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俺と不死鳥と異世界トリップ  作者: ネギ抜き
第1章 孤児院編
15/35

12 遭遇

 子供だけの生活になって早7日、俺はフェイとまとめ役に就任してみんなと平凡な過ごしていた。まとめ役と言ってもやる事は今までとさほど変化はなく、変わったことと言っても、食事の挨拶や戸締まり確認といったマリアさんがやっていた細かい確認を俺達がすることになっただけだった。

 この生活が始まって最初に各自の担当を決めたが、特に気をつけていたのは俺とフェイのが一緒の班にならないようにすることだった。大まかに家事班と調達班に分けることになったが、最初に決めたのは俺達が各班に分かれて行動を共にする事だった。これは、危険な事態≪アクシデント≫が起こった際にすぐに対応出来るように考えた事で、マリアさんの留守中にケガをさせる訳にはいかなかったからだ。

 食事班は、エリーとライオ。

 狩猟A班は、シュレとトビアス、狩猟B班は、アリスとケイン。

 家事班は、料理の他に洗濯や掃除といった家事を担当してもらって、狩猟班は片方が狩りや採取に行っている間は孤児院に残り、エリー達が忙しければ手伝い、その他の場合は武術の練習にあてる事にした。

 留守番中の孤児院の1日は晴れの日が午前が全員で魔法の練習、午後は各班に分かれて作業を行い俺かフェイの残ったほうが約束の時間になると出て行ったほうに念話で連絡してどんな収穫であろうと戻ることにしていた。

 雨の日は、武術の練習と俺の世界の座学をこの世界に通用しそうな範囲で教えることにしていた。



 とまあ、そんな生活を送っていたんだが、今はシュレとトビアスと一緒に狩りをしにラージの森に来ている。と言ってもブルウォルフの時の教訓があるから結界の外には出ない範囲にとどまるようにしてるけど。いつかの勝負でシュレが使っていたらしい魔法を使わない探知術を教えてと頼んだら一緒に行くことになった。本当はフェイが担当の日だったんだが話をすると笑顔で交換してくれた。これは、お礼に相棒の好きな食べ物を譲ってあげないとな。

 話がそれてしまったが、今はシュレがその技術を実演してくれているが、ぶっちゃけ言って全く分からない。さっきも300m位離れた木にいるフォンレイというリスのような生き物を見つけていた。いるかいないかならともかく、シュレはどんな種類かも当てるんだよ。俺も魔法を使えばすぐに分かるが、どうしてもマナの気配でこちらの居場所がばれてしまう可能性がある以上この技術は覚えておきたかったんだが……

「なあ、コツとかないのか?」

 あまりにも分からないので、前を歩いて集中しているシュレに話しかける。

「そう簡単に出来てもらっちゃ困るぜ。物音というか、気配というか。ともかく、数をこなせばベルでも分かると思うぜ」

「やっぱり経験か~」

 確かにシュレは俺が来るずっと前から狩りをしてるんだし、最低でも1年以上の経験差があるもんな。これからも、狩りの時は参加するようにしようかな?

「さすが兄貴です! ベルも出来ないことができるなんて!」

 トビアスは何を言ってるんだか…… お前たちより精神が大人なだけで、俺の能力が高いのもフェイのおかげなだけなのに。

「俺にだって出来ないこと具合あるさ。それにトビアスができて俺ができないことだってあるんじゃないか?」

「そうだぜ、俺に出来ないことをお前ができることもある」

「そんな、兄貴の出来ないことが俺に出来るはずがないです!」

 トビアスは俺達の言う事を信じず聞く耳を持たない。自信がないのか?

「とりあえずゆっくり考えてみろよ。まだトビアスには難しいだろうがな」

 シュレが声をかけるとトビアスは考え込んでしまった。シュレを慕うのはいいんだけど、それで自分の可能性を決めつけちゃな。まだ、トビアスには分からないだろうけど、出来るだけ早く気がついてほしいな。


 そのまま、気配探知のレクチャーを受けているとシュレが急に歩みを止めた。どうしたのかと尋ねると、動物とは違う気配がするという。俺はオリジナル魔法『探知』を発動し周囲を探ってみると、たしかに動物とは違う中型の生物の反応があった。

 その反応に近づいてみると、見るからに怪しい雰囲気を出している人族の男が5人いる。なんか、漫画とかに出てくる盗賊みたいな格好してるな…… 嫌な予感しかしないんだけど。

「なんでこんな森の奥に人がいるんだ?」

 シュレが、男たち(変な格好をしてるので、これから変態A~Eと呼ぶ)を見ながら疑問を投げかけてくる。

「分からない。すぐに接触するのも危険だしこの場所で様子を見ようか」

 俺は念の為2人に身体強化をするように指示をだして、自身にも身体強化と聴力強化を使い彼らの会話を盗聴することにした。


「本当にこんな森の奥にあるのか? もう3日は探索してるぜ?」

「そうボヤくな…… しょうがないだろ。今までと同じさ。ブツを見つければ当分楽になる。なんたって、今回は上手くいけば新しい拠点が食料付きで手に入るんだからな」

「そうそう。珍しい物らしいし売れば金になるって話しだぜ。食って良し、売って良しなら言うことないじゃねぇか」

「頭達は別の場所を探してるし、俺達は任された仕事をこなせばいいだけさ」

「さっさと見つけちまおうぜ」 怪しい人達(変人A~E)が俺に聞かれているとも知らないで色々な情報を話している。

 話をまとめると、やつらは森にあるっていう珍しい食べ物を探しに来たって事か。やつらは下っ端で、他に本隊がいると。それにしても、この森って何日も探す価値のあるような珍しい食べ物なんかあるのか?

「なあ、この森って他の場所で高く売れるような珍しい食べ物なんかあるか?」

 シュレとトビアスは首を横に振って否定する。

「いや、そんなもんは聞いた事ないな。あえて言うなら母さんやベルが栽培してる野菜とかが珍しいんじゃないか? 母さんのはいろんな場所から採って来たものだし、お前のはこの世界のものじゃないし。なあトビアスはどう思う?」

「俺も兄貴と同じだよ。母さんに聞いてみないと分からないけど多分そういうのはないと思う」

 ということは、一番高い可能性はあいつらの目的は孤児院って事か!?

 あいつらから聞き出す必要がありそうだ。

「何でいきなりそんな事聞いてきたんだ?」

 シュレが理由を聞いてくる。

「あいつらが話してたから確認したんだ。多分だけどあいつらの目標は、孤児院の食料だ。」

「それは本当か!?」

「まだ可能性だけどな。これから、それが本当か聞き出す為にあいつらを無力化したいから弓と魔法で援護してくれ」

「相手は5人だぞ? 大丈夫なのか?」

 トビアスが心配な顔で聞いてくる。

「大丈夫だろ。あいつらはそんなに実力無さそうだし、今は油断してる。多分シュレ達でも勝てると思うけど万が一があるかもしれないから援護を頼む」

 その後、シュレに俺が居なくなってから1分後に先頭の男に弓矢で攻撃するように言うと、俺はこの4ヶ月で覚えた魔法の一部である、火属性魔法の『ブースト』と、闇属性魔法の『同化』を発動させる。

  『ブースト』は、身体強化、思考速度強化、視力強化、聴力強化を同時に行える魔法で、火属性魔法初級『フォース』の発展型だ。この魔法はフェイが俺と一緒じゃなくても、一緒の時と変わらない力を出せるようにと考えたもの。

 『同化』は文字通り、景色と同化し相手に視認されにくくする魔法で、カメレオンの能力を参考に考えたものだ。この魔法は、闇属性初級魔法『暗黙』の効果もあり、気配を完全に消す事ができる優れものだ。

 魔法が無事発動された事を確認すると、物音で気付かれないように少し離れた所から後ろに回り、シュレの攻撃を合図に動き始める。

 シュレの矢は先頭にいた変態Dの右足に刺さり、全員の意識が矢の放たれた方向に向くと近くの木を蹴って男たちの高さまで飛び、最後尾にいた変態Aの頸椎を手刀でたたき、意識を刈り取る。その男を踏み台にして前にいた変態Bと変態Cの後頭部に連続で回し蹴りを入れる。そこで、変態Eが後ろで打撃音と誰かが倒れたような音に気づいて振り向いた。俺は、そのまま変態Eの鼻っ面に回転を利用した裏拳を入れた。変態Bと変態Eの意識がまだ残っていたためそこから2人同時にチョークスリーパーをかける。2人は爪を立てて俺の腕を引きはがそうとするが、今の俺は大の男の筋力を遥かに上まった力で絞めているため爪が食い込むのは痛いがそのまま気絶するまで続けた。そんお状態で数十秒ほどいると、2人の腕がダランと力をなくした所で首を離すと地面に横になった。変態Aは矢が刺さった足を抑えて喚きながら転がっているが、情報を聞きだす必要があるためそのままにしておく。殺していないか確認するため、倒れている4人の脈を測ったが元気に拍動をしていたので大丈夫だろう。骨が折れた感触もないし手加減もしたからな。良かった良かった。シュレ達にもう大丈夫という事を伝えた俺は、変態達が暴れたりしないようにマナで縄を創りだして手と足を縛る。

「ぅぅ、痛ぇ…… いきなり何しやがる! 俺達が何かしたって言うのか!?」

 足から血を流したままの変態Aが殺気のこもった眼でこちらを見ている。

「こっちの質問に答えてくれたらその傷を治して解放してやる。お前らは何者だ? お前らの目的はなんだ?」

「へっ、誰が言うかよ!」

「そうか」

 俺は、自分の状況を理解していない変態Aの態度にイラッと来て傷口を思いっきり踏みつける。

「ぎゃあああぁぁぁ!! やめろ! やめてくれっ!!」

「質問に答えろ」

 無機質な声で痛がる変態Aに告げると首を勢いよく縦に振ったので足を離す。

 こっちは家族の命と安全がかかってるんだ。なりふり構っている余裕はない。

「俺達は近隣で活動してるグラハ山賊団だ。俺達はお頭が村で珍しい食料を売っているって言う噂と、それがこの森のマリア・クラインの住処にあるっていう情報を手に入れてそれを手に入れようとしていただけだ。偶然、マリア・クラインは遠出してて当分戻ってこないって言う情報も手に入れてたからやるなら今って事でその住処を探していたんだ!」

 予想通り悪党か。しかも狙いは孤児院と来てる。最悪だな……

「そのお頭と仲間はどこにいる」

「別の仲間と一緒に住処を探してるはずだ!」

「数は?」

「お頭を入れて15人だ! もういいだろ!? 早く傷を治してくれ!」

「最後に、もしその住処に人が住んでたらどうするつもりだったんだ?」

「そりゃあお頭次第だが、男なら人買い専門の商人に売りつけるか、殺して、女なら俺達の慰め物になってたんじゃないか? 最近みんなご無沙汰だったしな」

 内容を聞いた瞬間、後ろのシュレとトビアスから殺気立つ。俺はそれを手で窘めながら変態Aを睨みつけた。

「悪いが、俺達がクライン孤児院の住人だ。そんなことを聞いた以上お前らには動物の餌になってもらう。幸いこの森には、ブルウォルフやレッドベアーがいるからお前の血のにおいに釣られてやってくるだろうよ」

「!? おい、待て! 話が違うぞ! 知ってることを全部話したんだから約束を守れ!」

「悪党相手に守る約束なんかないな」

 変態Aに一言言うとシュレ達を連れて『飛行』を使い急いで孤児院を目指す。


 考えてたよりも状況が悪いな……

 まずはフェイに状況を伝えないとな。

<おい、フェイ聞こえてるか? 大事な話がある。聞いてくれ>

<今はそれどころじゃねぇ! 知らない連中がいきなり襲ってきやがって相手してる最中なんだ! 数が多すぎて手が回らねぇ…… 早く帰ってきてくれ!>

<っっっ!! 分かった! 今そっちに向かってる最中だ! もう少し耐えてくれ>

<頼むぜ! もう部屋の中に押し入られてるんだ。出来るだけ早くしてくれ>

 そう言い残してフェイの念話が切れた。

 クソ! 早く戻らないと! 今の俺から離れてるからフェイは魔法が使えないし、ケインとアリスもエリーとライオを守りながらだから苦戦してるはずだ。

 俺が苦虫をつぶしたような表情にシュレ達が不安の声を上げた。俺はそれに対応する余裕もなく無言で孤児院を目指した。

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