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俺と不死鳥と異世界トリップ  作者: ネギ抜き
第1章 孤児院編
19/35

16 帰宅

 グラハ山賊団の襲撃から2日後、孤児院は未だ壊れたままである。子供達で話し合った結果、壊れた孤児院の修復はマリアさんが帰って来てからやろうという事になったからだ。食事場として利用していた集会広場は、瓦礫と死体を片付けた状態で保留。床が所々山賊の血で赤くなってるけどそこはスルー、集会広場が直るまでは客間で食べることになった。

 夜寝るときは、みんなで集まって寝ることに。みんな明るくふるまってるけど内心気にしてるんだろうな。寝静まるとだんだん布団から転がって人肌を求めだすんだ。唯、その人肌が主に俺になるのはやめてほしい…… シュレは力強く抱きしめてくるから息ができなくなるし、アリスは膨らみ始めた胸が顔に当たって気になるし(断じてロリコンではない!!)、トビアスは寝言がうるさいし、エリーとケインは…………特にないや、ライオは涎をつけてくるし、フェイはそれを避けるために実体化解くし、この2日は全然眠れなくて眠い……

 起きている間は、今まで通りグループ分けをして狩りと家事で分かれて行っている。これは、みんなの意見で、もうグラハ達のようなやつらは来ないだろうという事で決まった。その時の武術練習の時にアリスとケインの動きを見てたんだが、大人を1人で倒せたことと、家族を危険から守れたことで自信がついたらしく動きが良くなっている。試しに2人に組み手をしてもらったら、2日前の実力がウソのような動きを見せ始める。例えば、動きの要所や目線でフェイントを入れて牽制したり、相手の思考を先読みして攻撃しようとしたりと実践的な動きが入りだした。やっぱり、まだ不自然な動きだが、そう言う事をしだすことに意味があると思う。そう言った意味では、100日の練習よりも1回の実践って言葉が良く分かる。2人共一皮剥けてるわ。俺もうかうかしてられないな!

 後は、今回の事で孤児院の護りを強化した方がいいと考えてちょっと考えてることがあるんだ。これは、マリアさんが帰って来てから相談しようと思ってる。

 そうそう! たぶんみんなが「あんだけ人殺して鬱ってたのは回復したの? 馬鹿なの? 死ぬの?」って思ってるんだろうけど………………回復するはずないじゃないか!! ここ2日寝れてないって言ったけど1番の理由はグラハが夢に出てきて途中で目が覚めちゃうんだよ! 不眠症だよっチクショ―………… 吐き気や倦怠感はなくなったけど、悪夢とスイッチが入ったときのネガティブモードは全然なおんねえよ………… フェイ先生にもカウンセリングしてもらってるし頭の中では理解してるつもりなんだけどな……


 とまあ、この2日間はこんな生活を送っていた。


 その日の午後、今日は狩りに行かず全員で大掃除をしていると、森の方向から黒いマントをたなびかせて、身体を軽装のプレートアーマーで固めた見慣れた金髪≪ブロンド≫をたなびかせた人影が飛んでくるのが客間の窓から見えた。俺はみんなに声をかけて外に出るとマリアさんが入口に降り立つのと同時だった。

「…………何なのこれ?」

「「「「「「おかーーーさーーーん!!」」」」」」

 帰って来て早々、壁と天井が崩れ所々に血痕が残った孤児院(集会広場と遊具場)を見て頭をフリーズさせてるマリアさんに涙目の子供達が走った勢いそのままに抱きついていく。放心してるマリアさんがそれを受け止められるわけがなくそのまま地面に押し倒される。その勢いのよさに受け身をとれず頭を打ったことで頭が再起動したマリアさんは、起き上がると3歩離れたところで傍観してた俺とフェイ(幼児モード)の所に来て説明を求めてきた。

 俺達も何があったか報告するつもりだったのですぐに、グラハ山賊団が来たこと、アリスとケインが大人を1対1で倒したこと(もちろん不可抗力でその状況になってしまったことも説明した)、シュレが龍化したこと、グラハ達との戦い(8割がシュレの暴走で)集会広場が壊れてしまったこと、山賊達はすでに死んでいること、などを話した。途中でグラハの事を思い出してちょっと暗くなっちゃったけで気付かれてないよな?

 報告が終わると、マリアさんは子供たちの身体(特にアリスとケインとシュレ)を触り怪我がないか確認し始める。みんなは気恥かしそうにしながらもマリアさんの気のすむまで触らせている。

 マリアさんが落ち着くと、壊れた個所をどうするかの話し合いが始まった。

「壊れた個所だけど俺達が魔法で直すか?」

「そうねえ。そこは私でもいいんだけど、その方が早いかしらね」

「分かった。形は今まで通りでいいよね?」

「特に変えたい所もないしそれでいいわ。お願いね」

「了解。それじゃあフェイ、頼むよ」

「頼まれたぜ!」

 そう言い残しフェイは意識を俺に戻る為に姿を消し、俺も魔法を使う為に集中し出す。そのまま、緑色のマナが孤児院を覆い壊れている箇所が一層激しく光りだす。その状態が、2分程続くと光が収まり、傷1つない元の姿に戻っていた。

 風呂場を作った時から規模の大きい魔法は使わないで来たけど、前よりも貧血みたいに頭がクラってくる事もないし、発動速度も上がったみたいだ。

(これはフェイが魔法の扱いに慣れたって事か?)

(それもあるが、ダイキの身体が魔法の行使に慣れたって言うのと、単純に魔力が上がったって言うのもあるな)

(分かった。教えてくれてありがとな)

(別に礼はいらねえよ。それじゃ、また実体化するぞ)

(了解)

 フェイからの念話が切れると、再び幼児モードになったフェイが俺の横に現れる。

「2人ともありがとうね。それで、その山賊達のお墓はどこにあるの?」

「それなら森の入り口にあるよ」

 感謝の言葉を言ったマリアさんの質問にライオが墓の方向に指をさしながら答える。

 マリアさんは、そのまま森に向かい俺達もそれを追う事にした。


 マリアさんは、まず手下たちの墓に向かい胸に右手を当てて瞑目する。数秒程でやめるとマリアさんは、振り返って後ろで様子をうかがっていた俺達に語りだした。

「話したいことがいくつかあるのだけど、まずはあなた達が危険な時に傍に入れなくてごめんなさい」

「そんなことない! お母さんは悪くないよっ」

「そうだよ! 母さんは悪くない!」

 マリアさんの言葉にすぐさまエリーが反応し、ケインが続く。他もしきりに頷いている。

「ありがとう。でも、これは私がしたいから謝ってるの。だから、みんながもし許してくれるなら違う返事がほしいな」

 みんなは、マリアさんの言葉をいまいち理解できていないみたいだ。しょうがない。

「分かった。いいよ!」

「いいぜ。許してやるよ」

 俺が言うとフェイも笑いながらつづいた。これでみんなも意味が分かったらしく許しの言葉が続く。

「みんなありがとうね。それとみんな、怖い思いをしただろうけど良く頑張ったわね」

 

「アリスとケインは弟妹≪きょうだい≫を身体を張って守ってくれた。シュレは結果として暴走してしまったけど兄貴分として家族の事を大事に考えてくれた。エリーは怪我したみんなを得意の魔法で癒してくれた。トビアスは、みんなが満身創痍な中で自分ができることを考えて動いた。ライオはどんなに怖くてもその気持ちにのまれないでくれた。ベルとフェイは頭を働かせてできるだけ家族に危険がないように動いてくれた。母さんはそんなあなた達を誇りに思うわ」

 マリアさんの言葉にみんな思うところがあったみたいで感極まって目に涙が溢れそうになりだした。正直、俺もマリアさんの言葉にちょっとだけウルっときてしまった。

「その上で、みんなには、特にベルには知っててほしい事があるの。この世界には純粋な悪人がいる。息をするように嘘をつき、平気で人を親しい人を殺すような人が。そう言う人たちはあなた達の油断や躊躇に付け込んであなた達の命を奪おうとする。この中にもそれが分かる人もいるでしょう」

 マリアさんがそう言うと、アリスとシュレが頷いた。この2人はそんな人に出会ったことがあるのか? もしかしたら、今孤児院≪ここ≫にいる理由に関係があるのかもしれないな。

「だからと言って悪人が全員そう言う悪人じゃなくて、そんな悪人とは正反対の人でも仕方なく犯罪を犯してしまった人もいる。難しい話なんだけど、あなた達には自分の眼でそれを見分けられるようになってほしいの。今は分からなくてもいい。ともかく今言ったことを忘れないで頭の隅においておいて」

 ライオやエリーは頭の上に?マークが浮かんでいる。そりゃそうだ。今マリアさんが言ったことは地球でも解決していない哲学の1つだ。いわゆる、陰陽2元論ってやつか。子供には、あまりにも難解な問題だし、少しでも言ったことを理解してるアリスやケイン、シュレ、トビアスがおかしい。きっとシャロンもそうなんだろうな。多分この中で一番真理に近いのはこの中でダントツに長く生きてるフェイなんだろうな。

(フェイは分かるか?)

(まあ、な。だが、この考え方は個人の価値観で見方でどっちにもなるからな。この問題に関しては絶対の正解はないだろうよ)

 やっぱり、長く生きてるやつは違うな。そういう考え方が自分の中でしっかりできてる。

「私の話はこんなところよ。私はベルと少し話があるから先に孤児院に戻っててくれる?」

 マリアさんの表情が和いで、場の空気も軽くなる。

「よし、じゃあみんなでさっきの続きするか」

 フェイが空気を読んで先頭をきって孤児院へ走りだす。それに面白がったライオが続き他の人も笑いながら孤児院に歩いていく。


 みんなが声の聞こえないところまで行くと俺とマリアさんの2者面談が始まった。



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