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俺と不死鳥と異世界トリップ  作者: ネギ抜き
第1章 孤児院編
20/35

17 相談

 ラージの森の入口には、孤児院にある異世界の食べ物や衣服を狙って襲撃してきたグラハ山賊団の墓がある。

 墓を作ろうと言い出したのはフェイらしく、それにみんなが続いたようだ。

 らしいやようと言っているのは、その時に俺が気絶してて居合わせてなかったからだ。

 マリアさんと俺は、フェイ達と別れ手下達の墓からグラハの墓に前に来ている。

 グラハの墓には、グラハの武器である2m近い大きな斧と、赤と青の花が数本置かれている。

 マリアさんは、さっきと同様に右手を胸に当てて瞑目しながら口を開く。

「グラハって名前は知らないんだけど、戦争の時に斧を武器に使っていた騎士を見かけたわ。その人かは分からないけど、騎士は剣を装備するのが普通だったのに斧を使っていたし、大きい体格を利用した攻撃は派手だったから余計に目立っていたのよね」

「それじゃあ、グラハが騎士団に所属してたのはウソって訳ではなんだね? 何でそんな人がこんな所で山賊やってたんだろう?」

「そのひとと決まったわけではないわよ。そうね、それを説明するには今の世界の情勢から説明する必要があるわね。今の世界情勢は魔人族が、一番力が強く、それに竜人族、獣人族と続いて、最後に人族という状況なの。この順位は中央戦争での種族間の勢力差で人族は私を含めてまともに他種族と戦える人材が少なかったから4種族内で一番劣勢だったの。いや、敗戦だったと言ってもいいわ。ピースフルが出来て、和平交渉が行われた時、一番劣勢だった人族が多額の賠償金が課せられたわ。人族のトップ首都『ヒューワン』にいる国王はぞの賠償金を支払うために住民からの増税と騎士団の再編成を決めたの。もちろん、反対する人はたくさんいたんだけど、国王自らが住民の前に出てきて頭を下げて一応納得してもらったわ」

 なるほど。地球で例えると、魔人族がアメリカで人族が日本やドイツってとこか。確かに、戦争に負ければ相応の見返りは求められるし、ぞの政策については分かるけど……

「再編成したのは分かりますけど、グラハの指揮能力は優秀で、実力も高いと思うのですが、それで騎士団をやめさせられたの? その部下たちなら分かるけど、10人隊隊長って名乗ってたし普通ならやめさせられないと思うんだけど……」

「私も戦争が終わってあまり日のたたないうちに旅に出たからこれは推測なんだけど、私がいた頃の騎士団に所属してた人は、貴族出身と庶民出身がいたの。それで、再編成の時にその貴族出身の騎士が上層部の貴族に取りあって無理に残った可能性があるの。その貴族達の代わりに除名されたのが庶民出身の騎士でグラハもその中に入っていて山賊になったんじゃないかしら」

 どこの世界にも性根の腐ったやつはいるもんだな。そんな奴らのせいでグラハはこんなことになったのか? グラハを殺さなくちゃいけばくなったのか? 

 推測かもしれない。しかし、地球にも権力を振り回す無能なやつはたくさんいたし、リアル貴族を見たことはないが、良いイメージはわかない。異世界に来ても権力の理不尽さを目の当たりにしてどんどん怒りがわき出てくる。

「そうしたら、今の騎士団のほとんどが貴族の息がかかった人たちってこと?」

「私の推測が正しければ…………ね」

 はい、決定! マリアさんの考えが外れるとは思えないし、今後一切人族の騎士団には近づかないぞ! 俺の大学にいた金持ちも絡みがウザくてむかつくし、無駄にプライドが高くてめんどくさかったし。この世界でもそんない変わらないだろうな。ていうか、もしヒューワンにいて貴族達の毒牙にかかっていたら…… いや、ないない。彩花はのほほんとしてるようにみえてしっかり考えてるし、フェイ同等の力を持ったやつが近くにいる見ただし大丈夫か。

「マリアさんの、貴族の人たちの印象ってどんな感じなの?」

「うーん、1部を除いて自分の利益しか考えない人たちだったわ。いつも自分より上の人にくっついて甘い汁を吸って、下の人間は簡単に切り捨ててたわね。私も、騎士団にいたころ言い寄ってきてあしらうのが大変だったわ。それも、私が人族の中で力があったからと、師匠とのパイプがほしかったって理由なんだろうけどね」

 マリアさんも苦労してるんだな…… あれそう言えばグラハは何でギルドとかに入らなかったんだろう?

「でも、何で山賊なんだろう? この世界じゃマリアさんみたいにギルドに入ることもできたし、小さな村とかで自警団をすることも出来たと思うのに……」

「それは、本人にしか分からないことね。ギルドは特例を除いて15歳以上は性別種族関係なく誰でも登録できるようになってるし、チームを組んで依頼に当たることも許されてるのだけどね」

 今となっては謎のままってことか。気になるな……

「まあ、この話は考えてても答えは出ないからこれくらいにして本題に入りましょうか。違うんなら別にいいんだけど、ベルはグラハを殺したことを引きずっているみたいね」

「……はい。フェイに聞いたの?」

「違うわよ。大体、戻って来てすぐにここに来てるのに聞く時間なんてなかったわよ。さっき、私に報告してるときに殺した話になったときに表情が硬くなったし、声の高さも少し低くなったから気になってカマをかけてみたのよ」

 そんなに分かりやすかったのか? 普通に話してたつもりだったんだけどな……

「さっきみんなに言ったみたいに気にしなくていいのよ? グラハからどんな話を聞いたかは知らないけれど、犯罪を行ったことに変わりはないし、こんな辺境の地では逮捕しても拘留する場所がないから死罪にしちゃうのよ。だから、深く考えない方がいいわ」

「フェイにも似たようなことを言われたよ。でも、頭では理解してても納得ができないんだ」

「ベルの国は平和だったみたいだし、しょうがないのかもね。でも、この世界で生きていくには殺すことに慣れないといけないわ。この世界では殺すことを躊躇≪ちゅうちょ≫すると逆に殺≪や≫られる可能性があるし、それが自分じゃなく家族や仲間、大切な人が死んでしまう時だってあるわ」

「確かにそうだけど……」

「犯罪者の中にはそれをを利用して付け込んでくる奴がいるってさっきも言ったでしょ。犯罪者には譲歩しちゃだめ。向こうは死ぬことを覚悟して犯罪を続けてるんだから。それでも殺したくないなら色々なことを学ぶ必要もあるし、相手を無力化出来るくらいの実力もつけないと。といっても、実力は充分だと思うから後は知識をつけるだけだど思うけどね」

「……」

「グラハを殺したことを気にしてるならお門違いよ。グラハの指示で彼らは私達の孤児院≪いえ≫を襲い、家族を傷つけた。もし、あなた達がしていなくても私が必ず殺していたわ。忘れないで、彼らは家族を傷つけたの」

「それに、ベルが本当に気にしているのは別の事でしょ?」

「そんなことないよ」

「いえ、違うわね。あなたが本当に気にしてるのは、人殺しをした自分を彩花さんがどんな態度をとってくるかってことじゃないの?」

 俺は、何も言わず足元に視線を向ける。

「私は、直接彩花さんと会ったことがないし、あなたの世界を見たことがないから気休めにしかならないけれど、彩花さんの態度は変わらないと思うわよ」

 マリアさんが強く言い切る。一度も会ったことないのに何でそこまで言えるんだ?

「…………何で言い切れるんです?」

「女の勘、かしら? 私も女だからなんとなく分かるのよ」

「そうか…… 確かに母さんの勘は良く当たるよね」

「私が言ったことはこれから何かを考える時に思い出す程度に覚えていてくれればいいわ。楽になった?」

「うん。少し吹っ切れた気がするよ。話を聞いてくれてありがとう」

「そう? 何かあったらまた話してね?」

 マリアさんは笑いながら言ってくる。フェイと言い、マリアさんと言い、俺の周りはお人よしな人が多いな。

「わかったよ」

「それじゃあ、みんなの所に戻りましょうか」

「そうだね、長く話しこんじゃったし、暇を持て余してるかもね」

 俺とマリアさんはグラハの墓を離れて家族の元へ向かった。



 俺とマリアさんが森を出たあたりで、ふと言い忘れていたことを思い出し、それをマリアさんに伝える。

「そうだ、後で母さんに少し聞きたいことがあるからよろしくね」

「いいけど、今じゃダメなのかしら?」

「フェイもいないとダメなんだよ。それに、もしそれが出来るってなったときにみんなの意見も聞きたいしね」

「そう? じゃあ戻ったら直った集会広場の確認がてら話し合いもしましょうか」

「そうだね」

 伝えたいこと言ってスッキリした俺は、軽快な足取りで孤児院に向かうのだった。





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