夜を見ると、さっきまでけらけら笑っていた華凛が慌て始めた。
「ごめんね、怒らせるつもりはなかったんだよ?」
今度は永夜が笑い出す。
「怒ったと思って焦った?別にそんなことないんだけど…」
「そっか、良かったぁ!まあ、いつものことだもんね」
とまあ、皆さんが期待しているような色恋沙汰には発展しないわけで。そもそも人間というのは、男女が小さい頃からずっと一緒にいると恋に落ちにくい傾向がある。これは不思議な力のある二人も例外ではなく、華凛と永夜もお互いを異性として認識していなかった。ほとんど双子のようなものだ。
ただ両親よりも、友達よりも、何者よりも、自分を理解してくれる存在ーーー
そうとしか感じていなかった。
「ただいまー!」
華凛が元気よく帰ってきたのを、山吹と儺光の耳が捉える。二人はちゃんとした勉強が出来るように、大きめの机を用意させてスタンバイしていた。
「おかえりなさい、華凛、永夜」
「それではよろしくお願いしますね」
まだまだ薄っぺらな、小学校一年生の教科書を鞄から出した華凛は、それを振って答えを返す。
「じゃあ、二人は私と永夜のどっちに教えてもらいたい?」
すると驚いたことに、儺光が即答した。
「私は華凛さんに」
「ふぇっ⁉︎」
聞いてはみたものの、結局は男女別に勉強するのかと思っていた華凛が三冊ほどのノートを取り落とした。そのままぽかんとしていると、永夜が貼り付けたような笑みで言った。
「じゃあ、俺は山吹に教えるよ」
「えっ、あの…」
しどろもどろしているうちに永夜と山吹は席に着いて、授業を始めてしまった。
「では、こちらも始めましょうか」
いつも通りの綺麗な顔で、儺光が華凛の腕を引いた。
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