2 統合都市ピースフル
どうも!
早速ですが、前話のタイトルを4年から5年に変更しました。
まだタイトル以外改稿してません
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数時間後、飛行魔法でピースフルを目指していたマリアたちはその後変わったこともなく北門に到着。門の前に立っている3人の門番にマリアはギルドカード、子供達は住民票を見せて、ボルとゴンはすでにクライン家族にいる魔物として有名だったため特になにもせずピースフルの中に入った。
ピースフルは、ほかの都市に比べて特に警備が厳しい。都市に入るためには外壁に設けられている高さ20メートル、幅15メートルの巨大な門が東西南北の4カ所にあり、そのうちのどれかから入らなければならない。もし、門以外、例えば『飛行』で空から入ろうものなら外壁に仕掛けられた探知魔法が素早く反応し、自警団に不法侵入者の存在を知らせる。地中ならそう言ったものがないが、都市内の地面はとても硬い石で覆われており、簡単には侵入出来ないようになっている。普段はこういったことが起きることはまずないが、もし起きた場合、空から来た敵には、自警団の中には空隊と呼ばれる空中戦のエキスパートが集まる隊があり、捕まったら最後、厳しい取り調べが待っているのである。
辺りが少し暗くなってきて、道端にある店舗が魔法灯≪マジックライト≫の明かりをつけ始めた頃にピースフルに帰ってきたマリアたち一行は、石畳で出来た歩道を通って依頼の報酬を受け取るためにギルドに向かっていた。
歩道には仕事帰りの人や家族連れなどで賑わっている。さすが統合都市というだけはあり、道には尖った耳をした褐色肌の魔人族はもちろん獣人族の1つである頭の上にネコミミが生えた猫人族やおしゃれな服を着たヒト族の女性など様々な人たちが歩いている。
道端の所々にある軽食屋や酒場といった飲食店からはすでに出来上がった大人たちの笑い声が響いている。
ベルは、そんな光景を見てもうそんな時間かとピースフルの中心にあるこの都市で一番大きい建造物である時計台を見る。その大きな時計の針は現在19時を指そうとしていた。
そんなベルを横目に隣を歩いていたフェイがしゃべり始める。
「それにしても今日は大量だったな」
「確かに多かったわね。依頼には大量発生って書いてはあったけど200体はいたわよね」
「そうね。個人Cランク、チームDランク以上が対象の依頼だったけど、あれなら個人Bランク、10人以上のチームで平均Cランク以上の設定にしとかなかったら無駄に犠牲者が出てたでしょうね」
フェイの話題に、機嫌がなおったアリスが乗り、マリアが補足をする。
「僕達がその依頼受けててよかったですね」
ベルの右斜め後ろを歩くボルがつぶやく。
「そうね…… ギルドに行ったらそのことも報告して報酬を増やしてもらいましょうね」
「おっ!? それじゃあ、今日の晩飯は豪勢なのにするのか?」
「残念ね。時間的にシャロン達が学校から帰ってきてるはずだからもうご飯はできてるでしょうね」
「そうかぁ…… 久しぶりにスレイドラゴンのステーキ食べたかったんだけどな~」
マリアの言葉にフェイは肩を落とす。
クライン家では、以前のように自給自足をしなくなったので、一般の家と同じように露店などで食材を買って生活するようになっていた。そのため、基本的に報酬の大きさでその日や後日の夕食の量や種類が決まっていた。そして、フェイが言ったスレイドラゴンは、Bランク指定の魔物で、肉や鱗は高い値段で取引されている。ピースフルでは、生息地が遠くあまり品が入ってこないという事からここで売られている食材の中でも高い部類に属しており、今日のように収入が多く入ったり誕生日のような特別な日に食べられる料理となっていた。
「それはまた今度にしましょう。そのかわり、帰りに何か買って帰りましょう」
「マジか!? じゃあ、俺はコンペイトウがいいぜ!」
「それじゃあ、私はチョコレートにしよっかな?」
フェイとアリスで何を買うか相談し始める。
ここピースフルでは俺の世界の商品、特に菓子系のような甘味のある食品が普及し始めていた。理由は、彩花しかいないだろう。この4年間彩花の居場所の特定までは出来ていなかったが、ここ1年ぐらい前からヒト族の領土内でこういった珍しいものが表れ瞬く間に広がっていったらしい。ベルは、ミーナとマリアにその商品の出所を調べてもらうと、ある中流階級の家が商品の大元であるらしいという事が分かった。その家の家族には俺より1つ下の一人娘がいるらしく、右耳には銀色の装飾品をつけていると言う事だ。会ってみなければわからないが、ベルの中では間違いなくその娘が彩花だと考えている。
その家族は、来年6歳になる娘をピースフルの学校に入ようと考えているらしく、今度こちらに越してくるという噂が流れている。
ベルは、その話を思い出し物思いにふけっているとアリスと話していたはずのフェイに思い切り後頭部をはたかれた。
「なっ、何すんだよ!?」
「さっきからお前は何が食べたい?って聞いてるのにシカトするからだろうが!」
「違う! ただ考え事してただけだよ!」
「まあまあ、二人とも落ち着きなさい。今のはフェイが悪いわよ。すぐに手が出る癖は直さないとだめよ」
「……気をつけるよ。悪かった」
マリアの言葉に、フェイが反省してベルに頭を下げる。
「いいよ。こっちもちゃんと聞いてなくてごめんな」
「ほらほら、早くいかないとギルド閉まっちゃうよ?」
「そうですよ。きっと家でみんなも待ってますよ!」
「……………………早く」
ベルとフェイが仲直りしていると少し進んだ先にいるアリス達が手を振って声を出している。
ベルたちは、そんなアリス達を見て笑いながら追いかけた。
一方その頃、ピースフルの中央4区画の外にある住居区画にある2階建ての大きな木造住宅、クライン家の住居では、学校から帰ってきたシャロン達6人が家に夕食を作るためにキッチンにいた。
キッチンは、最大7人が行動できるようにと広い設計になっていて、雪平鍋やフライパンといった調理器具は大人数でもたくさん食べられるようにと特注の物が置いてある。加熱器具は、ヒトの頭一個分の大きさをした火属性の魔法石を2つ使っており、強弱も4段階まで分けられる優れものだ。給水、排水設備は都市に水道が整備されてはいるが、あくまで魔法が使えない一般市民用なので、クライン家では水属性の魔法石と自分の魔法で用意することになっている。もちろん、果汁ジュースなどの飲料水は別に買ってありあくまで調理や手洗いうがいなどとしてだ。
ちなみに、トイレは孤児院と同様いわゆるボットン式の変化型で出来ている。排出した後、各自自分で流し、流されたものは専用の場所に行き庭園の肥料として使われるようになっている。
「ほら! シュレとトビ―は野菜をきって!」
現在、キッチンの流し台で野菜を洗っていたシャロンがグダグダしてる二人に指示を出す。
「分かったって。そんなに大きな声で言わなくても聞こえてるよ……」
「分かったよ、シャロ姉≪ねえ≫」
シャロンの甲高い声に、シュレーダーが鬱陶しそうに返事をし、トビ―が素早くシャロンから野菜を受け取り調理にかかる。
「シュレが動かないからでしょ! 早くしないと母様達が帰ってきちゃうわよ!!」
「姉さん、ちょっと落ち着いて」
「そ、そうだよぉ。はい、これ飲んで」
「シュレ兄ちゃん、シャロン姉ちゃん怒らせちゃだめだよ」
シャロンが、興奮しているのを、ケインとエリーが窘め、ライオットがシュレーダーに注意する。
この6人は、今ではピースフルの学校でも有名な生徒として成長していた。
二女のシャロンは、この5年間、ずっと首席を守り続け今は高等教育準備に進路を取り勉学に励んでいる。
また、年齢が11歳になったことで身体に変化が見え始めた。身長は145cmまで伸び、身体つきもアリス程ではないが胸やお尻が出始めてきて女性的になってきている。綺麗な金色の髪の毛も一時は首上まで切っていたが今は肩位まで伸ばしている。
シャロンの1つ下の長男、シュレーダーは、学問は普通だが竜人の特性を生かし、実技では同学年で1位の実力になっていた。今は、ちょうど進路決めの時だがすでに職業教育に進路を取ることを決めており、騎士を目指してトビ―と共にトレーニングを続けている。
身体付きは、昔以上に筋肉質になったものの以上に太いというわけでもなくガッチリした体格になっている。身長は150cmとだいぶ高くなり今も成長を続けている。
シュレーダーと同い年で二男のケインは、シュレーダーみたいにやりたいことが見つかっていないという理由で、シャロンと同じく高等教育準備の進路にした。
身長は130cmを少し越えたぐらいで、中肉中背と普通な感じだが、一応学力ではトップクラス、実技もシュレに次いで次席と結果を出している。
現在、学校では喧嘩っ早いシュレーダーのお目付役としても活躍している。
そこから、また1つ年が下がって3男のトビー。まだ子供っぽさは残っているものの、昔みたいに「アニキ」とシュレーダーの金魚のフンみたいについて回るところがなくなった。成績は、学問の分野で苦戦はしているものの同い年のエリーやシャロン、ケイン、マリアといった家庭教師に教えてもらっているため上位をキープ、実技はもちろんトップである。
身長はケインと同じくらいの130cm前後だが、シュレーダーと続けてきたトレーニングのおかげで力はついてきており、後は身長だけだと、ビーカオーと呼ばれる牛のような動物から取れるミルクを毎日飲んでいる。
三女のエリーは、その内気な性格は直っていないが同い年の子供達と接することによってだいぶ良くなってきていた。一応、学力では首席を守っており、同級生に勉強を教えたりもしている。
身体それほど成長していないものの、身体のラインが少しずつ丸みを帯びてきたように思える。
四男のライオットは、入学して1年しかたっていないためシャロン達のように目立った事はしていないが、天才肌なのかあまりやる気はないらしいが一応成績は上位にいる。
昔のように甘えてばかりという事はなくなったが、前にやった模擬戦の記憶があるのか魔法を使わない実技はそんなに好きではないようだ。
とまあ、こんな感じで各世代のトップをクライン家族が独占している。ちなみに、各教室で学級の代表者を決めるのだがシャロンがやっていたこともあり全員が各学級の代表もこなしていたりもする。
「…ンッ、……ンッ。エリー、お水ありがとうね。シュレはトビ―を手伝う! ケインはそっちでこのお肉切って! エリーは私と一緒にライスの準備でライオはお鍋に水を入れて茹でる準備してくれる?」
シャロンが次々に指示を出しそれに兄弟達が行動を起こす。
「おい、野菜切り終わったぞ。これどうすればいい?」
シュレとトビ―が切り終わった野菜をボウルに入れて持ってくる。
「ちょっと待って。お鍋の準備できた?」
「出来てるよーー!」
シャロンが、水を入れに行ったライオに尋ねると元気な返事が返ってきた。
「ありがとうねー 今日は鍋料理にするつもりだからその野菜はお皿に盛りつけておいて。後はライオとトビーと一緒に食器の準備してくれる?
「りょうかい!」
「わかった! ライオは俺達と一緒にお皿とか並べるぞ」
「いまいく~~」
シャロンから新たな任務を与えられた男衆3人は棚から皿やお箸を持って広間の方に消えていく。
すると、今度は肉の調理を任せていたケインがやってきた。
「シャロン姉ー、お肉切り終わったよ~」
「そしたら、シュレがお皿に野菜置いてあるはずだから一緒に置いておいて。後、ライオから鍋を預かってだしを入れといてくれる?」
「わかったー」
シャロンは、ケインから話を聞くとすぐに次にやってほしいことを伝え、ケインはベルとフェイが作った冷蔵庫から調味料をいくつか取り出していく。
一段落したシャロンは、自分の作業であるお米とぎに戻り、指示を出している間もといでいたエリーに声をかけた。
「私たちも早くご飯を炊いちゃいましょう」
「そうだね~ わたしもいいにおいがするからお腹すいてきちゃった」
エリーは返事がすると同時に、お腹からク―、っと可愛い音を鳴らす。
「ウフフ、私もよ。そしたらなおさら早くしないとね」
シャロンは、エリの返事に和みながらご飯を研ぐ手を速める。
こうして、クライン兄弟の騒がしい夕食作りは続いていくのだった。
なんで、ランキング上位の人たちのポイントってあんなにはいるんだろ?
うらやま……けしからん!
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