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俺と不死鳥と異世界トリップ  作者: ネギ抜き
第1章 孤児院編
8/35

5 かくれんぼ

 お風呂事件から3日後、今日はあいにくの雨模様となっている。


 孤児院では全くと言って良いほど娯楽がない。

 娯楽といっても話したり、喧嘩したり、追いかけっこをするだけで前の世界に比べてほぼ皆無と言える。

 科学や文化が進んでないのならゲームや小説、漫画はないと思うがここは遊具場があるだけでトランプやオセロと言った室内で遊ぶものが全くない。

 ここは孤児院だから、そこまでの物は用意出来ないのかもしれないけれども。

 通常ならこの年代の子供は様々な遊びで感受性を育んで行くのだろうが、ここの子供達は小さい頃に家族と家を失い、生きることだけを考えてきた。その為、娯楽を楽しむ余裕はなく遊び方を知らずに育ってきた。

 ここの院長であるマリアも、小さい頃は貴族の令嬢として過ごし、その後騎士への道を進んだ。そのため堅物として育ち、子供達に遊びを教えてあげる事が出来なかった。




「暇だな……」

 今は魔法の練習が終わって自由時間。

 ダイキは、今は男子部屋で身体を休めている。

 今は魔法の練習が終わって自由時間。

 ダイキは、今は男子部屋で身体を休めている。

 本当なら、外に行って雨雲を魔法で吹き飛ばせるかどうか試そうかと考えていた。

 しかし、今は雨が降って困ることはないしこの前風呂場を作った時に体感したが俺の魔法力でそんな規模の魔法を使えば倒れてしまう可能性が高いというデメリットがある。

 今は疲れる事をしたくないという結論に至ったわけだ。

 なので、魔法力を上げるトレーニングを積んで上級魔法が普通に使えるようになるまでは必要な時以外は極力使わないようにしていこうと考えた。


 ダイキが自己研鑽をしている間、マリアたちは練習で出た汗を流しに風呂に入っている。

 この前風呂を作ったが、よほどカルチャーショックだったらしく女性組は毎日朝、昼、晩と3回、男子組も2回は入っている。もし某宇宙人がいたら「デカルチャー……」とつぶやいているだろう。


 この前のお風呂事件以降、風呂に入る時は湯だって倒れないように気をつけているようだ。

 あの時は風呂から出た後ずっと苦しそうに唸ってたし、ダイキも注意してなかったから正直悪いと思っていた。

 あれから、マリアとシャロンは俺を見るたびに裸を見られたことが恥ずかしかったのか今でも視線が合うと顔を赤くして逸らすときがある。

 確かに、マリアの元人族の中でも珍しい豊満なバスト&ヒップとそれと反比例して鍛え抜かれてくびれたウェストは魅力的で5歳児なのにアソコが反応してしまった。

 シャロンも、年相応に成長が始まっているらしく少し胸が膨らみ始めているみたいだった。

 あの時は不可抗力ってことで許してはもらっているが、ずっと続けられるとこちらも気にしてしまう。 ダイキはお詫びに、シャンプーとリンスと石鹸をプレゼントしようかと考えた。

 ちなみに、アリスとエリーは全く気にしていないらしく、さっきもアリスはダイキに「ベルっ!一緒にお風呂に行こう!!」と声をかけ、エリーも「ベル君と一緒にお風呂入りたいな…」と手をひかれて連れて行かれそうになった。

 そこはマリアの制止したことで流れたが、今後は覚悟?しておいたほうがいいのでなと思うダイキだった。



   ♦♦♦




 全員が風呂から出てくると、ダイキはマリアたちを集会広場に集めた。

 まだ風呂からあがってあまり時間が経ってないため身体から湯気が出ている。


「みんなを集めていったい何をするのかしら?」


 全員の代表として顔を桜色に染めたマリアが聞いてくる。


「これから、みんなで遊ぼう!」


「あそぶってなにするんだよ?

 おれたちのあそびなんておいかけっこくらいだろ?

 もうあきたよ」


 シュレーダーがダイキの意見に文句をつけてきた。


 しかし、その文句はダイキの予想の範囲内だったのでスルーして本題に入る。


「なので、今日は僕の世界の遊びをしよう!

 その名もかくれんぼだ!!」


「「「「「「「「かくれんぼ?」」」」」」」」


「そうだ。

 ルールは、まずは探す側(鬼)を一人決めて、それ以外の人はその人に見つからないように隠れる。

 鬼は全員が『もういいよ』っていうまで目をつぶってなければいけない。

 鬼は隠れた人の『もういいよ』の声が聞こえてから探し始める。

 隠れている人を見つけるには『もういいよ』の声と隠れている人の物音をたよりに隠れている人を探す。

 もし見つけた場合はその人に触るか、指をさして『~~みーつけた』と大きな声で言うんだ。

 最初に、見つかった人が次の鬼になる。

 以上で大まかな説明は終わるけどみんな分かった?」


 聞くとみんなが首をひねった。


「わかりやすく言うと誰が一番うまく隠れられるかを競う遊びだよ」


 そこまで、砕いて説明するとやっとわかってもらえたようだ。


「この遊びは応用性が高いわね。闇属性の魔法の練習になるし、隠密の仕事の訓練にも使えそうだわ…」


 マリアが独り言を言いながら自分の世界に入ってしまった。


「確かにそういう考え方もあるけど、今回は全員で楽しむための遊びとしてやるからそれはなしだよ?」


「そっ、それはわかってるわよ…」


 ダイキが注意すると、マリアは口をとがらせて拗ねてしまった。

 お風呂事件があってから、マリアは大貴にこういう子供っぽい一面も見せてくれるようになった。

 ダイキ的には、ドンドン素を出してもらった方が嬉しいと思っているので内心そういう態度を出してもらって喜んでいたりする。


「今回は初めてやるので僕が鬼になるよ。

 隠れる場所は、外は雨が降ってるし建物の中だけにしよう。

 あと、場所が場所だから今回は魔法で姿を消したりするのもありにしようか?

 何か質問はある?」


 シャロンがスッと手を挙げる


「魔法ですが、姿を消したりすることができる闇属性の魔法を使えるのはケインとライオットだけですし、その段階はもう少し慣れてからでいいんじゃありません?」


 その意見に、ダイキはフム…と考えを巡らす。


「そう… 確かに平等じゃなかったね。

 それじゃあ魔法は無しで行こう!

 他には?」


 すると、今度はアリスが手を挙げた。


「ただやるだけじゃやる気でないし、最初に見つかった人は最後に見つかった人の命令を1つ聞く事にしない?」


「おおっ! それいいな、オレもさんせいだ!!」


 アリスの意見にシュレーダーが真っ先に乗った。他の人も全員の顔色が変わってやる気になったようだ。

 異論はないらしい。


「では罰ゲームはするの方向で行きます。あと言い忘れてたけど母さんもちゃんと参加するんだよ?」


「えっ!?」


「全員で遊ぶだから母さんにも楽しんでもらわないと… みんなもそう思うよね?」


「「「「「「さんせい!!!!!!」」」」」」


 マリアさんが何か言う前に、6人の返事が返ってきた。


「わっ、わたしもおかあさんといっしょにあそびたいな…」


 それに遅れてエリーもはにかみながら思いを口にする。

 ダイキもやられた事があるが、普段意見を言わないエリーにああやってお願いされると何にも言い返せなくなってしまうのだ。

 それはマリアも同じだったらしく、諦めて参加を表明した。


「これから60まで数えるから好きなところに隠れてね。

 隠れ終わってないときはちゃんと『まーだだよ』って返すんだよ。

 それじゃあ始めるよ。

 1、2、3、4、5……………」


 ダイキが、手で目を覆って数を数え始めるとみんなが部屋を出て行った。


 さあ、かくれんぼin異世界の始まりだ!!!



   ♦♦♦



「それでは始めます。1、2、3、4、5………………」


(ベルがかぞえはじめた!)


 ケインは、集会広場を出て目の前の客間に入る。


(とりあえず、みつからないようにかくれればいいんだよね?

 魔法はつかっちゃだめだし、かんがえてかくれないとさいしょにみつかっちゃう。

 おにはベルだし、きあいをいれてやらないとすぐにみつかっちゃうな)


 ケインはどんな風に隠れるのか考えながら、客間を見渡す。


 シュレーダー達は倉庫に、マリア達は調理場と女部屋に別れたようだ。


(それじゃあ、僕はベルが、みんなをさがしにいくまできゃくまにかくれてようすをみて、いなくなったらひろまにもどってかくれよう!)


「もーーういいーかーーい?」


 ケインが色々考えている間に60秒が過ぎたのかダイキの声が聞こえる。

 

「もーういいーよーーーっ!!」


 ケインは、自信を込めた大きな声で返事をするのだった。




   ♦♦♦



「58、59、60! もーーういいーかーーい?」


「「「「「「「もーういいーよーー!!」」」」」」」


 全員の声を確認したダイキは、目を開けてまず部屋の中を見回す。


(さて、どこから探そうか…

 孤児院は、隠れる場所が結構限られるんだよな。

 俺が見た限りじゃ、一番怪しいのは倉庫と女部屋と客間。調理場は隠れる場所が一か所しかないし、男部屋とトイレは隠れられるところがないから、先に倉庫のほうから行くか)


 ダイキは一通り考えをまとめると部屋を出るのだった。




   ♦♦♦




 孤児院の倉庫には、マリアが街に出た時に買ってきたスパイスや、服、道具などでいっぱいになっている。


「シュレにぃ、もうすこしおくにいけない? まだかくれられないよ…」


「こっちも……すきまがないんだよ……」


「はやくしないと、ベルがきちゃうよ?」


 現在、倉庫にはシュレーダーとトビアスとライオットがいて、ライオットは小柄な体を活かしてスパイスが入った壺の後ろに、シュレーダーとトビアスは服が高く積まれている場所の後ろに隠れようとしていた。



「なんでもういいよっていっちゃったんだよ!」


「シュレにぃだっていったじゃないか…」


 そうやって、言い合っているうちに誰かの足音が倉庫に近づいてきた。足音がとまるとギィっと扉が開いた。

 ライベルが部屋に入ってきたようだ。


「さあて、ここには誰がいますかね~?」


 ダイキは倉庫の中を探し始めた。

 入口から、道具、食料品、日用品と積まれているので、ダイキは道具の場所から探している。


(やべぇ、かくれてたらしょんべんにいきたくなってきた…)


(シュレにぃ、ぼくおしっこしたいかも……)


(がまんしろ! さいしょにみつかったらばつゲームだぞ?)


(うん、わかった……)


 話しているうちにダイキは、ライオットが隠れている食料品の場所を探していた。


「隠れてたら出てきてくださーい」


 (ライオの場所まで来ちまった。

 ここでライオが見つからなかったら次は俺たちか……)


 そう考えていると、トビアスがいきなりビクッと動いて服が少し動いてしまった。

 その動きに気付いたライベルは食料品の場所を移動してこっちに近づいてきた。


「トービーアースー?」


「ごめんなさい…… 緊張しておしっこが出そうになっちゃって……」


 トビアスがすまなそうな顔で謝ってきた。


「なるほど、そこですか。今行きますんで待っててください」


 ダイキの足音がどんどん近付いてくる。


 そして…


「シュレにぃとトビーにぃ、みーつけた!」


 目の前に来たダイキが笑顔で大きな声を出した。


(これで、罰ゲームは決定か… せめて、ケインとアリスだけは早く見つかってくれ……)


 そう思いながら、シュレーダーはトビアスとトイレに向かった…




   ♦♦♦




 シャロンは、女部屋の中からライベルが倉庫の方向に歩いて行く足音に耳を澄ませていた。


「………ベルは倉庫に行ったようですわね」


「そのようですね。そう言えばエリーがいないようだけど、どこに行ったのかしら?」


「エリーならさっき、調理場に入って行くのをみたよ~」


 シャロンの呟きに、マリアとアリスが答えを返す。

 シャロン達は、マリアの案で女部屋に来ており、今は布団の中に隠れている。


「これってすぐに見つかりません?」


 シャロンは、どうしても気になって聞いてしまう。


「そうね、一目で隠れているのがバレちゃうわね~」


「ならどうしてここなんですか?」


「今回の遊びで重要なのは、一番最初に見つからない事でしょ?

 鬼はベルだし、女部屋ここなら入りにくいしすぐには来ないと思ったのよ」


「なるほど…… ベルの考えを先読みして動いたわけですね?

 流石お母様です!」


 話していると倉庫の方からライベルの声が聞こえた。

 どうやら、シュレーダーとトビアス、続いてライオットが見つかったようだ。


「ほらね? これで第一目標達成よ」


「本当ですね! 私もこれからは相手の思考についても考えてみますわ!!」


 シャロンは、マリアの考え方を見習っていこうと心に決めた。


「でも、今回は完全な遊びだし、そこまでしなくてもいいんじゃない?」


 隣で、アリスが2人の会話に突っ込んでいたが、2人はあえて何も聞こえなかった事にした。




   ♦♦♦




 倉庫でシュレーダーとトビアスの他に壺の後ろに隠れていたライオットを見つけた後、男部屋と女部屋に行き、マリアとアリスとシャロンを見つけた。


 後は、ケインとエリーを見つければ終わりだ。


(それにしても、母さん達はちゃんと隠れる気があったのだろうか……

 目の前の布団の中に隠れるなんて、見つけてくださいって言っているようなものなのに)


 ダイキは、素朴な疑問を考えながら一度集会広場に戻っていった。



 集会広場に戻ると、見つけた5人が椅子に座って会話をしていた。ライオットはどうやら用を足しにいっているようだ。

 みんなの様子を見ていると、シュレーダーが足の下に視線をやりながらニヤニヤしているのに気がついた。

 どうしたのかと思い視線の先に目を向けるとケインが机の下に座っていた。


(俺がいなくなってからここに隠れにきたのか。裏をかくとはやるじゃないか!)


 ダイキは、自分の裏を書いたケインを心の中で称賛しつつ御約束の言葉を口に出す。


「ケインにぃみーつけた!」


 そう言うと、ケインは机から出てきて未だにニヤニヤしてるシュレーダーを見た。


「にいさんがぼくをみてるからきづかれたじゃないか!」


「なにいってんだよ。

 おれたちは何もしてないぜ?」


 ケインは不機嫌にシュレーダーを睨んでいたが、何を言っても無駄だと悟ったのかあきらめてため息をついた。


「………はぁ。まあいいけどさ~

 後はエリーだけかな?」


「そうだね。じゃあ、僕はエリーを探してくるよ」


 ライベルはエリーを見つけに部屋を出ようとするとアリスが声を掛けてきた。


「エリーなら多分調理場にいると思うよ」


「分かった。行ってみるよ」


 そう言って部屋を出た。



 調理場に行くとエリーはすぐに見つかった。

 調理場の調理具入れの中に入っていたが入り口が開いていたのだ。

 丸まって隠れていたエリーにもう終わった事を伝え、みんなの所に戻った。




「じゃあ、エリーに罰ゲームを決めて貰おうか?」


 集会広場に戻り、最初に見つかったシュレーダーとトビアスに命令を決めてもらう。


「私が決めてあげようか?

 シュレーダーとトビアスは私に今日の夕ご飯を渡す事っ!」


「アリスねぇは余計な事言うな!!」


 ビシッとシュレーダー達を差しながら言うアリスにシュレーダーが抗議する。


「エリーの好きなように決めていいんだからね?

 ゆっくり考えなさい」


 マリアさんがエリーに声をかける。

 エリーは、優しい性格だし、人が嫌がるような事は決められないのだろう。

 今も、だんだん追い込まれてきてるのか耳をシュンと垂れて目に涙が溜まり始めている。

 

(しょうがないので助け舟を出すか)


 ダイキは、うつむいているエリーに声をかける。


「とりあえず、今回は保留にしますか…… エリーねぇも決めかねているようですし、無理に決める必要もないでしょう」


「そうですわね!

 とりあえずこの話は終わりましょう!

 夕御飯の準備をしてきますわ」


 ダイキの起点にシャロンが乗ってくれたようだ。

 みんなも今の流れでうやむやになった。




(今度はもう少し考えて罰ゲーム決めないとな…)


 ダイキは、そんな事を考えながらシャロンの手伝いをしに調理場へ向かった。

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