一話
「御愁傷様でした」
知らない人にそう言われる
今日は、両親の葬式だった
事故死と聞いている
自分もその事故に巻き込まれ、記憶を失ったと
唯一覚えていたのは、妹の小雪だ
何故かは知らないが小雪の事だけは覚えていた
この葬式が終わったら、俺達は、俺のリハビリもかねて
田舎の方のじいちゃんの家に引っ越すことになっていた
小雪もあまり文句は言わず、納得していた
式が終わり、火葬場に行くだけだった
その時、事件が起こった
突然、変な模様のついた黒いマントの集団が両親の遺体を盗んで行ったのだ
銃で脅し、三人くらいずつで、二人の遺体を盗んでいった
それを止めようとした人がその銃で撃たれた
何が起こったのか分からなかった
いきなり、目の前で人が殺された
それにより、パニックになり、皆、裏口から逃げようと必死に走った
そして混乱する人たちに押され
俺と小雪は転びそうになっていた
「小雪!」
俺は手を伸ばして小雪を助けようとした
しかし、どんどん押される、しかも運の悪いことに
小雪は、黒いマント集団の方に押されていた
「お兄ちゃん!」
皆が裏口から逃げようとするなか
小雪は、身長が回りより低いため、体の自由がきかず
後ろに流されるようになってしまっているのだ
そして、人が少なくなり、空いた隙間から小雪は黒いマントの方に投げ出された
もうおしまいだ、そう思った
近くにいた黒マントが小雪の腕を掴んだ
ああ、俺は記憶を失い、両親を失い、最後には妹まで失うのか
なんて酷い世の中だ、もう…おしまいだ
そう思った瞬間、もうひとつの裏口から悲鳴が上がった
「ぐわぁぁぁ」
もうひとつの裏口からその悲鳴はどんどん近寄ってくる
そして、その人は現れた
「太刀くん!小雪ちゃん!大丈夫か!?」
それは、俺が病院で目を冷ましたときにいた葉弥と名乗る男だ
黒マント達が一斉に銃を向ける
そして、葉弥と名乗る男に向けて撃った
葉弥と名乗る男は、人間とは思えない脚力で飛びそれをすべて避けた
そのまま、天井を蹴り
急降下して小雪の腕をつかんでいる男を蹴った
蹴られたせいで、男は小雪の手を離した
そこを、葉弥と名乗る男は小雪を抱き上げ
太刀の側まで飛んできた
「無事だったかい?」
「ええ、それより貴方は一体誰なんですか?」
「俺は葉弥、君の先輩さ」
そして、葉弥は指をならした
すると、天井を突き破って
二人の少女が飛び込んできた
「鍵葉、優華、二人のことを頼む」
「わかったよー」
「了解」
二人が返事をすると
葉弥は黒マントの集団に飛び込んでいった
「捕まっててねー」
そう言うと、緑色の髪をした女の子の髪が生き物の様に巻き付いてきた
「なんだこれ!?」
「暴れないでね」
緑色の髪の子はそのまま小雪ともう一人の女の子も髪でつかみ
飛んだ、そして、余っている髪の毛を羽のかたちにして上手くバランスをとって羽ばたいた
「一体何なんだよこれは!?」
「んー、後で説明するから、ちょっと静かにねー」
そう言うと、少しずつ高度を落とし着陸した
そこは、太刀の住んでいた家、天野家だった
三人ともそのまま、家に入ってくる行ったので太刀は着いていった
太刀と小雪はリビングの椅子に座らされた
「それで、説明する前に、小雪ちゃんは知ってると思うけれど自己紹介しておくねー」
緑色の髪をした女の子はそう言うと、太刀のとなりに行って頭を下げた
「はじめましてになるかな、優華と言います、髪の毛を動かすのが得意でーす!」
優華は、小雪の向かい側の席に座った
「鎖舞 鍵葉、よろしく」
鍵葉は太刀の向かい側の席に座った
「それじゃあ、説明します」
鍵葉は話始めた
「まずは、あの教団のことから、あの教団はこの世界を支配するために、異世界から来たもの、
その為に、あなた達の両親の死体が必要だったの、理由はいずれわかる」
「待ってくれ、それは、マジの話なのか、記憶がない俺をいじめてる訳じゃないよな?
そんなことはしない、小雪ちゃんは理解できているはず」
小雪は頷いた
「一応、全部前に教えてもらったから」
「優秀ね、それで、後はあなた達は、話より少し遠くに引っ越すことになったわ」
「どういうことだ?」
鍵葉は、優華の頭を撫でながら言った
「狙われるかもしれないから、この子が貴方のお爺ちゃんに交渉したの」
鍵葉は優華の頭を撫で続ける、優華の顔はどんどん笑顔になっていく
此方まで笑顔になりそうだ
「引っ越した後は普通に生活して大丈夫、ただし、この町にはあまり近寄らない方がいいわ」
そして、二人はそれを言うと出ていった
それと入れ替わるように、じいちゃんが迎えに来た
今日は元々、葬式が終わり次第引っ越しになっていた
「大変だったな」
「二人の死体は?」
「持ってかれてしまったよ、ただし、警察には知らせた、わしらはこのまま引っ越すのが先決じゃ」
「あの葉弥とか言う男は」
「やつらがいなくなるのと共に居なくなったさ」
「そうか」
「取り合えず乗れ、もう荷物は行った、わしらも行くぞ」
そう言われて太刀と小雪は車に乗り込んだ
一方鍵葉の家では
「困ったもんだよ、まさか教団が動き出すとは」
「そうね、まさかやつらが」
「魔神と一緒に来たんだっけ?」
「そうだ」
三人が話していると
「太刀さんは?」
赤い髪の少女、フアが聞いた
「無事だよ、多分今頃この町を出たと思うよ」
そう言って葉弥は微笑んだ
「そうですか、それで、太刀さんの、いえ太刀の記憶を戻す方法は」
「ああ、今教える、神様から俺は太刀の記憶の断片を貰った、これを達に戻す事で記憶は戻る」
葉弥は、手元に異次元を作り出し、その中からビンを取り出した
その中には、小さな光の玉が4つ入っていた
「それで、どうやって体内に?」
「それはねー、キスで口移しだよーん」
「え?」
「だから、キスで口移しをするのだよ」
「ええー!!」
フアは絶叫した
「まあまあ太刀くんのこと戻したくないの?」
「いや、戻したいです」
「だったら頑張れ」
「……フア頑張って」
キッチンからのっそり出てきたクルアがフアに応援するように声をかける
「いやいや、クルアちゃんもだよ」
「…oh」
「一人一つだから、一つは小雪ちゃんで、もう一つは俺が無理やり食わせるとして」
「え、ホモォ」
「いや、違うから」
「取り合えず皆さん、頑張りましょう!」
「「「おー!!」」」