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俺と不死鳥と異世界トリップ  作者: ネギ抜き
第1章 孤児院編
28/35

25 模擬戦が終わって (3)

「ふむ。内容にもよるが私で良ければ話を聞こう」


 ベルの真剣さを理解したのか、ミーナは一度座り直してベルが話し始めるのを待ってくれている。

 ベルは、一度深呼吸をするとこの世界にいるもう一人の異世界人について話し始める。


「実は、この世界に来た人が僕以外にもう1人いるんです。その人は、僕の前の世界での彼女≪たいせつなひと≫で名前は彩花って言います。フェイの話だと、ヒト族の領土内に居るってことは分かっているんですけど、何かそれらしい噂とか聞いてませんか?」

 すると、ミーナさんは記憶を探るために少し押し黙った後にすまなそうに答える。

「すまない。そういう情報は私には入ってないな」

「では、ヒト族に限らず僕みたいに何かしら普通ではない力を持った人の噂とかは? 多分ですけど、彩香の近くにフェイと同等の力を持っている存在がいる筈なのでもしかしたらそういう人達の中にいるかもしれないんです」

「…………いや、聞かないな。どの種族にも突出した能力を持つ者はいるが、皆戦争中に活躍した奴ばかりだからな。私も偶≪まれ≫に色々な土地に足を運ぶようにしているがそういう力を持った者、特にベルみたいに特異的な存在は知らない」

「そうですか……」

「期待に応えられなくてすまない。私の方でも少し探ってみようか?」

「よろしくお願いします。とりあえず、詳しい位置は分かりませんが、今はヒト族の領地内にいるみたいです。フェイが言っていた言葉なので間違いはないと思います」

「分かった。私も教師としての職務がある以上時間が限られているが出来る限りやろう」

「ありがとうございます。でも、あまりおおっぴらにはやらない様にしてもらえますか? あまりいろんな人に知られると後が面倒くさくなりそうですし、僕的には居場所さえ分かればいいですから」

「そうか? そういう事なら人は使わないようにするが、そうすると時間が掛かるぞ?」

「分かってます。確かに、この世界は前の世界に比べたらっ物騒ですけど、フェイみたいな頼れる存在が近くにいるみたいですし、性格上彩花は人づきあいとかが上手いんでそこまで心配はしてないんです」

「よし。もし、情報が入ったら直ぐに連絡しよう」

 ミーナは、そう言ってベルに協力することを決めたのだった。



 一度、ミーナがトイレに行くため少し休憩をはさんだ後、再び4人が応接間に集まっていた。外は孤児院の明かり以外は完全な闇に包まれている。応接間の時計は、すでに22時をさしており、集会広間でトランプをしていた子供達はマリアにもう寝るように言われ、歯を磨いた後に自分たちの部屋に行ってしまった。

「それでは、こちらからも幾つか話があるんだがいいか? この話はマリアにも聞いていてほしい大切な話なんだが」

 マリアが、紅茶を淹れ終わったのを確認するとベル、フェイ、マリアを順番に視線を向けながら話し始める。

「大丈夫です」

「大丈夫だぜ!」

「いったいなんでしょうか?」

 三者三様の答えをミーナに返すと、少し声のトーンを低くして話し始めた。

「まず一つ目は、ベルとフェイは様々な物を創る事が出来ると言うのは本当か?」

「はい。フェイが助力して貰える時に限りって言う条件がつきますけど」

 ベルが答えると、ミーナのすぐに追求する。

「それは、どんなものでも創れるのか? 具体的に言えば、あの結界やシャロン、ケイン、トビアス、君が持っている魔具、紙や服、今座ってる椅子と言った見たことない道具、ボルやゴンと言った生き物などだが」

「? 僕は魔具を持ってませんよ?」

「その腕輪は魔具ではないのか?」

 そう言って、ミーナはベルの右手についている金色の腕輪に視線を向ける。

「これは僕達がこの世界に来た時からついてて今でも分かっていないんですよ。ミーナさんは何か知ってますか?」

「いや、知らないから聞いたんだが…」

「そうですよね…… それでは先ほどの話に戻りますね。とりあえず、魔具や道具に関しては創れます。生き物に関しては分かりません」

「その分からないと言うのは?」

「確かにボルとゴンは創り出そうとはしましたが何故出来たか分かってないんです。僕達の中ではフェイが命を司っていたからって事になってますが、とりあえず理由が分かるまでは簡単にやろうとは考えてません。今回は成功しましたけど、次やったら失敗して悲惨な結果になるかもしれませんからね」

 ミーナは、ベルの返答に相槌をしながら聞く。

「そういう事か。それで、ここからが本題なんだがそういう特別な物をシャロンに持たせないようにしてくれないか?」

「それはどういう事ですか?」

ミーナさんの唯ならぬ雰囲気にベルが聞き返す。

「マリアはピースフルの学校は4国合同の学校で種族問わずに平等に学問を学ぶと言う方針なのは知っているな?」

ミーナの問いかけにマリアが「はい」と返事をする。

「それと、同時に種族間の遺恨を無くす為と言う考えもあるんだが、実際は例外を外して種族ごとの派閥に固まっていて互いにけん制し合ってるんだ。要するに仲が悪いってことだな」

「はぁ」

「で、問題はシャロンなんだ。シャロンはここで過ごしてきたおかげか他種族に対して偏見や心の壁をもっていないから分け隔てなく接しようとするんだが、他の種族はそれを無視してしまう。そして、同じヒト族もそれを好意的に取っていないせいで仲間はずれになっているんだ」

 ミーナの話を聞いてマリアの身体がピクッ、と動いたのにベルは気がついたがそのままミーナに質問する。

「それは確かに問題ですが、それと道具に何の関係が?」

 ミーナはベルの質問に重苦しい雰囲気え答える。

「他にも、仲間はずれになる理由があって、それがその紙や服といった道具なんだよ。シャロンが在学している学校は、ピースフルにある4つの学校の中でも特に競争率が激しく優秀な人材が入ってくるんだが、ヒト族の場合は特殊で貴族や王族といった位の高い人たちが入ってくるんだ。学校では、基本は4種族の出資で用意された紙と書き物を使うのだが、シャロンが持ってきた紙と鉛筆と呼ばれるものは学校で用意したものよりも遥かに品質が良い上に量もある。それに、普段は制服だから目立たないが私服の際にシャロンが来ている服もヒト族の貴族や王族が持っている服よりも機能性が高く、生地も良質なものを使っていて形もいい。それを見た子供達が自分たちも欲しいと言い出してシャロンにどこで手に入れたか聞きだそうとしたんだが、シャロンが頑なに断るので仲間はずれになってしまったというわけだ」

(向こうの情報は全然入ってこないから分からなかったけど、まさか異世界に来ていじめ問題に直面するなんて…… しかもその原因が俺だとは思わなかった……)

 ベルがそんなことを考えている間にもミーナの話は続く。

「後は、成績が断トツで優秀だからそのことに対しての妬みもあると思うがな。ベルたちは今後そう言う事もあるってことを知っててくれればいい。幸いと言ってはなんだが、他種族は無視している奴が多いもののもちろんさっき言った例外もいてそいつらと仲良くやってるからな。それを見て他の生徒の態度も少し変わってきている節もあるし、マリアの教育の賜物だよ」

 ミーナの話しを聞いて怒りの表情を見せていたマリアだったが、シャロンの行動が自分のおかげだといわれると反論する。

「いえ、そんなことありません。シャロンが挫けず腐らずに頑張った結果だと思います」

「マリアがそう言うならそういう事にしておくか。要するに、これからああいった道具等を渡す場合は気を付けてくれと言う事を伝えたかった訳だ。以前、その事がきっかけで山賊にも襲われたのだろう?」

 ミーナの忠告を素直に聞き入れたベルは、ミーナに今後どうするかを伝えた。

「そうですね。これから何か渡す時はミーナさんや母さんに話して了承を貰ってからにします」

「そこまで硬くならなくていい。渡す前に一言言うだけでいいだろう」

俺はその言葉に頷く。

「とまあ、私からの大事な話は以上だ。後、私から頼みたい事があるんだが……」

 ミーナは、そう言うとさっきまでの重い空気が嘘のように言いづらそうにしながら話しだす。

「何でも言ってください! 今回の、シャロンの件もありますしお礼がしたいんです!!」

 それに、ベルが大きな声で答える。シャロンの近況を教えてくれた上に虐められていたシャロンをズット見ていてくれたミーナに何かお礼がしたくて仕方がないのだ。

「実は……私にもシャロンやマリアみたいな服を創って欲しいんだ/// これでも、私は女だ。今はこんなボロボロの服をきているが、やはり可愛い服と言うのも着てみたいのだ。さっき注意して直ぐに言うのも矛盾しているのも分かっているんだがどうだろうか?」

 そう言って、髪の色のように褐色の肌を赤くしながらか細い声でたずねてくるミーナ。その表情に胸がキュンとなってしまったベル。やばい、これがギャップ萌えってやつなのか!?

「そんなことですか? そんなの全然イイですよ。フェイもそう思うだろう?」

「ああ! ミーナになら全然イイぜ! てゆうか、言われなくても創るつもりだったしな!」

 そんな、ミーナの問いかけに快く了承するベルとフェイ。マリアもベルの横で笑顔で頷いている。

「っっっっ、本当か⁈ ありがとう‼ よろしく頼む‼」

ミーナは、声を弾ませながら喜びの表情を浮かべる。

「ミーナさんはいつ頃までここに居ますか?」

「マリア達さえ良ければ休み中は滞在させて貰おうと思っていた。前は留守中に襲われているだけにマリアもそんなに孤児院を離れたくないだろうからシャロンは私が責任を持ってピースフルに連れて行こうと考えてな」

ミーナはそういうとマリアの方をみる。

あの襲撃の後、マリアはギルド経由で襲撃してきたら容赦はしないと言う情報を出しているので、その可能性は低い。

だが、先程の話でヒト族の貴族達が冒険者を雇ってここに来る可能性やその他の不特定な事もなくは無い。

マリアの師匠であるミーナがここに滞在する事に不快感を感じる事もなく断る理由もない。

マリアはその事を踏まえて考えた結果、ミーナの提案を受ける事にした。

「わざわざ気を遣って貰ってありがとうございます。師匠がここに居てくれるなら私も嬉しいです」

「では、短い期間だが宜しく頼むよ」

「いえ、此方こそよろしくお願いします」

「それで、ミーナさんは着替えとか持って来てるんですか?」

「服はもう一着あるだけだな。他にはここに来るまでの必要最低限の物しか持って来てないな」

「それなら今日の寝間着だけでも創ってしまいましょう。フェイ、ヨロシク!」

「おう!」


フェイはベルに返事をすると、マナで構成された身体を消して意識をベルに同化している本体に移す。

ベルは目を瞑り、意識を集中するとまずはマナを操ってミーナの身体を採寸しようとする。

ミーナの身体の周りに徐々にマナが集まり始め、赤く光だす。

「…………よし。これから服を創るのであまり動かないでくださいね」

ベルの言葉と同時に赤い光が段々服の形になり、上半身の光が質量を持ち始める。

数秒もすると光が収まり、ミーナの身体には上下黒のTシャツとショートパンツが残った。

「とりあえず、簡単な物です。今の季節は暖かいのでそれで大丈夫だと思いますけど大丈夫ですか?」

「…………ハッ! ああ、大丈夫だ。ありがとう」

実際に目の前に起こった事にぼうっとしていたミーナが慌てて感謝の言葉を口にする。

それを見たマリアが師匠の珍しい姿が面白かったのか横でクスッ、と笑った。

「笑ってすみません。でも、師匠のそんな表情見たことなくて」

笑いながら謝罪するマリアに、ミーナも苦笑いを浮かべるしかない。

「やはり実際に見せられるとな…… 大したものだよ」

「いえ、これもフェイが僕の中でいろいろやってくれているおかげですよ。それで着心地はどうですか?」

「ああ! きつすぎず緩すぎず、動きやすくて、前にシャロンに触らせてもらったのと同じような布ざわり。品質も私の服に比べて格段にいいし言うことないな! こんなわがままにつきあわせてすまないな」

「いえ、シャロンの事でいろいろしてもらいましたしこれでも足りないくらいです。他の服は明日以降に用意しますね?」

「ああ、ありがとう!!」

「それでは、二人で積もる話もあるでしょうし僕たちは部屋に戻ります」

「分かったわ。おやすみなさい」

「良い夢を。おやすみ」

 ベルとフェイがそう言って席を立つとマリアとミーナが寝る前のあいさつをしてくれた。

「おやすみなさい」

「おやすみな!」




 それに二人は答えると子供達が寝ている男部屋に向かうのだった。




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