フォーリンエンジェル(1)
第2話です。
第2話 フォーリンエンジェル(1)
1.謎の美少女!?
「う・・・うん?」
俺は目を覚ました。
「あ・・・気がつきましたか?」
女の子の声だ。誰だ・・・?そうだ・・・そういえばさっき部屋に変な女の子が侵入してて・・・。
俺はそこまで思い出して、がばっと体を起こした。
どうやら俺は自室のど真ん中で気を失っていたらしい。
心なしか体が重い。なんだか全力疾走した後みたいに疲れている。俺に一体何があったんだ!?
俺の近くで、さっきの女の子が俺を心配そうに見つめていた。
本当にこれは現実らしい。
「・・・えっと、いきなり本当に申し訳ありません・・・その・・・えっと・・・」
女の子は何やらおろおろしていたが、いきなりがっくりとひざまずいておいおいと泣き始めた。
何だ!?訳が分からん!!だが、何か事情があるようだ。
しかし、どう見ても日本人でないのに、なんでこいつはこんなに流暢に日本語をしゃべってんだ?
「あ、いやいや大丈夫だよ。その・・・体を起こして・・・。ほら泣かないで・・・。」
とりあえず俺は女の子の傍にしゃがんで、なだめることにした。
すると、女の子は今度は俺にいきなり抱きつき、俺の胸に顔を埋めて泣き続けた。やわらかいものが体に触れるが、とりあえず今は邪なことを考えるのはよそう。
しかし今夜はなんだ?キスされたりハグされたり忙しいなぁ。でも素直に喜べないのが残念だ。
目の前で悲しんでいる人がいるというのに、俺はどうすることもできなかった。そんな無力感を感じたまま、とりあえず女の子の背中をさすった。
やがて女の子は気持ちが落ち着いたらしい。俺は女の子に部屋にあったペットボトルのお茶を飲ませた。
「す・・・すみません。本当に・・・。」
女の子は申し訳なさそうに俺を上目づかいで見つめた。か・・・可愛い・・・!!顔は汚れまみれだったが、可愛さがにじみ出ているような、そんな感じだった。
いや、今はそんなことを考えている場合じゃないよな。・・・というか俺の部屋で何が起こったんだ!?これは明らかに超常現象だよな!?誰か説明してくれい!!
「・・・大丈夫だよ。落ち着いた?・・・俺の名前は星、南雲星。君の名前は?」
とりあえず自己紹介からだ。まずはそこからだ。
「私はリリーネ・・・リリーネ==リヒート=ホアン=ヴォン=ティ=エフェソです。」
な、名前長っ!!舌を噛みそうだ。こいつはいったい何人だ?ハーフのようにも見えるが・・・?
「ええっと・・・何て呼んだらいいかな?」
「リリーネと呼んでください。ええっと・・・あなたは?」
「あ、ああ・・・星でいいよ。」
「せ・・・い・・・?」
「そうだよ。せい(星)。星って意味だよ。」
俺は意を決してリリーネに質問をすることにした。
「じゃ、じゃあリリーネ。一体何があったんだ?」
「あ・・・はい・・・少し待ってくれませんか?」
リリーネは苦しそうにゆっくりと動いて、下げているカバンを開こうとしていた。
俺はまたも後悔した。こんな疲労と空腹でボロボロの女の子を何も尋問することなんてなかった・・・。何て俺は気が利かないんだ・・・。
俺の部屋で起こったこの超常現象には何かとてもとても深い事情があるのだろうし、リリーネもこの超常現象の被害者であるに違いない。
とりあえず体を綺麗にしてもらって、何か食べてもらって・・・事情を聴くのはそれからでも遅くはないだろう。
「あ、ちょっと待ってて。」
俺はリリーネにそう声をかけて、風呂場に向かうと、風呂に火を入れた。24時間風呂って最高だな。いつでも入りたいときに入れるんだから。便利すぎる。
俺は風呂に火を入れると、今はもういない姉貴の部屋に向かった。
姉貴の部屋には生前姉貴の使っていた道具や衣服の一部が残されていた。確か生前姉貴のお気に入りだった赤いパジャマがあったはずだ。
俺は衣装ダンスを開けると、赤いパジャマはすぐに見つかった。俺はその赤いパジャマ一式とタオルを持って自分の部屋に戻った。
リリーネは座ったまま、不安げに俺の部屋の中を見回していた。やっぱり・・・今の状況が正確に呑み込めていないのは俺もリリーネも同じらしい。
「ええっと、リリーネ。何があったのか知らないけどさ、とりあえず風呂に入ってきなよ・・・。これは着替え。」
俺はリリーネに声をかけた。
「・・・あ、ありがとうございます。よろしいのですか?」
「何が起こったのかわからないのは俺もリリーネも同じだろ?だから・・・その・・・まずは落ち着こうよ。」
「あ・・・ありがとうございます・・・。」
リリーネはか細い声でそういって立ち上がろうとしたが、どうやら疲労で上手く立ち上がれないらしい。
「あ、大丈夫?ほらつかまって・・・。」
俺はリリーネに肩を貸した。
「・・・ありがとう・・・。」
「いいから。あ、足元に気を付けて。」
俺はリリーネに肩を貸して風呂場まで連れて行った。
「えっと・・・じゃ・・・じゃあ俺は外で待っているから・・・。」
俺は主にアニメやマンガでこういう展開になった時によくありがちな余計なトラブルを避けるために外に出ようとした。
実際、以前この手のトラブルがあって姉貴にぶたれて、俺は夜通し土下座して謝った思い出がある。
しかし今日は姉貴の事をよく思い出すなぁ。どうしたんだろうか?
「あの・・・待ってください。これ・・・どうやって使えばいいんですか?」
リリーネがシャワーを指さして聞いてきた。ああ・・・そうだった・・・この娘はこの世界の人間じゃないんだった・・・。
俺はリリーネにシャワーやカランなどの風呂の備品の使い方を一通り教えると、すぐさまリビングルームに退避した。
さて、次は何をすべきか?
ああそうだ。とりあえず次はリリーネに何か食べさせなきゃ。あの顔は多分しばらく何も食べてないって顔だろう。
台所の食糧庫を探ってみると、カップの博多ラーメンが見つかった。深夜だしまあいいかこれで。
数分後、リリーネが姉貴の赤いパジャマに身を包んでリビングに現れた。
俺の心臓がドキッとなった。だって・・・だって・・・そこに立っていたのはまるでおとぎ話の世界から飛び出してきたお姫様のような「超」のつく美少女だったんだから。
汚れまみれでボロボロでも可愛いと思ったのに・・・。風呂に入ってくると・・・そこに立っていたのは天使だった。
俺は少し見とれてしまった。だけど俺は照れもあったし、いきなり訳の分からないことに巻き込まれて不安でいっぱいであろうリリーネの事も考え、つとめて平静を装った。
「どうだった?お風呂は?あ、寝間着、ぴったりだね。」
湧き上がる照れと気恥ずかしさを紛らわすべく俺はリリーネに聞いてみた。
「生き返った気分です。ありがとう。これは誰のパジャマなの?」
「ああ・・・姉さんの。もういないけど・・・。」
「この家にはあなたしかいないの?」
「う・・うん。父さんと母さんと姉さんがいたけど、事故で死んじゃったんだ。」
「そうだったの・・・。」
リリーネの顔が曇る。
「リリーネの家族は?」
「私の家族も・・・もう皆いないの・・・。」
「そうだったんだ・・・。」
俺達はお互い孤児だった。少し気まずい雰囲気が流れる。
そういえばリリーネは怪我をしていたんだった。まったく俺は要領が悪いなぁ。
「あ、ええっと、そういえば怪我してたよね・・・。」
「あ・・・はい・・・。」
俺は救急箱を出すと、ヨードチンキを取り出した。
「少ししみるけど、我慢してね。」
「うん。」
俺はヨードチンキをリリーネの顔や手足に出来た傷に塗っていった。どれも深い傷ではなかったが、数が多かった。何かよほど酷い目にでもあったのだろうか?
リリーネの長いアッシュブロンドの髪からはいい匂いがした。って・・・こんな時に何を考えているんだ俺は!?
時々リリーネは痛そうに顔をしかめた。ヨードチンキはしみるんだよなぁこれは。だけどこればっかりはガマンしてもらうほかないもんな。
「よしできた。・・・痛いの痛いの飛んで行け~。」
リリーネは俺のこの古風なおまじないにくすりと笑ってくれた。初めて笑顔を見せてくれた。とても可愛い。正直言ってすごく嬉しかった。
「ええっと、それじゃあ・・・?お腹すいてるだろ?」
「なんておいしいのコレ!!こんなおいしいもの初めて食べた!!」
リリーネは夢中でラーメンをがっついていたが、心から驚いたように言った。そういえばリリーネ、箸使うのも上手いなぁ。
「ラーメンって料理だよ。元気が出ると思う。」
幸せそうに夢中でラーメンにがっつくリリーネを見ていると、なんか俺も自然と嬉しくなってきた。
「本当においしい・・・。」
リリーネはラーメンをがっつき、がっついては水を飲み、またがっついた。
本当にいい食べっぷりだなぁ・・・。
「ええっと星・・・その・・・本当にありがとう・・・。」
食べ終わるとリリーネは少し恥ずかしそうにお礼を言った。
「大丈夫だよ。・・・っその・・・出来る範囲で話してくれないかな?・・・何があったのかな?」
ここで俺は再び話を切り出した。
「・・・見ていただいた方が早いと思うので・・・。」
俺が聞くと、リリーネは自分のカバンをごそごそと探り始めた。
リリーネはこぶし大の丸い水晶を取り出した。
「な・・・何それ・・・?」
「記録用魔法水晶です。」
ま・・・魔法!?間違いなかった。やっぱり本当にこいつは人外、異世界の人間だった!!
リリーネが水晶を手のひらに乗せると水晶は数センチほど浮き上がり、壁に映像を投影した。
2.魔法の世界から俺の自室に落ちてきた姫君
ここまでのリリーネの話を俺なりにまとめてみた。
リリーネは「九王国」が分立している「イラー大陸」なる大陸から来たらしい。イラー大陸の人々は「魔法」を使って高度な文明を創り上げたそうだ。
イラー大陸では少数派の魔法使いが、圧倒的多数の魔法使いではない人々を支配していたらしい。
驚いたことにリリーネは9の王国の一つ、「ペーガクス王国」の第4皇女だそうだ。つまりはお姫様ってことか!
だがリリーネは幼少期から隣国「ペクリョン王国」の人質になっていたらしい。
そんなイラー大陸に突如「空の民」とか言う連中が「空飛ぶ島」で海の向こうから大挙して攻め寄せて来たらしい。
大陸中が大混乱になり、戦火を逃れて山に逃げたリリーネは疲労と空腹で山中で倒れ、気が付くと俺の部屋に居たそうだ。
・・・さて、なんだか出来損ないのライトノベルの荒唐無稽な設定のようだが、実際に「記録魔法水晶」なるものを見せられては信じざるを得ない。
しかし俺は驚くよりも前に、リリーネに心から同情した。リリーネの境遇は、俺と同い年なのにあまりに過酷だ。
「・・・よくわかった。最後に質問。さっきの・・・その・・・その・・・キス・・・は何だったんだ?」
俺は聞いてみた。心なしか顔がほてっていた。
リリーネは若干顔を赤らめながら答えた。
「あれは・・・『共有の絆』という魔法です。非常事態に使う魔法契約の一つで相手を信じてゆだねることで、互いの知識や能力、体力の一部が共有されます。今私が星と話せるのはそのためです。星にもなにか私の能力が受け継がれているはずです。」
へぇ・・・なんだかすごい魔法だな・・・。だからリリーネが日本語をしゃべれたり、箸が使えたりするんだな。で、俺がなんだか疲れてる訳なのか。
また他にも俺に何か能力が受け継がれているって訳か・・・。
なんだか難しい話になってきたな・・・。そう・・・俺はリリーネと疲労を共有しているから疲れたんだよ。リリーネだってもちろん疲れてるだろうし。
「・・・そうか・・・そうだったのか・・・ええっと、続きは後にしないか?疲れてるだろ?」
と、ここであくびが出た。
「はい・・・。でも、いいんですか?」
「俺もリリーネから疲れをもらって疲れたしさ。もう夜も遅いし。ぐずぐずしてると日が昇るよ。」
もう4時近いぞ。早く寝ないと。
「そうですね・・・。次は星の住んでるこの世界についても教えてくださいね。約束ですよ?」
リリーネも眠たそうだ。
「ああ、約束だ。じゃあ、こっち来て。」
俺はあくびを噛み殺しながらリリーネを案内した。
俺は自分のベッドまで戻った。実は俺のベッドは2段ベッドだ。俺は下段を使用している。
かつて姉貴が上段を使っていた。狭い団地だ。子供部屋は一つの部屋を改装して壁で3つに区切っていた。
2つは俺と姉貴のそれぞれの自室だ。だが、それぞれの自室は物置サイズで勉強机と棚をやっと置けるほどの大きさなのでとてもじゃないがベッドなんか置けない。
そんなわけで2段ベッドと本棚をそれぞれの部屋の外に置いていた。だから、廊下にある子供部屋のドアを開けると、まずそれぞれの部屋の入口の2つのドアが見えて、
本棚と2段ベッドがある部屋に出るわけだ。
閑話休題、夏休み中に友人が泊まりに来ることがあるし、俺もたまに気分転換で上段ベッドで寝ることもあるので上段ベッドは整っていた。
「上のベッドを使って・・・。」
眠い・・・。もうだめだ。瞼が重い。
「うん。ありがとう。」
リリーネも物凄く眠たそうだ。
「おやすみなさい。」
「おやすみなさい。」
俺は寝る前に一言だけ聞いておこうと思った。
「リリーネ?」
「なあに?」
「さっきの魔法だっけ・・・その・・・相手を信じてゆだねる、って言ってたけど、その相手が本当に俺でよかったのか?」
いくら非常事態だったとはいえ、見ず知らずの相手にそんな魔法は普通はかけられないだろう。その相手がどんな人間なのかもわからないのだし。
「・・・うん・・・星の目を見てわかったの。目が澄んでて綺麗だったし、優しそうだったし、信頼できそうだったから。そしたら本当だった。ありがとう星。」
リリーネは少し恥ずかしそうに答えた。
「そうか・・・ありがとう・・・おやすみ。」
嬉しかった。そんなことを言ってもらったの初めてだ。だが、それ以上は眠たくて言葉が出てこなかったし、何も考えたくないほど眠たかった。
「うん。おやすみ。」
俺は目をつぶった。
そのあとすぐに俺は体をゆすられて重たい瞼を開けた。リリーネが俺の傍に枕を手にして立っていた。
「どうしたの?」
「その・・・一緒に寝てもいいですか?その・・・私・・・不安で・・・怖くて・・・」
リリーネは顔を真っ赤にして言った。
な、何だと!?そ、添い寝!?・・・まぁ確かにいきなり異世界に飛ばされて不安で怖いってのはわかるが・・・。
嬉しいけど、喜んじゃいけないよな。リリーネは異世界から俺のようなヤツの家にいきなり飛ばされたんだから・・・。
「そうなの・・・?えっと、リリーネさえよければ・・・その・・・リリーネさえ嫌じゃなかったら・・・いいよ。どうぞ。」
俺はそう言って場所を開けると、リリーネが狭い下段ベッドに入ってきた。リリーネは俺よりも頭一つ小さい。俺の体にすっぽりと収まってしまいそうだ。
「い、嫌じゃないです。是非お願いしますっ!・・・そ、その、あ、ありがとう・・・星・・・その・・・その・・・手、握っててもいいですか?」
リリーネも恥ずかしいのか消え入りそうな声で言った。
「俺の手でよければ。」
俺は右腕を出した。リリーネは俺の手をぎゅっと抱きかかえるようにして眠り始めた。スタイル抜群のリリーネの感触が俺の腕にダイレクトに伝わる。
ダメだ南雲星!!だから邪なことは考えるな!!
リリーネの寝顔はそれはそれは幸せそうな、安心しきった表情だった。今まできっと心が休まらなかったんだろうな。
少しでも心の平安を取り戻してくれたんだったら嬉しい。
その寝顔を見てると、リリーネを守ってあげたい。守ってあげなければいけないという思いが湧きあがってきた。
まぁ・・・これからどうするか色々考えなきゃいけないけど、それは明日にしよう。そうだ明日だ明日。もうダメだ眠い・・・おやすみ・・・
と、ここで俺は後頭部に違和感を覚えて少し体を起こした。
しまった!ステラを頭で潰してしまっていた。ゴメンねステラ・・・。
俺はそっとステラをベッドに作り付けの棚に置いた。
さあ今度こそ寝るぞ・・・。
俺は眠りに落ちて行った。
3: 新しい家族
ジリリリリリリリリリ・・・
机の上の目覚まし時計から午前8時を知らせるけたたましい音が流れた。
俺は目を覚ました。体を起こそうとするが、体の一部が何かにつかまれているらしく、体が起こせない。どうなっているんだ?
見ると女の子が俺の腕にしがみついていて寝ていた。すーすーと可愛らしい寝息が聞こえる。まるで天使のような、本当に幸せそうな寝顔だった。
頭が次第にはっきりしてくる。そうだ・・・深夜に俺の部屋に異世界から女の子が現れたんだった。
まだ気持ちよさそうに寝てるし、もうちょっと寝かせてあげよう。
俺はリリーネの腕から自分の腕をそっと引き抜いて、音をたてないように細心の注意を払って自分の部屋着を持って風呂場に向かった。
シャワーを浴びて着替えて、いつものように仏壇に線香をあげて、リンを鳴らした。
チーン、という澄んだ音が響いた。
「星?何してるの?」
後ろから声をかけられて振り返ると、リリーネが赤いパジャマ姿で立っていた。あっ、起こしちゃったか・・・。
「あ、まだ寝てても良かったのに・・・。」
「ありがとう。でも、もうたっぷり寝ましたよ。」
「そう?おはようリリーネ。よく眠れた?」
「はい。あんなふかふかのベッド・・・。本当に幸せでした!」
リリーネが見せてくれた映像の中にあったリリーネの部屋は、寒そうな石造りの部屋で、ベッドは粗末だった。
「で、星は今何をしてたの?」
リリーネが近寄ってきた。
「ああ、お祈りだよ。これが俺の父さんと母さん、それから姉さんだ。」
俺は仏壇の遺影を見て言った。
「祭壇・・のようなものなの?」
「うん。そう。」
「ふ~ん。私もお祈りしていい?」
「いいよ。こうやって手を合わせて、今日も1日お守りください、ってお願いするんだ。」
「ふ~ん。」
リリーネが俺に倣って合掌した。
「それじゃあ・・・朝ごはん、食べようか?」
「うん。お腹ペコペコ。」
俺は朝食を準備した。リリーネも手伝ってくれたので早く済んだ。
2人でトーストをかじる。
・・・久しぶりだ。誰かと一緒に朝食を準備して、食べるのって・・・。
俺達は無言で朝食を食べ終えた。
俺はリリーネに食後のコーヒーを出した。
俺はリリーネに俺の住むこの世界のことについて話した。
俺が住んでいる世界は当然俺にとっては当たり前でも、異世界からやってきたリリーネにとってはまったく未知の世界だ。
俺は自分の世界について説明した。時々リリーネは俺に質問し、俺はそれに答えた。
「へーっ。じゃあ星の世界もあの『空の民』と同じように『科学』に支えられてるのね?」
「うん。でもさすがにリリーネが見せてくれたみたいな空中要塞はまだ造れてないけどね。きっとその『空の民』って連中は俺達の世界より進んでるんだと思う。」
リリーネが見せてくれた「空の民」の空中要塞は某ジブリ映画に出てきたような「空を飛ぶ城」のような代物だった。
「で、星の世界には魔法は無い訳?」
リリーネが尋ねる。
「難しいな。昔は盛んに魔法の研究が行われていたけど、科学が大体の事を解決できるようになっちゃったから、表向きは想像上の出来事とされているかな。
でも、今でも魔法の存在を信じている人は少なくはないし、魔法使いが主人公の物語は人気だよ。」
リリーネは複雑そうな顔で頷いている。
「ふーん。興味深いわ・・・。」
俺はここで心を鬼にしてある質問を口にした。
「リリーネ、これからどうするんだ?」
リリーネは悲しそうな顔で俯いた。
しばし沈黙が流れた。
本当にこの質問をするのだけは嫌だったが、仕方がなかった。
俺は朝起きた時から考えていたことをついに口に出すことにした。
「そ、その・・・。リリーネさえ嫌じゃなかったら・・・。しばらく俺の家で暮らさないか?」
あの時柏木さんに告白した時みたいに顔が熱くなった。いや、でもこれは当然のことだ。
リリーネからしたらいきなり右も左も分からない異世界に飛ばされてしまったんだぜ?しかもたった1人で。
そんなリリーネを守ってあげられる人間は、今のところは俺一人だけしかいないはずだ。
だいたい今元の世界に戻れたとしても、あちらでは大変なことになっているんだろ?
リリーネは祖国も家族も失い、向こうに行けば真っ先に狙われるはずだ。
リリーネは上目遣いで俺を見た。
「ほ・・・本当に・・・本当に私を寄せてくれるのですか?」
俺は答えた。
「もちろん。この家には俺しかいないから・・・。それに・・・俺たちは『絆の共有』だっけ?を交わしたんだろ?なら・・・住む場所だって共有できるだろ?」
リリーネは目を潤ませて立ち上がると、俺の前に進み出て立膝をついた。
「ありがとうございます!私・・・私・・・何て言ってお礼したらいいか・・・?」
俺は慌てた。とにかく一人の人間としてリリーネを放って置けなかったのだけなのだから。
「や、やめてくれよ。ほ、ほら、体を起こして・・・。」
俺はリリーネの傍にしゃがみ込んだ。次の瞬間、リリーネは俺に飛び込むように抱き着いてきた。
何度目だろうか?このやわらかい感触は?だが、南雲星よ、喜んではいけない!喜ぶな!
「ありがとう・・・!嬉しい・・・。行きなり現れた私にこんなに優しくしてくれるなんて・・・。」
リリーネはぽろぽろと涙を流していた。
や、やだなぁ・・・泣かないで欲しいなぁ・・・。
「そ、それじゃあよろしくな・・・。リリーネ。」
俺はぎこちなく手を差し出した。
「は、はい!これからよろしくお願いします!」
リリーネはそんな俺の手をがっちりと握ってくれた。
こうして、リリーネは俺の家に居候することになった。
つづく(と思います)




