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俺と不死鳥と異世界トリップ  作者: ネギ抜き
第2章 魔法学校編
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4 夕食

カレンのおかげでロペスから開放されたマリア達は、報酬を受け取る為に受け付けに戻ってきていた。

ロペスは、好奇心旺盛な所があり、普段は優しく、人当たりのいい人なのだが、一度スイッチが入ると納得するまで質問してくるという短所のような所があった。

ただ、質問してくるだけならいいのだが、ロペスの場合は何か言う事に対して「何で? 何で?」と何回も聞き返してくるのだ。そのため、ギルド職員や知り合いからは密かに質問博士と呼ばれていたりする。

どれくらいロペスといたのか気になり受け付けにある木製の時計を見ると、すでに20時を指していた。ギルドに来たのが30分になる前だったので30分程質問攻めにあっていたことになるになる。

その質問を主に受けていたマリアとベルはすでに3時間は拘束されていたかのように精神的に疲弊しているようで、溜息ばかりついている。

「遅いと思ったらギルド長に捕まってたんですね……」

 心中お察ししますとでも言うようにドネットがマリアに話しかける。

「ええ。相変わらず知識欲が健在みたいで何よりだったわよ。でも、久しぶりだったから結構答えたわ」

「そうですよね~ あれはやられると最終的に何も言えなくなりますからきついですよね……」

「本当にね。結構時間も取られちゃったし早く帰らないといけないんだけど全部終わっているんでしょ?」

「はい! こちらが今回の報酬と買い取った武器の金額になります!」

 ドネットは、そう言って部屋の奥にあった真新しい布袋2袋をマリアの前に置く。

「ええっと、まずは依頼の方からですね。今回の依頼の成功報酬としてまずは30シル60ブロ、後は、追加報酬として40シル50ブロで全部で1ゴル10ブロになります。装備の方は傷んだものが多かったので全部で30シルと53ブロになります。一応中身の確認をお願いします」

 マリアは、ドネットが言い終えると中身を確認せずに受け取る。

「確認しなくてもいいわ。それにしても、だいぶ増額したわね」

「そうですね。ギルド長の話だと今回の活躍に加えて意見料も入ってるそうです。なので気にしないで受け取ってください!」

「そう…… そう言う事ならありがたく受け取っておくわ。それじゃあ私たちは帰るわね」

「はい! またいらしてください!!」

報酬を持ったマリアは子供達を連れてギルドを後にした。



ここで、通貨について説明しよう。

戦争が起きる前までは、それぞれの国で別の通貨を使用していた。

しかし、戦争が終わり和平交渉が行われた際に、これからの4国のまつりごとを円満にしようと言う事で今までの通貨制度を廃止し、新たに4国共通の通貨制度が発表された。それが、現在の通貨制度である。

通貨は全部で4つの種類があり、低い値からブロンズ(銅)、シルバー(銀)、ゴールド(金)、プラチナ(白金)、クリスタル(結晶)である。

この通貨は、今は言いやすいように略しており、ブロ、シル、ゴル、プリ、クリ、となっている。

値段は、1ブロが日本で言う10円で100ブロで1シル、100シルで1ゴル、100ゴルで1プリ、10プリで1クリとなっている。

ピースフルにいる一般階級の年収が3ゴル前後と言われている為、マリアは1日に約4ヶ月分を稼いだ事になる。

それだけ、高いランクになればなるほど危険度は増すが、報酬も高くなると言う事になる。

その為、冒険者という職業は一気にお金を稼ぎたい人達(特に若い男性)に人気が高い。

ギルドでは、そんな血気盛んな人達が早死にしないように、ランクアップする際には厳しい試験を設定しているが、それはまた次の機会に話そうと思う。

ちなみに、ギルド長であるロペスの基本年収は5ゴル前後、受付嬢のドネットやカレンは2ゴル50シル前後、ピースフルの学校の教師をしているミーナは3ゴル前後である。

受付嬢の2人はともかく、高ランク冒険者であるロペスやミーナにこの年収は破格の安さである。それでもこの2人が今の仕事に就いているのは、「新しい時代の手助けになりたい」という想いがあってだが、最後の後押しは和平交渉が終わってすぐぐらいに、当時17歳と成人して少ししかたっていなかった獣人国第2王女のエンジェ・ハルトに説得された事だったと言う事を追記しておこう。



ギルドを出たマリア達の自宅は、4大区画を丸く囲んでいる住居区画にある。ギルド区画からだと南南東に位置するため、4大区画の中でも東門に近い区画、商業区画に立ち寄ってギルドにいく前にした約束を果たそうとしていた。

店舗によってはすでに閉店してしまった所もあるようだが、まだ開いている店は多くあり先程フェイ達が言ったチョコレートや金平糖の他にも、この世界のお菓子である米に似た(ライス)を加工した米菓子にチョコレートを乗せたチョレスと言った世界を超えた技術の融合した商品も並んでいる。

マリア達は、その中でもお菓子を専門に扱っている店「未定」に来ていた。

「それじゃあ、お菓子は1人10ブロまでね。みんな待ってるから買ったら私がここで待ってるからすぐに戻ってくること! いいわね?」

マリアは、そう言うと布袋から出したお小遣いを子供達に渡して行く。

「私よりみんなの方が好きな物を知ってるだろうし、ちゃんとシャロン達の分も買って来てね」

「分かった。それじゃあ、ゴンは私と一緒に行きましょう!」

「…………………行く」

マリアから、シャロンとエリーの分のお金を預かったアリスは、ゴンと手を繋いでチョコレートが並んでいる通路に歩いていく。

「じゃあ、俺はケインとライオの分を買ってくるぜ!」

フェイは、そう言うとケインとライオットの分のお金を受け取り砂糖菓子を捜しに行ってしまった。

マリアは、まだ行かないベルとボルに自分とシュレーダーとトビアスの分のお金を渡しながら声をかける。

「ほら、早く買って来なさい。私と師匠の分は貴方たちに任せるわ。遅いと置いていっちゃうわよ?」

「それじゃあ、僕たちは肉の燻製を捜しに行こうか。確か、シュレとトビーも好きだったしね」

「ご主人! 僕はビーフジャーキーと言うのがいいです!」

マリアに急かされたベルとボルは、マリアの分を含めたお金を受け取るとまずビーフジャーキーを捜しに歩き出すのだった。




約10分後、買い物を終えた子供達の手の中には、3種類のチョコレートが3つずつ、20個入りの金平糖が入った小さい紙袋が6つ、15本のビーフジャーキーが入っている紙袋が2つ、特別な砂糖を使った砂糖水が2つある。

ホクホク顏の子供達は早く家に帰りたいのか家までの競争を提案し、急遽家までのレースが始まった。

その結果、家まで歩いて30分かかる道程を10分かからずに走破してしまった。

順位は、1位にボル。そこから、フェイ、アリス、ゴンと続き、あまり乗り気ではなかったマリアとベルが並んで到着した。

「2人共遅いよ! 競争って言ったのに!!」

アリスが遅れて到着した2人に文句を言い始める。

「みんなが早かっただけだって。それに、母さんも俺も疲れてるんだよ」

ベルが、マリアのかわりに答える。

「そんな事より早く飯食おうぜ! もう腹が減ってヤバイぜ!!」

 そこで、気を使ってか使わないでかフェイがそんなことを言い出しゴンとボルを連れて家の中に入っていく。

「ちゃんと手洗い、うがいをするのよ!」

「分かってるぜ!」

 そんな、フェイを見てマリアが一応注意しながら家に向かう。

 アリスも空腹が勝ったのかそのまま家に入っていき、ベルもそれに続いた。


 家に入り、洗面所で手洗いうがいを終わらせたベルは、その足で広間に向かう。広間にあるテーブルの上には二つの鍋と皿に盛られたたくさんの食材が置いてある。その席にはマリアやシャロン達といった家族の他にミーナが食卓に加わっている。


 実は、ピースフルに引っ越す前から学校が休みになると子供達の送迎をしながら孤児院に毎回遊びに来ていた。休み中も子供達に知識や戦い方を教えてあげられるからというまっとうなことを言っていたが実際はクライン家で食べられる異世界の料理や風呂が本音だったようで、クライン家がピースフルに引っ越してっからは今までの家を売り払いクライン家に居候するようになった。

 クライン家は、ミーナの事を家族と同等のように接していた為その提案に二つ返事で返しこうやって一緒に住むことになったのだ。



「ふむ。思ったよりも遅かったじゃないか。何かあったのかい?」

 最後に入ってきたベルが席に座る時に、ミーナが反対側に座るマリアに話しかける。

「とりあえずご飯を食べながら説明します。みんなお腹がペコペコのようですし」

 マリアはそう言って一度話を止めると、食事前のあいさつを始める。

「この料理を食べるために関係したすべての人、そして命に感謝の気持ちを。黙想」

 マリアの言葉に全員が目を瞑る。

「やめ! それでは、いただきます!」

『いただきます!!』

 マリアの号令と共に目を瞑っていた子供達が元気な声を上げながら箸をもってテーブルの上にある鍋に手を伸ばしだす。

「それで、いったい何があったんだい?」

 自分の食べる分を受け皿に移したミーナが湯だった野菜を口の中に運んでいたマリアにさっき程の話題を振る。

「……ンッ。実はギルドに報告に行ったときにロペスさんに直接言いに行ったんですが、その時にベルたちの事について質問されまして……」

「そうか。質問バカに捕まったのか……」

 マリアの言葉で、すべてを察したミーナはあきれ顔になる。

「ええ。久しぶりだったので逃げることも出来ず受付の子が様子を見に来るまでずっとです」

「そうか… それは災難だったな」

 ミーナは受け皿にある白くなった肉を箸で挟みながら答える。

「おっ? 先生は肉食わないのか? そしたらもーらいっ!」

 ミーナの隣にいたシュレーダーが鍋にある肉を一気に取るために箸を伸ばす。

「んぐっ。こらっ! それは私のだ!!」

 ミーナは、肉を口に入れると瞬時にシュレーダーの箸が届く前に肉を取ってしまう。

「先生! 大人げないぞ!!」

 自分が取ろうとしていた肉を取られシュレーダーが文句を言う。

「先に取ろうとしたのはシュレーダーじゃないか。早い者勝ちなのだろう?」

 ミーナは勝ち誇った顔でそういう戦利品を口に運ぶ。

「それじゃあ、俺はこっちをもらうぜ!」

「じゃあ、俺はこっち!」

「僕はこの肉をもらうね~」

「じゃあ、私はこの野菜をもらおうかしら」

 そんな二人のやり取りを無視してフェイ、トビアス、ケイン、マリアが湯だった具材を取っていく。

 こんなミーナだが、実はAランク冒険者はすべての冒険者の中でも5本指に入るかどうかと言う偉大功績、または実力を持つ人たちで、他の人たちからは神様のように扱われる共にこの人たちだけは敵に回してはいけないと恐れられていた。なので、関係を知らない人が傍≪はた≫からタメ口を聞いてるフェイ達を見ると「おい?!死にたいのか!?」と思われてもおかしくないことをしているのだ。

 しかし、クライン家や親しい人たちにみせるミーナの本性は200歳を超えてるとは思えないほど幼い性格をしているのだ。

 そんなミーナ達を横目にもう1つの鍋では女子たちとベル、ライオが行儀よく食べながら今日はどんなことををしたのかという話題で盛り上がっていたのだった。





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