1 5年が過ぎて
どうも!
一応今話から新章入ります。
とりあえず、文の書き方は色々試しましたがこんな感じで行きたいと思います。
前の話は時間があれば改稿していこうと考えています。
後、近いうちに話しの名前帰ると思いますが気にしないでください
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貿易都市ピースフルから北西に60キルメル程行った魔人族の領土内にあるロックベル山脈。
この山脈は標高が最高で3000メル近く、全長120キルメル程あるこの世界でも屈指の山脈で、普段から寒冷な気候となっている。魔人族だけが知っている抜け穴を使わなければ、越えるのに雪が積もっていない夏でも3週間、冬にいけば1カ月以上かかると言われており、挑戦した人たちの中でも必ず数人の死亡者、または全滅する恐れもある事から他種族からは魔の山脈と呼ばれるようになった。
戦時中、この山脈は魔人族の天然要塞として活躍し、魔人族が戦争を有利に進められた要因の一つだと言われている。そんな山脈も、今は雪が解けて草花が所々に生い茂っていて春の息吹を感じさせている。
その山脈の中腹には4人と一匹と一体の場違いな一行がその数200体はいる山鬼≪マウンゴブリン≫の集団を相手にしていた。
その一行は、槍を振り回す黒髪の少年、素手で次々に絶命させていく赤髮の少年、二本の片手剣を器用に使う赤髪の少女、鋭い爪と牙で目にも留まらぬスピードで山鬼を狩る獣、宙に浮いた石を操って敵を一掃する石で出来た身体を持つもの、そしてその3人と1匹を見守る金髪の女性で構成されている。彼等は、ピースフルで請けた依頼『大量発生している山鬼を討伐せよ』を達成する為に目下戦闘中と言う訳である。
そもそも、山鬼≪マウンゴブリン≫とは、このロックベル山脈に生息するDランクの魔物だ。体長は10歳前後の平均男子位の身長で体色は茶色で醜悪な顔をしている。Dランクといっても常人よりも少し身体能力が高いだけで少数なら近隣の住人でも勝てる位の強さだ。だが、山鬼は大多数で群れるようになると手に負えなくなってしまうため定期的にギルドに依頼が来るのである。山鬼は、数が少なければさほど脅威にもならないがどの生物にも勝る類い稀な繁殖力を持っていて妊娠すれば約三週間で産まれ、一ヶ月もあれば成体に成長してしまう。そして、山鬼の厄介なところは種族に限らず、女性を孕ませる事が出来る所で、偶に旅の途中で襲われたり、近隣の村から攫われた女性が性奴隷にされていたと言う話がある位である。
一般の個体は全裸、あるいは布切れを体に巻いていて、素手や簡単な道具(石を投げたり、木な棒)で襲ってくるが、知能がある個体もいるのか偶に剣や防具を身につけているものもいる。その装備の数々は、昔この山に訪れた他種族の兵隊たちが装備していたもの多く、行軍中にこの山で命を落としてしまった兵の装備品だけが残っていたのを山鬼が見つけたのだろうと思われる。
戦闘が始まってすでに1時間が経過しているが、近くの岩肌には緑色の血が大量に飛び散っていて、地面には身体が二つに分かれたものや、焼け焦げて灰になっているもの、地面から生えた土棘に貫かれているもの、頭の一部が噛み喰われて脳が飛び出たものなど、様々な死体が転がっている。
そして、一体、また一体と、次々に山鬼の命が消えようとしていた。
「ほら! アリス! 後ろ行ったぞ!!
両手に持っている自分の身長と同じくらいの長さの槍で、自分より一回り大きい敵の頭部を刺して倒した黒髪の少年、ベルが少し離れたところで疲れが出てきたのか肩で息をしながら、目の前の山鬼と対峙している両刃の片手剣を二振り持った茶髪の少女、アリスに背後から敵が近付いていると警告する。
「言われなくてもちゃんと見えてるわよ!」
ベルの声に反応したアリスは、得意魔法の『土泥』を使って目の前にいる山鬼の足場を悪くして動きを鈍らせている間に、後ろから来た敵を振り向きざまに右手に持った剣で胴体部分を切る。そして、先ほど動きを鈍らせた敵に向き直り両方の剣で両肩口から切り落とす。
「おいおい、もうばてたのか? そんなんじゃいつまで経っても母さんには追い付かないぞ?」
「へへ、そんなゆっくりしてるんだったら残りの奴は俺が全部倒しちまうぜ?」
そんなアリスに、警告を発したベルと、援護のために近づいてきた赤髪の少年、フェイが挑発的に声をかける。
「ハァハァ、フェイには言われたくないわよ。だって、フェイって魔法体だから疲れることなんてないじゃない」
「そういえばそうだな! まぁ気にすんな!!」
「気にするわよ!」
「っっっ、おい!」
アリスとフェイが話ているうちに先ほどアリスが両手で切ったはずの山鬼が目を怒りで赤くしながら立ち上ってアリスに手に持った棍棒を振り落とそうとしていた。
だが、その棍棒が振り落とされることはなかった。
突如、棍棒めがけて雷が落ち、その山鬼は身体から黒い煙を出しながら倒れた。死因は確認しなくても分かる。感電死だ。
では、誰がそんなことができるのか。
すると、山の上から青と白の毛に包まれ、額に2本の角が生えた一匹の獣が駆け下りてきた。
その、獣はアリスとフェイの横を通り、ベルの下で止まると振り返る。
「アリスは危なっかしいな。ご主人とは大違いだ」
「ハッハッハッ! ボルにまで言われてるぞアリス!!」
「………………」
その獣、ボルの台詞にフェイが腹を抱えて笑い、近くにやってきたゴンがアリスを無言で見つめる。
「~~~~ッッッ!! 見てなさい!!」
アリスは、顔を羞恥で真っ赤にしながら残り10体をきった山鬼の集団に単騎で走り混んで行く。
「はぁー、フェイもボルもアリスをからかい過ぎよ。フェイはアリスのサポート、ボルは集団が崩れないように周りを走りながら『雷撃』で援護よ」
「分かったぜ!」
「分かりました」
少し離れた所でベル達を見ていたマリアが、フェイとボルに指示を与える。
「母さん、俺はゴンはどうすればいい?」
「ベルはここで待機。もうあの子達だけで大丈夫よ。お疲れ様」
マリアは、頭を撫でながらベルとゴンを労う。
「恥ずかしいからやめてくれよ。俺だっていい年なんだからさ」
「まだ5才の男の子が「いい年」だなんてなにを言っているのかしら?」
「母さんだって分かってるクセに…… 精神年齢は母さんと変わらないよ」
「ウフフ、分かってるわよ。でも、ベルが可愛いから撫でたくなっちゃうのよ」
「フゥー、分かったよ。これからは程々にしてね」
ベルはそう言うと、視線をマリアから戦っているアリス達に向ける。
ちょうど、最後の一体をアリスが切り倒した所のようだ。
アリスは先ほどと同じ失敗をしない様に山鬼が完全に生き絶えている事を確認する為に剣で切った山鬼を突つく。
確認した結果、先程の山鬼みたいに生きているものは居ないようだ。
4人と1匹と1体は依頼達成の証拠として山鬼の眼を回収する班と、山鬼達が持っていたまだ使える装備品を回収する班に分かれる。
話し合った結果、 マリア、フェイ、アリスが証明品の回収、ベルは、山鬼に限らず死体から証拠を剥ぎ取るのが苦手な為、ボルは、証拠品を取ろうとすると品をグチャグチャにしてしまうから、ゴンは採取のしようがないからと言う事で装備品の回収をする事になった。
そこから、20分程で回収を終えた一行は、依頼達成の報告をする為に向かう事になった。
移動には飛行の魔法を使うため、マリアは自分と飛行を使えないアリスとゴンに、ベル達は自分でかけて飛び上がる。各自で持っている布袋には先程採取した証明品や装備品が入っていて、中からは血生臭い匂いが風に乗って鼻に入る。
アリスは、まだ少し機嫌が直っていないようで、顔を膨らませながらマリアの横を飛んでいる。
「いい加減許してくれよ。俺たちが悪かったって」
2人の後ろを飛んでいる2人と1匹の左側にいるフェイがアリスに話し掛ける。
「ふん! どうせ私は体力ないですよ~だ!」
「だから調子に乗りすぎたって。ほら、ボルも謝るんだ」
「ご主人がそういうなら…… ごめんなさい」
フェイの横を飛んでいるベルとボルが続いてアリスに謝る。
「アリスは何でそんなに怒っているの?」
マリアが尋ねるとアリスは涙声になりながら答えた。
「だって…… 今回の依頼で1番足引っ張ったの私だもん…… ベルとフェイはともかく、ボルも普通に山鬼達を倒してて。私がみんなを助けてあげなくちゃいけないのに逆に助けられたのが悔しくて……」
そのまま泣き出してしまうアリス。
ライオットが学校に入学して孤児院に残って
いるのがマリア達だけになった。そのまま孤児院に残って生活しても良かったが、すでにアリス、ベル、フェイの三人は実戦で経験を積ませるだけのレベルに達していたため、留守中に孤児院に家族以外入れないように条件結界を張り、ピースフルに新しい家を持つ事になった。交流が活発化して住民が増え始めているピースフルに住居を持つ事は難しい事だったが、ミーナのツテとマリアが有名だった事で好条件の住居を持つ事が出来た。
それから一年は、マリアが子供達の実力でも達成出来る依頼を受けて、経験を積ませていた。
実際、今日みたいに誰かの調子が悪くて迷惑を掛けると言う事はこの一年に何回もあった。
だが、今日はいつもとは違った。
もうすぐ、一年を過ぎると言う事はベルとフェイの入学が近付いていると言う事を意味している。
そして、今日は日程的に入学前最後の依頼だった。
アリスは、その事に一人気づいていてこれで最後ではないと分かっていたものの、今回の依頼は2人に年上らしい所を見せようと密かに気合を入れていた。そのため今回の不甲斐なさに自分を許せず他人に当たっていたのだ。
「そんな事気にすんなって前にも言ったじゃねぇか」
「そうだよ。二刀流は身体の負担が増えて、長期戦になったら不利になるって前に教えたしゃないか。今回の依頼は、百体以上の山鬼と戦ったんだからしょうがないよ。それにまだ13才なんだからこれから体力もついてすぐに強くなるよ」
泣いているアリスを、フェイとベルがフォローする。だが、アリスはその言葉を聞いて余計泣いてしまう。
すると、マリアが先程のベルにしたみたいにアリスの頭を撫で始める。どうやら、アリスの態度を見て不機嫌だった理由が分かったようだ。
「そう言えば、もうそろそろベル達の入学式だったわね? もしかして、アリスはそれでいい所見せようと思っていたの?」
すると、アリスはそれが返事だと言うようにマリアに抱きついて泣き続ける。
マリアは、そんなアリスを慈愛に満ちた表情で見つめながら優しく抱きしめる。
「それなら確かに今日の事には納得行かないわね。それじゃあ、これから帰ったらまた母さんと一緒に練習しましょうか。次まで、時間は空いちゃうけど、その時に今日の事を挽回しちゃいましょ?」
「……ヒック、…………ヒック、……うん」
マリアが話しているうちに落ち着いたアリスは、小さく、だけどはっきり返事をする。
ベル達はその光景を後ろか見ていた。
「ったく、そんな事しなくたってアリスは凄いって分かってんのに……」
フェイが気まずそうに言う。
「まぁ、そういうなって。アリスも色々考える所があったんだろ。それに、俺もアリスみたいに気合い入れ過ぎて空回りした事がたくさんあるから気持ちわかるんだよ」
ベルがそう言ってフェイを嗜めるとボルがあり得ないと言う表情をする。
「ご主人が失敗ですか?」
「そうだよ。俺は前の世界では唯の一般人だぞ? それこそ、アリスやボルになら秒殺されるくらいに弱かったんだ。それこそ、失敗や挫折なんて数えられない位してたよ」
「そんな…… 信じられません」
「本当だって。なぁ?」
そう言って、記憶を共有しているフェイに話し掛ける。すると、フェイは気まずそうにしていた表情を、ニヤッと悪巧みが浮かんだ子供のような笑顔を見せる。
「ああ、本当の事言ってるぞ。例えば、彼女にいい所見せる為に背伸びした服を来て行ったら似合わないって爆笑された事とかか?」
「それは確かに失敗談だけど、意味が違うだろ!! てゆうか、わざわざ話さなくていい!!」
「アハハ! 他にもいろいろあるぞ?」
「いい加減にしろ!!」
ベルは、また恥ずかしい話をされる前に黙らせようとするが、フェイはそれを躱して行く。
突然始まった空中鬼ごっこにボルは驚き、ゴン相変わらず無言で、マリアとまだ目が赤くなっているアリスは笑いながらその光景を見つめるのだった。
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