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俺と不死鳥と異世界トリップ  作者: ネギ抜き
第1章 孤児院編
6/35

3 繋がり

 クライン孤児院は、統合都市ピースフルから南に20キルメリ程向かった森の奥にある。


 マリアがこの場所に孤児院を作ったのは大貴がこの世界に来る約4年前、戦争が終わって1年が過ぎた頃だった。

 マリアは旅をしている途中に拾い、その後様々な国を旅していたアリスとたまたまギルドに薬草採取依頼がありこの森を訪れた。

 それまでは、院を作ろうとは考えていたが条件を満たす場所が見つからず頭を悩ませていたがこの場所はピースフルからあまり離れず森にも凶暴な魔物もいなく、自給自足ができる場所ということでこの場所に院を作ろうと決めた。

 建物は森の木を切り倒したものを使い、建物の染色はピースフルで買ってきた特別な染料を使った。


 孤児院は1階建てで敷地内には、マリアが栽培している菜園のほかに、水と地の混合魔法で作った井戸と魔法や武術を学ぶために作った練習部屋、こどもたちが楽しく遊べるために余った木材で作った遊具がある。

 部屋は全部で8部屋あり、全員が食事や書き物をするときに使大きな木の机と人数分の椅子がある集会広間、料理を作るために作られ、ナイフや鍋などの調理器具がおかれた調理場、荷物や道具をしまう倉庫、客人が来たとき用に作られた客間、男性用の寝室、女性用の寝室、男性寝室と女性寝室の間にトイレがある。

 寝室を男性と女性に分けたのは進学した際に男子寮と女子寮に分かれるため、今のうちに慣れさせておくことと、マリアの保護者としての気持ちが表れたためである。


 今回の戦争が終わり、ピースフルが作られたことにより、他種族間の交流が行われる事となった。

 その結果、未知の技術や知識を学ぶことができるようになり多くの人がピースフルで学ぼうと様々な場所から足を運んでいる。

 そのため、ピースフルの学校は競争率が高く、それだけ優秀な人材が出てくるだろうといわれている。

 マリアがこどもたちを入学させたがるのは世の中を知ってもらうにはちょうどいい場所であり、またピースフルの学校につてがあるため知り合いがいるところに行かせたいという気持ちもある。


 ピースフルは他種族が交流するために作られた場所だが、戦争が終わってまだ5年が過ぎたあたりである。

まだ、他種族との交流を快く思ってない人が多く、そういった意味でも世の中を知ることができる。



   ♦♦♦



 現在、マリアたちは魔法の練習をいったん終え、集会部屋に集まっている。

 理由は練習中にライベルが見せた魔法についてである。


 この世界では、魔法は魔人と獣人が使う体外マナを使った魔法と人と竜人が使う体内マナを使った魔法の2種類があった。

 魔人と獣人は大気にあるマナを身体に宿してそれを制御して行使する魔法であり、人や竜人が使う魔法は身体の中でマナを生成してそれを行使するものだった。

 前者は、マナを宿す量に個人差があり大気に残るマナを使うため使える量に限りがあるが多くの人が使える方法。

 後者は訓練さえすれば個人差もなく大気にあるマナの量に左右されることなく魔法を使えるが、魔法を使えるようになるまでの期間が長く少ない人しか使えない技術。

 そのため魔人は宿す量も多く使える人数も多いため魔法主体で戦い、獣人は、多人数が魔法を使えるが、強力な魔法が使えなかったため頭を使うようになり、竜人は魔法が使えない為、身体能力の高さで攻撃し、人は魔法も使えず身体能力も他種族よりも低いため強力な道具や武器を作ることで補ってきた。

 どちらの方法でも魔法は使えるが、自分で生成する技術、体内マナを使った魔法さえ取得できればいつでも魔法を使えるようになり便利なるためマリアはこの技術からこどもたちに教えている。 

 

 本題に戻るが、子供達は自分たちが練習して出来るようになった事をすぐに出来てしまった事に対して、マリアは自分が3年かけて覚えた技術をまだ5歳になるか位の子供が初めての魔法で使ってしまった事に対して驚いていた。


(やっぱりこんな小さい子供が魔法を使うのはやっぱりおかしかったのか?

 やらかしたか?)


 ライベルは、一時の感情に流されてしまったことをやや反省していた。

 みんなの自分を見る目に不安と畏怖の色が混じっていると感じたからだ。


(俺の黒髪と目はこの世界じゃ珍しいらしいしそれもあって得体が知れないんだろうな…

 彩花の情報のためにもここの人たちにはしっかり話したほうがいいかな?)


 ライベルは内心でため息をついた。

 すると、沈黙を破ってマリアがライベルに声をかけた。

「これから、ライベルにいくつか聞きたいことがあるんだけどいいかしら?」


「だいじょうぶです」


(この返事の仕方、私の知ってる5歳過ぎなら言った意味すら理解できないはずなのに…)


 マリアは内心で警戒しつつライベルに質問を始めた。


「最初の質問ね?

 ライベルは今まで魔法を使ったことがある?」


「いいえ、さっきできたのががはじめてです」


「練習をしたりとかは?」


「それもないです。

 いつかマリアさんにおしえてもらえるとおもってたので」


 ライベルの答えに子供達が再度驚く。


「次に、あの魔法をどうやって使ったかわかる?」


「はい。

 さっきマリアさんがイメージがだいじといっていたので、このまえやさいにみずをあげているのをみて、それをイメージしてみました」


 マリアは、予想通りだったものやはりあきれる事しかできなかった。


「これはみんなにも聞いてほしいんだけど、まずライベルがマナを生成した時に赤い光、火のマナを作ったのは覚えてる?

 ライベルはそこから水球を作ったんだけど、その魔法は別の属性のマナから別の属性の魔法を使うっていう学校では中級に位置するの技術なの」


 その言葉に今度こそ全員が言葉を失う。

 その中には、別の意味で言葉を失っているライベルも含まれる。


(この身体で魔法を使ったのはやっぱり失敗だったな。

 こっちも知らなかったとはいえいきなり中級魔法使われたらびっくりするよな…

 やっぱり使うんじゃなかったな…)


「まだ5歳を少し過ぎたくらいにしか見えないライベルにこんなこと言うのはいやなんだけど……

あなたは一体何者なの?

 あなたの言動や行動は5歳とは思えないほどに大人びているわ。できれば、本当のことを話してほしいの」


(やっぱりこうなるよな~

 常識(この世界の常識は分からないけど)で考えて妖しいって思うよな。

 やっぱり話すしかないし、最悪ここから出ていかないとな……)


「マリアお母様何を言っているのですか?

 確かにベルが魔法を使ったのには驚きましたが、5歳の男の子ですよ?」


 マリアの言葉にシャロンが口を開くと同時に、ライベルがため息をついた。

 それから、これまでの拙い話し方から普通の話し方に戻して話始めた。


「分かりました。しかし、先に注意しておきますけどマリアさんが考えていることとは全く違うと思いますよ」


 そういうと、ライベルは自分が魔法と言う概念が殆ど存在せず、この世界よりも科学が発達している世界から来たこと、本当の名前は大貴ということ、何故この世界に来たかはわからない事、そして彩花の事について話した。


「余りにも壮大過ぎて信じる事は出来ないと思いますけど、他国のスパイって事はありえませんのでそこは信用してもらえると嬉しいです」


 聞いていたマリア達(ライオットとトビアスは途中で寝てしまった)は、話に余りついて来ていないようだったが、とりあえず敵ではないという事はわかってもらえたようだ。


「この話をしたのは皆さんがこの世界で出来た新しい家族だと思ってますし、家族に隠し事をしたくないと考えたからです。

でも、他の人には異世界から来たって事は内緒でお願いします」


 そう言うとライベルは小さな頭を下げ、マリアはその真剣な態度と姿勢に心を打たれた。


「ベル、いえ、ダイキ。

 頭を上げなさい。私たちはもう家族なの。

 ありのままを話してくれたおかげで私たちもあなたが信頼できる人だと感じたわ。

 あなたが異世界人であるという事はまだ理解出来ていないけど、その事は家族の秘密にする事をクライン孤児院の名に誓います。

 みんなもそれでいいわね?」


 マリアが子供達に訪ねると、余り理解していないものの大切な話だと感じているのか一斉に頷いた。


「とりあえず、出ていけと言われれば出て行きます。

 今まで通りの方が嬉しいですがこればかりはみんなで話した方がいいでしょうし僕は一旦外にいますね」


 そういうと、ライベルは部屋の外に出て行った。



   ♦♦♦




 部屋に残されたマリアと子供達は、ライベルの出ていく宣言に黙ってしまったが、やがてシュレーダーが沈黙を破った。


「母さんとベルが何を話してるのかイマイチ分んなかったけど、ベルをめいわく?とは思ってないし、これからも一緒にいたいぜ!」


「私もシュレーダーと同じです!

 ベルは大切な家族です。

 一緒に暮らすとしても半年程ですがそれでも一緒にいたいです!」


「ボクもベルといっしょにいたいな~ もっといっしょにあそびたいよ」


「わっ、わたしもベル君といっしょにいたいな…」


「オレも!」


「僕も!!」


 シュレーダーに続いてシャロン、ケイン、エリー、トビアス、ライオットと答える。


「アリスはどう?」


「私は母さんの考えに従います。

 でも、もし一緒にいられるなら私は凄く嬉しいです」


 マリアの問いかけにアリスは満面の笑みで答えた。

 みんなが笑っているのを見てマリアも笑顔で返す。


「私もみんなと同じよ。

 ライベルは私たちの大切な家族だもの。迷う必要なんてないわね。

 さぁ、みんなでライベルを迎えに行きましょう!

 そしたら夕御飯よ!!」


 マリアがそう言うと子供達はライベルを迎えに一斉に外に向かった。


(みんな思いやりのある優しい子に育ってくれてるわね…)


 マリアは、子供達がライベルを受け入れてくれた事に喜びを感じながら部屋を出た。



   ♦♦♦




 その頃、ライベルは孤児院の外にある遊具に肘をかけながら腰掛けていた。


(これからどうするかな… 

 まずは、寝る場所と水食料の確保か。

 確か近くに川があったから水はそれでいいとして、食料はどうしよう…

 前の世界の知識は使えないだろうし野草はやめておいたほうがいい。

 残りは、近くの動物を狩るしかないか。

 この身体じゃあカエル(リバフラ)一匹取るのも大変そうだな)


 そんなことを考えていると、孤児院の扉から子供達が出てきてこっちに気がついて走ってきた。


「ねぇベル、こんなところでなにしてるの?

 はやくいえにはいろうよ」


 最初に走ってきたライオットが俺の手を引っ張ってくる。


「オイ!

 はやくいえにはいるぞ!

 お前がいないと夕ご飯が食べられないだろ」


 シュレーダーがライベルを立たせる。


「シュレは素直じゃないんだから…

 ベルもう夕御飯の時間だから手伝ってくださらない?」


 シャロンは立ったライベルのお尻の汚れをはたいて落とす。


「こんなところにいたらぐあいがわるくなっちゃうからはやくかえろ?

 ベル君がいなくなったらさびしいよ…」


 エリーは、涙目になりながらこっちを見つめてくる。


「ベルは今日の夕飯何がいい?

 リバフロの丸焼き作ってあげようか?」


 今日の料理当番のアリスが笑顔で自分の得意メニューを進めてくる。


「ベル!

 はやくはやく!!」


 トビアスが呆けているライベルの背中を押しながら急かす。


「こら、みんなベルが困ってるじゃないか…

 これからもよろしくね」


 ケインがみんなをたしなめながら声をかけてくる。


 そしてみんなに連れられて扉まで行くとマリアが待っていた。


「みんなの反応でわかると思うけど、ダイキは私たちにとって大事な家族の1人です。

勝手に出ていくことは許しません!」


 その言葉で我に返ったライベルは、何を言われたのかに気付いて確認する。


「それじゃあ、ここにいてもいいんですか?

 みんなもそれでいいの?」


 言いながら皆を見回すと笑顔でうなずいてくれた。

 ライベルは不覚にも涙が出そうになった。

「ありがとう……

 改めてお世話になります。

 後、今までどおりにライベルって呼んでください。

 みんなに考えてもらった名前で気に入ってるので」


「わかったわ。

 でも、そんな他人行儀な言い方はやめなさい!

 私たちは家族なんだから普通にはなしてくれていいのよ」


「わかった。みんなこれからよろしくね!!」


 この日、クライン孤児院に8人目の家族ができ、その絆が一層深まった…

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